風の族の祝祭

詩歌の森のなかで、風に吹かれて、詩や短歌や俳句の世界に遊んでいたい。
著作権は石原明に所属します。

恋唄

2010-04-30 06:22:51 | 詩 
恋唄


あなたの心のなかで発条が弾けて
全てが元に戻った時
わたしも弾けとんだ

遥かな空から舞い落ちる
黄金の木の葉のような
「もう一度会いたい」という
あの人の一言に
白鳥の翼を拡げて
あなたはぎっしりと星の輝いている
夜空へ翔び去ってしまった

あの星は全て
わたしの愛の言葉なのに

いつかこの時が来るのではないかと送った
不安な日々はもう終わったのだ
何という安堵
わたしの宇宙は寒い
星達はもう
抉られた内臓の水銀の滴り


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俳句 APRIL 2010 Ⅱ

2010-04-27 10:45:47 | 俳句
黒南風やはやも少年熟れ始む
春の野に何時かありけむ青い花
美少年タンポポの絮散らしけり
初揚羽飛翔のかくも高貴かな
酒が大蛇の形となりて朧月
手応の無き扉より藤の花
海神の口臭なりや磯遊び
熱燗を扱ひかねて句集開く
白躑躅一輪咲きて鎮まりぬ
桜はや若葉となりて樹液の音
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俳句 APRIL 2010

2010-04-19 20:15:55 | 俳句
牡丹桜癲狂院 は蒼く錆び
春の虹宙の形に撓むなり
姿見の姿に似せて春は老ゆ
少年のぶらんこロープは切られけり
老僧の咳のひとつとなりにけり
ふるふると出汁巻玉子の音楽や
少年の櫂に打たるる花筏
痩せきつて黒猫となる朧月
還暦や着ぐるみと見る昼の月
春の宵義眼より海は流れ出す
落椿程の血痕誰の夢
トマレトマレサビシイ桜ガアル
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俳句 MARCH,2010 31句

2010-04-18 20:26:43 | 俳句
<皇国想望歌> 31句
       摂津幸彦「皇国前衛歌」に倣ひて

太平洋の骸の城や五月風
強東風や戦停止の綸旨まだ
核爆弾夏空なれば咲き出づる
裸木に冬の吶喊を捨ててくる
御禁場へプラ模ゼロ戦の如く堕つ
魂魄の蝶の無限や招魂社
末黒野に手つなぎ皇国想望歌
聖地なりやインパールへと巫に
餓鬼道やチンドイン河の花筏
白骨や靖国うららまでの幣

ゴキブリの戦意は昂し花見舟
蝿取紙揺らして過ぎし軍楽隊
月讀に捧げし帝国曲馬団
空砲を地球に撃つて寒月夜
神さびし万年筆の血文字かな
千羽鶴千羽数へるひまつぶし
赤く塗る万歳岬の夏帽子
春の野に散りぬる兵や隠れ鬼
御戦はフイルムの軋りいつも五月雨
英霊や千体仏の千の冷え

水底に艨艟鎮座す白木蓮
次の玉砕島選ぶ冬の参謀
草萌や赤紙を貼る肌荒れに
皇軍の尊き精液支那の春
沈丁花出会頭の慰安所に
皇国の上下左右に苔むして
焼跡や白木蓮も木蓮も
百日紅半分焼けて降伏す
寒昴黄泉に溢るる星条旗
蛇の目傘くるくる前世の黒人兵

手毬唄拍手に燃ゆるバグダツド


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俳句 MARCH,2010 20句

2010-04-02 11:09:31 | 俳句
春愁や木花咲耶衣通姫
春宵のタンブラーには請求書
夕焼けの滴る枯野の霊柩車
目高にも輝く卵の時代あり
地球一周に半歩の淵の寒卵
朧月骨となるまで直立猿人
ケセラセラきりきり枯れる風光る
走馬灯黒馬の騎士の逆廻り
老兎一声今際に鳴くや寒昴
屈折のよき人と観る初桜

夜桜や歩けば骨と骨の私語
比喩のごとく手毬指より零れけり
セロハンに包まれ窒息する黄薔薇
春の夜の乱歩の旅の押絵かな
花吹雪六根清浄握飯
はなびらの光にぬるるさくら雨
夜桜のこの世の火葬となりにけり
花冷や千の仏の半眼に
弾道のごとくに過ぎる鳥帰る
風光る六道輪廻の招き猫
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