山百合の淋しいくせに一輪で咲き
眼が合ふて夜店の金魚の薄命かな
蛇神の通ひて九十九に折れしかな
アンタレス神も煙草を吸い給ふ
万華鏡既に少女は幻花かな
飛行機雲定規で引けば秋の空
アンタレス神の殺意を燈しをり
秋雨止まずしてボレロを口ずさむ
秋雨止みて苔一粍の呼吸かな
蛇もヒトも四足歩行の大蘇鉄
日照り雨そっとふぐりを確かめる
この夏も父を愛せず蝉の殻
観覧車蝉殻ひとつハリー待つ
墨景の一筆書きの稲光
動脈のごとくに雷の落ちゆけり
血脈を絶つを想へば雷雨迅し
落雷やしあはせのかたちに木は裂けし
雷鳴の異星の雷に感応す
無残やな交尾夢見し籠の蝉
童貞の蝉殻もありや風化初む
杵かざす月の兎の鬼相かな
乳房無き吾が胸にふたつ虚空かな
蜩の可笑しゅう鳴きて松に死す
逆縁の菊は巨大に棺埋む
取り返しはきかぬ背中を薔薇で打つ
驟雨立ちて雨女か母か還りくる
鼓笛隊の合はぬ音過ぐ夏の過ぐ
逆縁に絶えし葉桜無下に濃し
枡酒や掌の塩舐めて八月の渇き
背の汗の重き噴水弓なりに
父母の秘事のごとし百日紅
灯籠の罅少し延び秋に入る
星空にシリウスあれば眼瞑りて
大正琴一音のみで月と帰る
ためらはずカサブランカの剪られをり
こんなにも飢へた形に蚊を殺す
七夕や二人で折りしだまし舟
白桃の指のかたちに傷腐る
敗戦忌葉裏葉裏の虫の墓
死んだのと浮いて知らせる金魚かな
銀泥の海もあらずや敗戦忌
敗戦日蝉殻掃き寄せて終りたり
添ふてきて餌喰ふ金魚の孤独かな
くず金魚小さきの泳ぎの下手であり
宇宙船に落書したき暑さかな
アンタレス狐を憑けて帰しけり
悪も貼りし夜空に花火かな
流燈や霊去りてまた流れゆく
一心に蟻喰ふアリクイ淋しいぞ
月見草知らぬ振りして蘇州まで
幼きは旨し鹿焼く母も焼く
星月夜母の子宮を捜しつつ
残月に誓わぬ誇り月見草
朝顔の句点のごとき青さかな
アルカディアまでこの虹渡るつらさかな
盂蘭盆会似た貌並ぶ怖きまで
送り火や狐とい寝し証とて
骨までも濡れよと水掛けて盆の墓
立秋の湧水と我龍と化す
立秋や性愛ひとつまだ熟れず
立秋と呼ばわる蝉の未練あり
立秋の欺瞞の地熱や蝉落ちる
戦ごとは我がことにあらず原爆忌
原爆忌蒲団を干して暮れにけり
原爆忌敷布の汗を洗ひをり
原爆忌ルオー絵筆を休めざり
原爆忌フェルメールの光陰を焼く
ラッセラー昭和は知らぬ原爆忌
平成の子ハネ狂ひてや原爆忌
炎天や凪て溶け出す御堂筋
刀身に添ひ立つ牡丹玉三郎
絢爛であれこそ衣裳ぞカサブランカ
墓地のごと蝉は死骸の花水木
ゴキブリにいらぬ慈悲かな命かな
精霊を背負ひてバッタ盆へ翔ぶ
眼が合ふて夜店の金魚の薄命かな
蛇神の通ひて九十九に折れしかな
アンタレス神も煙草を吸い給ふ
万華鏡既に少女は幻花かな
飛行機雲定規で引けば秋の空
アンタレス神の殺意を燈しをり
秋雨止まずしてボレロを口ずさむ
秋雨止みて苔一粍の呼吸かな
蛇もヒトも四足歩行の大蘇鉄
日照り雨そっとふぐりを確かめる
この夏も父を愛せず蝉の殻
観覧車蝉殻ひとつハリー待つ
墨景の一筆書きの稲光
動脈のごとくに雷の落ちゆけり
血脈を絶つを想へば雷雨迅し
落雷やしあはせのかたちに木は裂けし
雷鳴の異星の雷に感応す
無残やな交尾夢見し籠の蝉
童貞の蝉殻もありや風化初む
杵かざす月の兎の鬼相かな
乳房無き吾が胸にふたつ虚空かな
蜩の可笑しゅう鳴きて松に死す
逆縁の菊は巨大に棺埋む
取り返しはきかぬ背中を薔薇で打つ
驟雨立ちて雨女か母か還りくる
鼓笛隊の合はぬ音過ぐ夏の過ぐ
逆縁に絶えし葉桜無下に濃し
枡酒や掌の塩舐めて八月の渇き
背の汗の重き噴水弓なりに
父母の秘事のごとし百日紅
灯籠の罅少し延び秋に入る
星空にシリウスあれば眼瞑りて
大正琴一音のみで月と帰る
ためらはずカサブランカの剪られをり
こんなにも飢へた形に蚊を殺す
七夕や二人で折りしだまし舟
白桃の指のかたちに傷腐る
敗戦忌葉裏葉裏の虫の墓
死んだのと浮いて知らせる金魚かな
銀泥の海もあらずや敗戦忌
敗戦日蝉殻掃き寄せて終りたり
添ふてきて餌喰ふ金魚の孤独かな
くず金魚小さきの泳ぎの下手であり
宇宙船に落書したき暑さかな
アンタレス狐を憑けて帰しけり
悪も貼りし夜空に花火かな
流燈や霊去りてまた流れゆく
一心に蟻喰ふアリクイ淋しいぞ
月見草知らぬ振りして蘇州まで
幼きは旨し鹿焼く母も焼く
星月夜母の子宮を捜しつつ
残月に誓わぬ誇り月見草
朝顔の句点のごとき青さかな
アルカディアまでこの虹渡るつらさかな
盂蘭盆会似た貌並ぶ怖きまで
送り火や狐とい寝し証とて
骨までも濡れよと水掛けて盆の墓
立秋の湧水と我龍と化す
立秋や性愛ひとつまだ熟れず
立秋と呼ばわる蝉の未練あり
立秋の欺瞞の地熱や蝉落ちる
戦ごとは我がことにあらず原爆忌
原爆忌蒲団を干して暮れにけり
原爆忌敷布の汗を洗ひをり
原爆忌ルオー絵筆を休めざり
原爆忌フェルメールの光陰を焼く
ラッセラー昭和は知らぬ原爆忌
平成の子ハネ狂ひてや原爆忌
炎天や凪て溶け出す御堂筋
刀身に添ひ立つ牡丹玉三郎
絢爛であれこそ衣裳ぞカサブランカ
墓地のごと蝉は死骸の花水木
ゴキブリにいらぬ慈悲かな命かな
精霊を背負ひてバッタ盆へ翔ぶ