「町興しのために砂金を見つけて欲しい。」そんな依頼を受けて向かった先は東北の緑豊かな山中の町。
出迎えてくれた支所長さんを含む地元の方数名と挨拶を交わした後、幕府に納める金を採取していたと云われている場所に案内された。
そこは不自然に土地が隆起した林だった。
地元の方は「カナホッパ」と呼んでいるが、誰も名前の由縁は知らないらしい。
早速、熊が出ないことを祈りつつ散策してみると、地面には人為的に何本もの溝を掘った跡があり、溝は山側から近くの川に向かって続いている。
溝の側面には石が綺麗に並べられており、朽ちてはいるが渡し橋の形跡も残っていて、この溝に水を流していたことが分かる。
この溝にはネコダナと呼ばれる金を選鉱する棚を設置していたのでしょう。
これは鉱物の比重の差を利用して金を採取する道具である。
金鉱山抗口から搬出した金鉱石を火で焼いて脆くした後に粉砕し、金挽き石臼で粉状にする。
その粉を水で溶きながら溝に設置したネコダナへ流す。
比重が大きい金や銀、硫化物はネコダナ底面のヒシ板の目に止まるようになっているが、それでもヒシ板に引っ掛からなかった細かい金はネル布と呼ばれる布に引っ掛かり採取できる。
粘土や石はそのまま水の勢いに乗って川へ排出される仕組みになっている。
これは現代のスルースボックスの原点である。
昭和の時代に隣の山の中腹で金鉱石の粉砕に使用したものと思われる
直径2mほどの金挽き石臼が発見された事があるそうだ。
見たかったのだが熊が出るので地元の人も近づかないらしい。
地元の方と色んな話をさせていただき、資料に目を通していると
どうもこの場所の「カナホッパ」という名前の由縁は現場の使い方を理解すれば「金掘り場」から来たのだろうと考えれば合点がいく。
後に、こちらでは砂金採り体験を観光名物として成功しています。
滅多にお目に掛かることのない夏祭りやキノコ狩りにもご招待いただきました。
初めていただいた熊の手がとても美味しかったです。