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うやら雄のよ

うやら雄のよ

それにドルマントは古い友

2015-09-02 12:01:39 | 日記
「カレロスに着いたらオーツェルを大聖堂に届けて、ドルマントに会い西醫任鎮雄にいってくれ。こっちで起きてることを説明して、ヴァニオンとほかの騎士団長たちにも伝えてもらうんだ。奥地で起きてる小競合《こぜりあ》いはマーテルが裏で糸を引いているものだから、絶対に教会騎士団を派遣しようなどとは考えるなと釘を刺しておいてくれ。クラヴォナス総大司教が亡くなったときには、四騎士団がカレロスに駐在している必要がある。それを聖都からおびき出そうとするのは、これまでずっとマーテルがやってきたことなんだ」
「かならず伝えます」ベヴィエが言った。
「できるだけ急いで行ってきてくれ。猊下は見たところかなり頑丈そうだから、少々無理をしても大丈夫だろう。少しでも早く国境を越えてペロシアに入れれば、それにこしたことはない。時間を無駄にするな。ただ、じゅうぶんに気をつけてな」
「任せといてください」クリクが請《う》け合った。
「できるだけ急いでランデラ湖へ駆けつけます」とベヴィエ。
「金は足りるか」スパーホークは従士に尋ねた。
「何とかなります」クリクはにっと笑った。白い歯が薄暗い光にきらめいた。「それにドルマントは古い友だちですからね。気前よく貸してくれますよ」
 スパーホークは笑い声を上げた。
「じゃあもう寝るんだ、二人とも。明日はオーツェルを連西醫任鎮雄れて、夜明けとともに出発してもらいたい」
 翌朝は誰もが夜明け前から起きだして、カダクの大司教の左右を固めたベヴィエとクリクを見送った。スパーホークは料理の火明かりで地図を確かめた。
「一度浅瀬の向こうに戻ろう。その東にもっと大きな川があるから、橋を探さなくてはならないだろう。北へ行く手だな。ゲーリック伯爵の巡邏《じゅんら》隊なんかに見つかりたくはない」
 朝食をすませると、一行は水を跳ね飛ばして向こう西醫任鎮雄岸に渡り、馬首を北へ向けた。東の空がぼんやりと明るくなり、どこか厚い雲の向こうで日が昇ったことを示していた。
 ティニアンがスパーホークの横に並んだ。
「こういう言い方は何だが、できればオーツェルには選挙に勝ってほしくないな。オーツェルが総大司教の座に就いたら、教会にとっても騎士団にとっても、いやな時代が始まりそうな気がする」
「オーツェルは誠実な男だ」
「それは認めるけど、頭が固すぎる。総大司教には柔軟性が求められるんだ。

田所を睨みつけると

2015-07-09 09:48:34 | 日記

寺岡は手短に説明した。
「なっ、なんですと。広島の原爆投下のボタンを押したのが韓国人? しかも原爆投下を依

頼したのが当の日本政府ですと!? そんなことがもし、オリンピックの開会式当日に暴露さ

れたら、とんでもないことになる」
 金《きん》がそう叫んだとき、ドアが開き、グレーの背広のやせた目の丸い男があらわれ

た。
「東京地方検察庁の田所《たどころ》と申香港金银业贸易场します。寺岡|義徳《よしのり》を収賄《しゆう

わい》容疑で逮捕します」
「クッ!」
 寺岡は、くやしそうに田所を睨みつけると、灰皿を窓に叩きつけた。

 午前三時半。香港《ホンコン》。
 チェは九竜《カオルン》塘の丘に建つ李正元の館に向け、バズーカ砲を一斉にぶっぱなし

た。
 砦のはるか上を飛んだ砲弾は、冬虫夏草是什么一階の窓を吹き飛ばした。
 チェはそこに向かってハンドマイクで、叫んだ。
「おう、こっちに来たいヤツはこい!!」
 寝こみを襲われた李正元の部下たちが転げんばかりに駆けこんできた。チェは、ガハハと

笑い、
「おい、おまえら、ファイルを渡しやがれ!」
 と叫んだ。
 と、ドサッと音がして部下たちが次々と倒れていく。
「む?」
 振り向いた。皆が殺されるまでに一分もかかっていない。
 カン・マンスーは、わめきちらした。
「こんなヤツら何人wset三級殺したって同じなんだ。女はどこにいるんだ!」
 この香港で、外国の女が一人でいておかしくないところはどこだ。
「うむ」
 月あかりが、いらだつカン・マンスーのそげた頬を照らしだした。
 カン・マンスーの足がピタリと止まった。
 浜辺で釣をしていた男がいた。
「そうだ、あの九竜城にいるんだ」
 門に向かって飛び出そうとすると、
「隊長、李閣下がお呼びです」
「クソーッ」

竜と同様に南方の生

2015-06-19 11:51:00 | 日記
「ああ、この子は、見た目より若いのだよ。妻はまだいない。そういう子でないと、ギルビア公爵邸から離しておくのは無理なのだそうだ」
 レアンドラは手を伸ばして、柵ごしにユニコーンの鼻づらをなでた。
「モードレッドには、もうしばらくわたくしのもとにいてほしいと思っている。飼育が無理とわかれば、返すのはしかたないけれど」
「わたしだって、返さずにとどめておけるものなら、そうしていたよ」
 ほれぼれとユニコーンをながめて、ユーシスは言った。
「だが、ユニコーンは他のけものと相容れないし、竜と同様に南方の生き物だ。そう思ってあきらめたが、このアッシャートンなら飼えるかもしれないね」
 笑顔を見せてレアンドラはたずねた。
「また乗ってみたい? 竜騎士どの」
「竜退治は、一度でたくさんだけどね」
 ユーシスは答え、レアンドラはうなずいた。
「それはわかる。ユニコーンは、これほど見かけを変えても竜の一種なのだ。乗った者にしか、そのことが真実わからないけれど、ユニコーンを愛せる者は、竜を愛することもできるのかもしれないね」
 アデイルは、雌馬のテトラが急に恋しくなった。アデイルも、テトラを牙套價錢東の砂漠へ返してしまった。もう一度テトラにニンジンを食べさせたかったし、その背中がなつかしかったが、ランスロットと名のついた翡翠《ひすい》色のユニコーンにそう感じたことは一度もなかった。
 ここにいるスミレ色のユニコーンも同じだ。角の怖さは克服できても、馬より大きく裂ける口、あぎとにびっしり並ぶ尖った歯、悪食と言っていい餌を好む生き物には、これっぽっちも親近感がわいてこない。
 アデイルを見やって、レアンドラがくすりと笑った。
「どう、アデイル、あなたもモードレッドを手なずけてみる? ユニコーンを従える点では、その腕輪のほうが効率いいかもしれないよ。なんといっても公爵夫人の品だから」
 アデイルはかぶりをふった。