KANON廃園

スタジオカノン21年間の記録

1996年(平成8年)の主な仕事③ 長編への挑戦

2019年08月11日 | カノンの記録
アニメーションでは劇場長編作品のことを略して「長編」と言います。
長編の場合はとにかく制作が大変なので、より多くの会社に声がかかりますが、ひょんないきさつで弊社も背景をお手伝いする事になりました。

★劇場版「X-エックス-」
 原作 CLAMP(月刊ASUKA連載・角川書店あすかコミックス刊)1996年8月3日劇場公開
 監督 りんたろう
 キャラクターデザイン・作画監督 結城信輝
 美術監督 平田秀一
 音楽 清水靖晃
 テーマ音楽監督 YOSHIKI
 製作 角川歴彦
 脚本 渡辺麻実、大川七瀬、りんたろう
 アニメーション制作 マッドハウス

女性4人の創作集団CLAMPは当時絶大な人気を誇り、アニメ化にあたってはキャラクター原案、脚本などにも参加しています。
そのうえで主要のアニメスタッフを自ら指名するなどして、クオリティに信頼のおける所以外でのアニメ化は認めなかったという話です。  
満を辞しての劇場作品にスタッフの皆様のご苦労が忍ばれるというものです。

そんな中で、新人ばかりの弊社で、かなり質の高そうな背景が描けるのかと不安もありました。
緊張の面持ちでマッドハウスを訪ね、りん監督にもお会いしました。(ご挨拶程度で終わりましたが)
美術監督の平田さんとは初顔合わせでしたが、まあ試しにやってもらいましょうかという感じで数枚原図を渡されました。
ボードも原図もさすがに描き込み具合が違い、一筋縄ではいかない感じが・・・

はじめは私一人で四苦八苦しながら描いていたのですが、追加シーンで、そのころ腕を上げていたスタッフ1号君が是非やりたいというので挑戦してもらう事にしました。
自分の好きな作品でしかも劇場用とあってはさすがに気合いが入ったのか、丁寧でとても良い出来で感心したものです。
(美監様の評価は別として)

劇場作品はギャラ的には当然TV作品より単価が高いのですが、1日1枚も上がらないことがありますから、これはこれで厳しいものがあります。
それでもアニメーションは新人もベテランも、作品への思いあればこそ、いかなる厳しい条件の仕事もがんばれるというものです。



いきなり街の俯瞰や東京タワーを描くはめに・・・


これが本番ボードだったような・・


ヒロインが鉄の十字架につけられていて、緑の地面が割れて崩れ落ちるシーン。十字架はすべてBOOKでセルに直接描いてあります。


この室内や写真の中の背景も描きましたが、そういえばお借りしていたインテリア雑誌返してなかったような・・・

試写会で1回見たきりだったので、もう1度見直したくなりました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿