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映画文化の黄金時代

2010-01-06 22:37:56 | 日記
映画文化の黄金時代は、国や地域によって異なっている。
そもそも何をもって「黄金時代」とみなすのか、と問われても、あらゆる文化史上の時代区分と同じく厳密な定義など誰にも不可能だろう。
「黄金時代」という言葉には何か「失われた楽園」的な響きがある。その時代にはそれと自覚されず、後になってから「当時の人々にも色々と不満はあったが、振り返ってみると素晴らしかった」と分かる、そのような時代だと言えるかもしれない。

映画は20世紀の代表的な文化産業であると同時に、産業革命以降初めての国際的な文化産業でもあった。だから、映画文化の黄金時代は映画産業の盛衰と分けては考えられない。

映画というメディアは映画館での上映と集団的な鑑賞という制度に基づいているので、映画作品の映像と音の品質には非常に高い技術的レベルが要求される。そのため映画制作には基本的に非常にお金がかかる。その高額な制作費を回収して利益を上げ、次の作品制作に投入できなければ、映画産業は成立しない。インターネット用コンテンツとしての動画制作の手軽さや資金効率とは対照的である。

そう、映画は決して恒常的には儲からないものなのだ。
だから、現代ロシアのあるプロデューサーは「蒸気機関車の効率だ」と述べているし、日本以外の主要映画制作国(アメリカを除く)は大抵、映画産業及び映画文化のセーフティネットとして、儲かりそうもないが文化的には例外的に意義のある映画の制作や配給への公的助成制度を確立している。

映画文化の黄金時代は、どの国でも地域でも、基本的に20世紀にしかあり得なかった。アメリカでさえ実は1920年代~40年代に終わっており、日本では1930年代と50年代、ソ連では1950年代後半から70年代末までである。それ以降は、基本的に「衰退の歴史」なのである。

現在の映画文化は、演劇がそうであるように、愛好家と映画人と公的機関によって「保護」され「継承」、「育成」されるべきものである。日本ではその両方が成立していない。だから映画は非常に危機的な状況にある。もはや、映画の専門家達を加えた議論により、「保護」「継承」「育成」のための極めて明確な施策を採るべきときなのだ。

文化庁よ、10年来の迷妄から覚めよ、と言いたい。「メディア芸術」などという造語は世界にも、映画観客にも、映画人にも通用しないのだから。