読書好きだった両親の影響もあり、子供の頃から数多くの本を読んできましたが、「一冊の書物との出会い」とでも言うような、その時々に感銘を受けた本が何冊かあります。
幼少期から思春期にかけて感銘を受けたものが、
・『レ・ミゼラブル』 ビクトル・ユゴー著
小学生の私が読んだものは、『ああ無情』と日本語のタイトルで、主人公のジャンバルジャンが銀の燭台を盗み、神父様に許され改心するまでの短いストーリーのものでした。
・『嵐が丘』 エミリー・ブロンテ著
初めて読んだ恋愛小説かもしれません。嵐が丘の舞台イギリスのヨークシャーの村、ハワース。いつか行ってみたい土地のひとつです。
・『沈黙』 遠藤周作著
教会の日曜学校に通っていたこともあり、遠藤周作氏の著書は続けて何冊も読みました。エッセイである面白おかしく辛辣な狐狸庵シリーズもお気に入りでした。
青年期に感銘を受けたものは、
・『トムソーヤの冒険』 マーク・トウェイン著
・『坊ちゃん』 夏目漱石著
どうやらこの頃から冒険や自由に憧れを抱き始めていたようです。そして、大人になってからはミステリーやエッセイのような軽い書物ばかり読むようになりましたが、地方の山奥や海外などにいるときは手に入る本に限りがあるため、いつもなら読まないような本との出会いがあります。
そのなかでも今も愛読書のひとつになっているのが、
・『土を喰う日々』 水上勉著
お寺で小姓をしていた著者が、自らの体験談を語りながら長野県で自給自足をしながら作る精進料理を紹介しているものです。
この本との出会いは私が長野県に数ヶ月間滞在していたとき。今から30年ほど前のことです。千曲川沿いの大きな村の小さな部落の小さな本屋さんの本棚でした。父の本棚にあった同じ著者の『雁の寺』や『飢餓海峡』を思い出し、懐かしくなり手にしたのがきっかけでした。その時に購入したのは文庫本でしたが、後になってハードカバーで書い直しています。
一人旅をするときも必ず何か一冊持っていきます。荷物になるので自分なりに選び抜いた一冊しか持っていかないのですが、やはりその時の心境を大きく反映しているように思います。
見出し画像は、カンボジアのホテル。海外を旅行するときは、あまりハードスケジュールにせず、ホテルで日常を忘れて寛ぐ時間を必ずつくります。その際に読む本を選ぶのも旅行前の楽しみのひとつ。
こちらはイスタンブールのホテル。
朝に夕に響き渡る祈りの声を聞きながら、読書に耽るという贅沢なひととき。コーランを聞きながらビールを飲む、というのも不謹慎な気がしますが、まあいいでしょう。(笑)
そして現在。
自分の車を持たずに不自由な場所で生活していますが、職場の方が次々と本を貸してくださいます。その方が強く感銘を受けただけのことはあり、とても面白いのですが、この著者の本を自ら手にすることは絶対になかったはずです。そう考えると、やはり今の環境だからこその出会い。おそらくこの著者の本とは一期一会になるでしょう。
一冊の書物との出会い。これからも楽しみです。