見出し画像

大善人へ身魂磨き

悟空のトンネル

自作童話です。


はじまり〜



悟空という、それはそれは大きな男が山にすんでいました。母親は悟空を産むとすぐ亡くなってしまい、悟空は転々と色んな所にあずけられました。


家族を食べさせるのにも大変な時代、預けられた家でもお払い箱。こき使われた末嫌われ、10歳をすぎた頃には家を飛びだし、天涯孤独となりました。


自分の人生を恨み、全てを呪って、自分を嫌い悪口をいった人への復讐心だけが自分の生きる術でした。成人になっても、生きる術は村にでては人を泣かせ、食べ物を奪い、金品を盗む事を繰り返していました。


ある日、悟空はいつも歩いている山道に、見たことのないような綺麗なトンネルがあるのをみつけました。

「こんなとこに、こんなトンネルがあったかなぁ。はて?」

悟空は不思議に思いましたが入ってみることにしました。とても色とりどりの綺麗なトンネルです。どんどんと歩き進みます。トンネルはどんどん曲がりくねっていきます。前や後ろをキョロキョロみながらも、悟空は鼻歌をうたいながら歩きました。



色とりどりなトンネルでしたので、あっち行こう、こっち行こうと寄るところが沢山ありました。可愛いのいちごや、美味しそうなキノコもはえていました。しかし、それを取ろうとするとコロコロと色を変える塵や石に変わります。そして、強烈なにおいを放つのです。吸ったら大変。息が出来なくなるし、ぶつかったらその石が巨大になり、何故かトンネルをどんどん小さくします。美味しくみえた山菜もいっさい食べることができません。


「ちくしょう!」


ぶつかる度に悟空は石を蹴飛ばし狭いトンネルの中で怒り散らしていました。その声は誰もいないトンネルの中にこだまし、自分に痛いくらいかえっていきました。


あんなに綺麗だったトンネルがやがて、どんどんと細くなり、ストローのようになりました。吸っても吸っても息ができません。まわりはだんだん暗くなり、振り返っても道は無くなっており、もう戻れません。


もともと身体の大きな悟空は、細いトンネルの中、身体中には圧迫感があり、苦しくて、早く外の世界に出て綺麗な空気をすいたくなりました。

血はでるし、痛いし、悲しいし、腹はたつし、


「ちくしょう!」


また、涙が溢れてきます。


命からがら泣きながら悟空は歩きます。だんだん、立っては歩けなくなり、かがみながら、そして最後は這いながら進みました。


何日も何日も、道からでる数滴の湧き水だけをのんで、前にすすんでいきました。やがて湧き水もなくなりました。


そんな時、目の前にかすかな点のような光がおぼろげにみえてきました。


傷を負ってぼろぼろになった悟空は、その点をもとめて泣きながら歯を食いしばって進みます。さいごは、溢れでる自分の涙を飲んでいました。塩っぱいです。さらに泣けてきます。


そしてやっとのことで命からがら点の先にある出口に辿りつきました。やっと全身で息を吸った悟空は大きな声で泣きました。

そこにはひとりの男のひとがたっていました。



つづく

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「創作童話」カテゴリーもっと見る