
『日本歯技』2018年4月号巻頭言
歯科技工士国家試験
歯科技工士国家試験が全国統一実施になって今年2月18日(日)の試験で3回目となった。歯科技工士に関わる重要課題の一つであったことから、改めて継続した取り組みの成果に感慨深い想いである。
ところで、歯科技工士国家試験を受験するためには、歯科技工士法では第3章・試験の第14条に、「試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。」とされ、
一 文部科学大臣の指定した歯科技工士学校を卒業した者
二 都道府県知事の指定した歯科技工士養成所を卒業した者
三 歯科医師国家試験又は歯科医師国家試験予備試験を受けることができる者
四 外国の歯科技工士学校若しくは歯科技工士養成所を卒業し、又は外国で歯科技工士の免許を受けた者で、厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めたもの
と規定されている。
毎年、全国の歯科技工士教育機関で歯科専門職である歯科技工士として歯科医療に携わりたいとの志を持ち、卒業した者約1,000名が、専門教育の集大成としてこの試験に臨んでいる。ところが、昨年から第14条第1項第3号を使って試験に臨む者が散見されている。この背景には、歯科医師国家試験に合格できなかった者が増えているからとの憶測もあり、現に、その対策として「歯科技工士国家試験 実地試験対策実技セミナー」の受講者を募集する歯科技工士教育機関もあるようだ。
法治国家である我が国において法令遵守は当然であり、そのことに不合理性はないが、歯科技工士のナショナルセンターとしては、歯科医師を志していた者が、少なくとも、夢破れて歯科技工士を志すのではなく、歯科医師教育の中で改めて歯科技工士の重要性を認識した者が、自身に最も相応しい職業として再チャレンジしてくれることを望むものである。
いずれにしても、前述のとおり歯科技工士は歯科専門職であり、世界で評価されている医療技術者である。医療に携わる者としての豊かな人間性と知識に裏付けされた高度な技術が求められる。安易な考えでこの職業を全うすることは困難である。