公益社団法人 北海道歯科技工士会 組織部会報 [ LiLAC ]
続く課題へ不断の務めを=厚生労働大臣表彰と紫紺章を戴き=
札幌支部 下澤正樹
もしも歯科医療に「民への価値」があるのなら、歯科技工に同種の価値がないはずはない。何故なら、患者個別調製装置の適用は歯科医療のドマンナカだからです。しかし価値あるはずの歯科技工とこれを担う歯科技工士の境遇は、まるで価値が無いかのようだ。私が「社会と歯科技工」について考え発信するようになった動機は、この落差への憤りでした。
多くの方々に助けを戴きながら、以後の私は良く言えば「信念を貫く」であり、同時に時流に乗れず、たくさんの無礼を重ねたと思います。この稿でもそんな私を綴らせていただきます。
< 厚生大臣告示 >「ナナサン告示」と将来課題
現代の国際経済における最大の課題は、統制と放任のバランスです。古くは旧ソ連の統制経済と米国等の放任経済とが衝突していました。現在ではそのどちらもがそれぞれ単独では不全に作用することが知られ、残る共産国家でさえ変動制を一部に取り入れており、片や新自由主義(競争原理主義)だけで成功する国家はありません。いずれの国家もが統制と放任のバランスを図り、安定と継続を図ろうとしているのです。
三十年ほど前、歯科技工士会はこの二項対立に挑みました。その期待は「自分たちも統制経済に入る(「社会保険歯科技工所」制度の発足)」というものでしたが、数年後に得られた政治・行政施策は「既存制度の内側の文言変化」でした。送出形式は確かに大臣告示でしたが、それは社会保険歯科医療機関の経済の“内側の割合”であったのです(昭和63(1988)年)。
この差異は正確に周知されず、全国に多くの悲劇を生みました。途中経過(昭和61年2月)では歯科医師側における合意の反故もありましたが、歯科技工士側には教養が足りなかったと私は整理しております。
現在の環境はこうした歴史のうえにあります。ですから現在と将来の我々が取り組むべきは、a「国民皆保険という統制経済下での歯科技工委託」とb「強い放任経済下に在る歯科技工受託」との【あいだへの施策】です。実は難しくありません。たとえば米国大統領選のサンダース候補が掲げる民主社会主義的(democratic socialism)な経済政策です。我々はここへ向け、教養を高め、言うべきことは言う気概をもつことです。
<財務大臣告示>「関税番号9021-21」邦文改正
平成11(1999)年、歯科医師資格を有する代議士が衆議院厚生委員会において「(海外に流出する入れ歯等は)歯科技工シェアーの5%(に)も達するのではないか。・・・」と質問し、これらが独り歩きを始めました。誤解が誤報を再生させ拡散。斯界が大きく動揺したのです。
私は当時日技の常務理事(調査企画)として、『HS条約』の貿易関税表のひとつ(Artificial teeth)にたどり着きました。この実態は人工歯の輸入量でしたが、その邦文は「義歯」となっており、マスコミ各社さえもが「患者への義歯の輸入が増加」と見誤ったのです。
私はこの対策として条約の日本語表の字句変更を提案し、理事会の支持を得て活動。財務省関税局、厚労省医政局の経済課と歯科保健課、日本歯科商工協会等々、多くの方々に理解していただき、平成16(2004)年12月21日-官報号外第282号において財務大臣告示として、通関関号9021-21(義歯)の細目に『人工歯』が謳われました。
振り返れば日技在任15年。一定の役には立ったと思っています。感染症予防講習会は今や公益事業の一主柱です。50周年事業における御所への参内と「ご進講」の一翼を担えたことは人生の誇りです。公益法人改革では内部で停滞しましたが、外部には勝っていました。
これらすべては二十年以上に亙り留守を護った岩寺由光氏らと家族による支えがあったからこそ可能でした。
祝賀会をはじめこのような機会をいただいた八重樫新一道技の会員の皆々様に感謝を申し上げるとともに、受賞へ導いて下さった杉岡範明日技会長に御礼を申し上げます。
立憲主義体制の下では用語の定義を理解し、
足りなければ法令に盛り込むことから始めること
( ありがとうございました )
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