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おおむねごはんばかり。

リハビリリハビリ

2014年05月26日 | おもいつき
 ブルーを際立たせる厚いガラス。その奥には並々を注がれた塩水の溜りがあり、ところどころのライトアップが魚類の背や腹を白々しく浮き立たせている。周回性を持つ回遊魚はガラスと塩水の柱との間の青白い空気の中を泳ぎ、冷たい酸素をエラに引っかけながら、眠れる場所を探して回遊している。充満されすぎた水は、さらりとした粘性と硬さを失い、気体の性質を帯びる。
 眠りの場所は誰であってもできるだけの静けさを条件とする。できるだけの静けさ、あまりの静けさはかえって、内臓の、体液の、筋肉の脈動を意識させる。彼らにとっての静けさとはと考える。遮蔽されたこちらの空間は人いきれを抜きにすると空間そのものの音がこだましているが、壁の内側ではいったいどのような音が流れているのだろう。水そのものの音。鰭や呼吸によって切り裂かれる空間の音叉。
 遮蔽の奥の煌めき。星々の瞬きのように、それそのもの一つ一つが小さな金管楽器の音質を備えているような気がする。厚い壁、厚い大気の層がそれらをこちらの耳から遠ざけているだけで、きっと音と呼べるような音圧を持っているはずなのだ。ガラスに耳を当てようとして横を向くと、回遊を忘れるなと咎めるような視線が人間の目から発せられている。
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