
★野村美術館 サイト
秋季特別展Ⅱ『茶の湯のわびと美』 ※12月13日(日)まで
本来なら、もっと楽しめたかもしれないのに、
コロナの関係で秋季展の後期の期間に押し込められてしまったという感じが残念。
さりとて、そこは野村美術館。
野村得庵没後75年に因み、生前の得庵さんがお席持ちした茶会の会記に基づいて
道具組を再現した展覧会。(もっとも、手放した道具もあることから、すべてを再現するわけにはいかなかったようだ)
まずは大正12年12月2日に碧雲荘で催された南遊記念茶会。
名前からしていい。得庵が東南アジアのゴム園ほかを事業の関係で訪れたそうでそれに絡んでの茶会。
狩野常信の紅葉滝図は寄付に掛けたものだろうか。
展示は実際のものではなく代用の道具だったけど、舟花入を飾ったそうで。
紅毛結文香合(オランダ製)はテーマの海外にひっかけた?
おそらく本席にかけたのは藤原成経筆の三首懐紙。
成経とは平安時代末期の人で父は後白河法皇に仕えた藤原成親。(大河ドラマ『平清盛』で吉沢悠が演じた)
親子ともども鹿ヶ谷の陰謀に関わったことで、島流しになってしまう。
父の成親が俊寛とともに鬼界が島に流された3人のうち一人で、のちに赦されて戻ってくる。
(しかし、俊寛のみ赦されず一人取り残された。。。のは有名な話)
成経はそこまで遠方ではなかったものの、やはり流罪となり、のち放免された。
で、赦された喜びだか都に戻れる喜びだかを道中で和歌にしたためた~というのが、この三首懐紙。
この夏から院政期の歴史にめっちゃハマって、本読みまくっているので、すごくリアリティが感じられて嬉しかった。
他は織部の梟香合にタマネギのように見える天命の菊花釜。辻与次郎の笹爪五徳。
代用だけど南蛮縄簾水指。
紅葉呉器茶碗に南蛮はんねら火変建水と南の島を連想させる道具組に感心した。
次は大正14年11月12、13日に鷹峯光悦寺の光悦会で濃茶席を担当した際の道具組。
狩野周信筆の蓮鷺図、小堀遠州と松花堂昭乗両者の筆による百人一首帖。
本席の掛け物は小野道風筆と伝わる小島切、花入は青磁珠算玉、香合は古染付張甲牛。
釜は談古堂。首が長い。(←半分以上、炉にはまっていて全体像が見えないのが残念)
水指は伊賀瓢形耳付。茶碗は粉引。(茶入は大海)
菓子器は得庵作の楓葉皿(道八釉。てか道八っぽいお皿)
そして、大正13年11月18、19日に豊秀舎披露茶会で薄茶席を担当した際の道具組。
豊臣秀吉筆の和歌懐紙。
天命真形栗猿地文釜は秀吉が信長に仕官した当初のあだ名が「猿」に因んでの取り合わせ。
紅葉が美しい永楽作の雲華焼楓絵茶器は「保全作」と伝わっているが、永楽印で和全作だろうとのこと。
茶杓は福島正則作(共筒)の「まつ嶋」。
建水は得庵作の鶴絵曲。←ちゃんと観なかった~。残念。(>_<)
極めつけは中央ケースの得庵遺作など。
香合や茶入や茶碗と並んで、茶会記と蔵帳がずらっと並んでいた。
茶会記はほとんどが他会記の内容で、その細かさには頭が下がる。
また、蔵帳は道具名のみならず、自ら色つきでスケッチしたものまで書き添えてあった。
開いていた頁が伊賀瓢形耳付水指で、近くの茶室スペースに展示してあったから、見比べてそのリアルさに感動した。
この直前に観た「北野大茶湯」が伝聞と写本が中心で「リアリティに欠けるなぁ」と思っていたので、
対照的なリアリティに圧倒された。
訪れてよかった。
今回は地下鉄を利用して、蹴上駅から南禅寺の境内を抜けて行ったのだけど、紅葉もきれいだったし。
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