Akatsuki庵

日々と向き合って

利休遺偈

2009年02月28日 00時01分00秒 | 書籍
利休遺偈』 井ノ部康之 (著) 小学館文庫 2005年4月刊
利休遺偈 (小学館文庫)
井ノ部 康之
小学館

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 ネットでは購入できるけど、書店では入手しずらいと思う。
 (今回も図書館で借りた)

 江戸時代中期(吉宗の時代くらい)。
 行方不明だった利休居士の辞世の書を捜す話を縦軸に
 表千家の如心斎、裏千家の又玄斎一燈の兄弟に川上不白も加わり、
 千家中興の話が横軸として展開する時代小説。

 もとは表千家の『茶道雑誌』に2001年から2年にわたって連載されたもの。
 ゆえに時代考証なんかはわりとしっかりしていると思う。

 そういえば、一昨年暮れに江戸博で観た『川上不白展』でも紹介されてた。
 不白が写した利休遺偈も展示されていたように記憶している。
 あの時は七事式の制定のことが印象に残った。こちら

 小説の中でも、人数が増えて散漫にならないよう、
 大勢でも一度に楽しく稽古する工夫として考案されたという流れ。
 遊びの要素が強い反面、追善で花月をするようになった経緯も出てきた。

 六閑斎泰叟もチラッと出てきたり、短命だった最々斎竺叟のこと。
 裏千家中興の祖である一燈の功績もわかった。
 『裏千家歴代』だと今一つピンとこなくて。

 フィクション交じりでも、小説の方がわかりやすかった。
 (昨夏は江戸で亡くなった六閑斎さんのことを気の毒に思った。こちら

 ちなみに、井ノ部サンは他にも千家絡みのネタで小説を発表している。

 『千家再興』1994、読売新聞社…利休の子ども(道安、少庵、お亀)を中心に
 『千家奔流』1995、読売新聞社…宗旦を中心に
 『千家分流』1996、読売新聞社…宗旦の4人の息子を中心に
 
 これをふまえた上で、2002年にベスト新書から出版された
 『利休その後 三千家のルーツをたずねて』を読むと、尚楽しめる。
 いずれも少し前の出版になるので、ネットの中古には出ていた。
 (私は図書館で借りた。『再興』のみ行方不明で読めてないけど)

 一昨年秋に宗旦三五十回忌で展覧会を観た時、長男の宗拙の存在が気になった。
 もっとも『今日庵歴代』によると、最近発見された史料によって、
 次男一翁宗守の生年がそれまでより13年以上後にズレた。
 ということは小説の設定が成立しなくなる。
 次男が宗旦15歳の時の子すると、長男は実子ではなかった?という設定。
 でも、28歳の時だとすれば、ごく自然の流れ。
 (もともと、宗守が55代半ばで実子に恵まれたり、71歳で仕官!?に無理が。
 それぞれ-13歳すればこれもありえる設定だ)

 まぁ、史料がないから、推測の域は出ないのだけど。
 こういう仮説もあるのかぁ~とちょっとビックリした。

ちなみに、本日は利休忌
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