確かアースクェイクを呑んでいた。
「なんかこの頃寂しい季節になってきましたね。でもこれからが本番か…
あの冬と呼ばれるものが又当然の様な面をしてやってくるのですね。
あぁ南国に逃げ出したい。」
俺のそんなくだらない会話付き合ってくれるこの女は誰であろう。
そんな事はどうでもいいか…
今は横にただ頷いてくれるそんな女が必要だっただけだった。
「北国育ちは寒さに強いってのは嘘だわね。」
そう云ってその女は緑色の液体の入ったグラスを唇に傾ける。
ちょっと前にトニックウオーターには緑色と無色透明のが二つあってね…
なんて嘘か本当か解らない講釈をその女から承った事を少しだけ思い出した。
俺もトニックウォーターにはキニーネというという物質が入っていて昔はマラリヤの治療薬として使われていた事を今思い出したが、
彼女にそれを講釈たれたのかは覚えていない。
「北海道はね二重ガラスとかセントラルヒーティングなどが整備されてて家の中などは内地よりも暖かいんだ。だから北海道から内地に越してきた人が冬に風邪っぴ きになるのは珍しくないらしいよ。」
そこまで云って彼女はその時なぜ俺の出身が北海道だと解ったのだろうか?と一つの疑問にぶつかった。
俺がそこまで話したのか?
そう考え出すと頭がグルグルしてきた。
ふと横を見ると今まで話していた女と違う感じがする。
スレンダーなもっと綺麗な女に代わっていた。
さっきの女はもっと可愛い感じの娘だったはずだ。
バーテンに聞くのも本人に尋ねるのも気が引けたのでそのままにして置いて、
相手が話しかけて来るのを待つという事にしたがそれ以来会話はなかった。
彼女の飲む緑色の液体を横目で眺めつつ果てし無い酩酊感にとらわれた。
次の記憶がトイレであるしかも和式トイレの便器に頭を突っ込んでいるという、
とんでもない状況。どうも吐こうとして足を滑らしたらしい。
酔っているせいか力がでない。
「助けてくださ~い!」おれは何度も叫ぶはめになった。
屈辱的だ。その上踏ん張りすぎて糞をもらしてしまった。
最悪だ…
そうやって俺の寂しい季節は幕をあける事となったのだ。
散文詩