白と黒

大衆居酒屋で俺は焼酎を飲んでいた。
右隣にはよく知ってる女が座って、
これまた焼酎のお湯割りを飲んでいた。
二人とも最初はむっつりと飲んでいたが、
なんだろうか些細な事で口論になった。
それで、バカとかなんとか捨て台詞を残して帰って行った。
俺は彼女の背中に「ば～か、ウンコたれ」と言ってやった。
彼女が忙しなく立ち去った後、
俺はある物に気付いた。
忘れ物？
紙袋がひとつ椅子に残されていた。
俺は不謹慎ながらも酔いにまかせて、
その紙袋の中身を覗いてみた。
すると中からロイズピュアチョコレートと書かれた箱が見えた。
自分で食べるのか人にあげるのか知れないが、
気にする必要ない。
あんな女。
俺は包み紙を無造作に破り捨て、
中身を開けた。
中にはシロと黒のチョコが綺麗に二つ分けられて並んでいた。
俺はその円形のチョコをパクって口の中に放り込んだ。
うまい。
そして店員に隠し「ロイズ」のチョコを食べながら、
焼酎をちびりちびりと飲む。
なんと至福の時か…

しかしまぁ小さい男だな。
自分の事ながら、ははは

しかし誰が食べるはずだったのだろうか？
たしか、この前彼女が、
北海道に旅行に行くと言ってたっけ。
その時チョコの話しをしたなぁ。
あの時は俺は「六花亭」のチョコレートが好きだ。
と言ったっけ。
それを「ロイズ」と勘違いしたのかな。
そう考えるとなぜか切ない気分になってきた。
そして、ちょっと涙が出てきた。

ん～～あっ明日はバレンタインデーだったんだ。

とりあえず明日謝ろう。