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「餃子の王将」、なぜ本場中国で失敗したのか

2014-11-06 16:24:48 | 地域外食関連ニュース
なぜ中国人の心を射止められなかったのか(撮影:尾形文繁)
「餃子の王将」、なぜ本場中国で失敗したのか
あまりに手ぬるかった現地化戦略
野嶋 剛 :ジャーナリスト
2014年11月06日

「餃子の王将」で知られる王将フードサービスが、中国子会社の王将餃子(大連)餐飲有限公司を解散すると発表した。

2005年に中国に進出し、遼寧省の大連市で最大6店舗まで運営していたというが、経営が軌道に乗らず、撤退に追い込まれた。

日本では全国にフランチャイズを含めて650店舗以上を展開する餃子の王将。満を持して「本場」に乗り込んだはずが、思わぬ敗北を喫する形となった。

その要因はどこにあったのだろうか。
たまたまこの夏、大連を訪れ街中を歩いていたら、大きな広場の一等地に王将の店舗を見かけた。店の前を通っただけなので何とも言えないが、

お昼時なのにお客はそれほど多くなく、日本ではたいてい行列ができているイメージを持つ筆者は、「王将らしくない」と感じざるを得なかった。

日本の味が受け入れられなかった?

食習慣の異なる海外で飲食事業を成功させる難しさはよく分かるが、「日本でウケている味、やり方は受け入れられなかった」

という王将フードサービス・渡辺直人社長のコメントには、すっきり飲み込めないものを感じる。

もしこのコメントが、「王将の主力である焼き餃子が中国人に受け入れられなかった」ということを指しているなら、半分正しく、半分正しくない。

確かに中国で餃子といえば水餃子が中心で、焼き餃子は水餃子ほど食べられていない。とはいえ、別に中国人は焼き餃子が嫌いというわけでもない。「

鍋貼(グオティエ)」という別の名前の料理が事実上の焼き餃子であり、北方を中心に中国各地で普通に食べられている。

だから「水餃子の壁にはねかされた説」には、あまり説得力がないように思える。

それよりなにより、「日本の中華料理」を中国に持ち込む、という発想そのものに問題があったのではないだろうか。

日本人でも欧米人が好む「日本料理」を日本で食べたいとは思わない。

カリフォルニアロールは日本でそれなりに定着したが、それでも寿司屋の看板メニューにはならない。いくら食べてもやはり味になじみにくいところが残ってしまう。

人間の味覚とは基本、保守的なものだ。どんな料理でも、現地の人々の嗜好に合わせた「現地化」が不可欠になる。

王将の料理は、いわば「日本の中華」の集大成のようなもので、日本の中華料理店で出されている人気メニューである餃子やチャーハン、

レバニラ炒め、野菜炒めなどを、ファストフード的に気軽に食べられるようにしたサービスにこそ、日本市場で成功した理由があった。

日本人と中国人では異なる“餃子感”

しかし、日本に来ている中国人の多くが感じているように、「日本の中華」は中国人の味覚に合わない。味が濃すぎる。

調理法が極端に「炒(いためる)」中心で「蒸(むす)」「烤(やく)」「燉(にこむ)」「炸(あげる)」などのバラエティに乏しいから、メニューが少ない。

餃子について言えば、日本の餃子は皮が薄いのでおなかがいっぱいにならない、という感想が目立つ。

それもそのはず、中国で餃子は主食として食べるので、皮がとにかく分厚くてしこしこしている。

日本では、餃子の皮はあくまでも中の具を食べるためのサポート役だが、中国では逆で、餃子の中の具は、皮を美味しく食べるためのサポート役という位置づけなのである。


だから中国では日本のように「餃子ライス」という頼み方は基本的にあり得ず、中国で日本の餃子を売るというモデル自体が成立しにくい。

ただ、大連にある王将に訪れたことのある人によると、メニューは餃子単品というより、

チャーハンや唐 揚げとセットになっており、日本式餃子だけでは中国人の胃袋を満足させられないことには気付いていたようだ。


また、進出先に選んだ大連という場所が悪かったという説もある。大連は餃子の本場、餃子発祥の地とも言われている。

日本で中国人が開いた中華料理店で「大連餃子館」などと名乗っているところも多い。

そんな餃子の“本場中の本場”に挑むのは、その意気込みは伝わるが、ビジネス戦略としてはやや冷静さを欠いていたかもしれない。

たとえば、餃子文化がそれほど濃厚ではなく、日本的な味にも慣れている台湾や香港で肩ならしをしてから進出したほうがよかったのではないだろうか。


台湾や香港には王将は出店していないようだが、台湾の飲食業の知人からは「まずは台湾で中華圏の味覚や商習慣に慣れてから、

パートナーとして中国人向け商売に慣れている台湾企業と組んで進出したほうがよかったのではないか」という話も聞かれた。

もちろん、日本のファストフードで中国に進出して成功しているところも多い。

イタリア料理のサイゼリヤはかなり頑張っている。ラーメンでも味千ラーメンを筆頭に多くのチェーンが健闘している。

ラーメンは日本人の感覚では中華料理だが、これはほとんど日本料理といっていいほどに独自の進化を遂げており、中国人にとってはまったく未知の味になっている。

特に、トンコツスープは比較的中国人になじみやすい味だったので、味千ラーメンや一風堂には、より大きな商機があるようである。

吉野家は「価格設定」と「内装」で現地化

一方、牛丼の吉野家が中華圏で成功を治めている最大の理由は、牛丼という料理自体中国や台湾、香港の人々になじみがなかったことと、

そのなじみがないという点を逆手にとって高級化路線を選んだことだろう。

日で一人前250円程度で食べられる吉野屋の牛丼は、中国では同じ並で12人民元=220円、

台湾では95台湾ドル=325円と、どちらもほぼ日本並みかそれより高い値段になっている。

これは物価差を考えればかなり高い感覚だ。内装も家族連れやカップルで食べられるよう、テーブル席が中心。

日本のようなカウンター席は、基本的に設置していない。

中華圏では基本的に、料理は複数人で食べるものだ。

一人のときは弁当などで済ませ、外食する際は最低でも2人、普通は4人や5人一緒に出掛ける。

いくら牛丼が一人一椀の食べ物だといっても、やはり一人で黙々と外食しているというのは中国人にとって淋しすぎるのだ。


その点でも、吉野家の路線は的を射ている。

王将も多少は高級化路線を歩もうとはしたのだろうが、核となるメニューが中国で“THE 庶民の料理”である餃子だったわけで、牛丼とはわけが違う。

どうしてもコンテンツとして弱かった感が否めない。

上海で成功したCoCo壱番屋(ココイチ)のカレーも、四川では苦戦しているという。

また、さまざまな中華料理のメニューで多種多様な調理法のミンチ肉を好んで食べる中国では、日本のファミレスの主力メニューであるハンバーグはあまり好まれない。

つまり味、価格、宣伝、戦略などのバランスが取れていて、初めて成功するのが外食産業の海外進出なのだ。

そもそもが「日本流を持ち込めば成功する」というほど、単純なことではない。

こうして見てみると、「日本の味、日本のやり方が通用しなかった」というコメントは、確かにその通りかもしれないが、

それを十二分に承知したうえで生き残りに苦闘しているほかの外食業者たちから

「そんなの当たり前ですよ」と失笑を買いそうなほど、凡庸過ぎる敗北の弁ではないだろうか。


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