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準委任契約の特性について考える(その2)

2010-03-28 00:15:59 | ICT超上流工程
以前、「準委任契約の特性について考える」という記事を記載しました。
その記事へのアクセスがほぼ毎日あるような状況ですので、
ここで一旦、「準委任契約」の基本的な事項について、私なりの確認と整理をしておきたいと思います。


そもそも「準委任契約」というものは、何に定められているのでしょうか?
それは、「民法」の「債権編」(以下、債権法)です。
(私は法律家ではなく、且つ、この「民法」は、内容が奥深いため、ここで「民法とは」とか「債権法とは」などについて記載するのは控えておきます。)

その債権法においては、「贈与」「売買」「交換」「賃貸借」「雇傭」「請負」などの13種類の契約について規定されています。
(ただし、例えばリース契約や宿泊契約など、債権法で規定されているものとは異なる性質の契約形態も存在します。)


その債権法で規定されている契約形態の一つに「委任」契約があります。

「委任」契約は、債権法の「第10節 委任」の「第643条」において、
「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」
と規定されています。
つまり、「委任」契約は、「法律行為」に関する受委託契約である、ということです。
この「法律行為」について確認しますと、たいへん奥が深い?のですが、
例えば、契約の締結や変更、(契約行為が可能となる)法人の設立に関する手続き、法的な紛争の解決、などなどが該当するものと理解しています。

その「委任」について規定されている債権法「第10節 委任」には、第643条から第656までの条項があります。

第643条については、先ほど記載しました。

その他としましては、例えば、
・第644条では、「受任者の注意義務」(善管注意義務)について
・第645条では、「受任者の報告義務」について
・第647条では、「受任者の報酬請求権」について
・第651条では、「委任の解除」について
などが規定されています。


その第647条では、
「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」
と記載されています。
つまり、特約が無い場合は無償、ということです。

また第651条では、
「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」
とも記載されています。
これは、原則、一方的な契約解除が可能(ただしその解約による損害賠償は必要)、ということです。

それらの条項があるため、「委任」は信頼関係があって成り立つ契約形態である、という風に解釈されています。


そして、本記事の本題である「準委任」とは、「委任」契約に関する規定を「法律行為の他の業務に適用する」というものです。

債権法「第10節 委任」の中の「(準委任)第656条」において、
「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」
と規定されています。これが「準委任」という受委託契約の形態が存在する根拠になります。

よって、例えばシステム構築に関する業務で、例えば「助言」や「ドキュメント作成支援」などは法律行為に該当しないため、
「請負」や「雇傭」に該当しないのであれば、「準委任」という契約形態になる、という整理になります。


この「委任(準委任含む)」「請負」「雇傭」の3つの関係についてですが、
これらは他人のために仕事をする契約であり、且つ、契約の性質が異なります。
ポイントを簡単に整理しますと、以下のようになります。

・委任 → 完成責任なし / 瑕疵担保責任なし / 仕事の独立性あり
・請負 → 完成責任あり / 瑕疵担保責任あり / 仕事の独立性あり
・雇傭 → 完成責任なし / 瑕疵担保責任なし / 仕事の独立性なし(使用者の指示に従う)

(ただし、委任は「瑕疵担保責任」がなくても、受委託業務が終了した後に、受委託業務期間中の「善管注意義務」について責任を問われる場合があります。これは「瑕疵担保責任」に近い概念になると理解しています。)

性質が異なりますので、「この受委託業務は、委任であり且つ請負でもある」ということは有り得ないはずです。
一つの受委託業務は、必ずいずれか一つに分類される必要がある、と私は理解しています。

もしも一つの契約書で複数の業務委託契約を締結する場合でも、各々の業務は一つに分類されます。
例えば、ソフトウェア開発業務において、「要件定義」は「準委任」、「設計」「プログラミング」「ソフトウェア結合試験」は「請負」として、契約書に明記しておく必要があります。
(この点については、次回の記事でもう少し記載することにします。)

これらの契約の性質(請負か準委任か)については、現在、某大手SIerと某地方銀行との裁判においても問題になっていますね。
途中で頓挫?したシステム構築プロジェクトの「基本合意書」の性質について、
某SIer側は「基本合意書は請負契約ではなく、よって記載されている金額での完成責任は負っていない」と主張し、
某地方銀行側は「基本合意書は請負契約であり、記載された金額での完成責任を負っている」と主張して争っているようです。
(双方の協力など、他の争点もあるようです。)


このように、「準委任」は、法律上「請負」とは異なる性質の契約形態であり、
また「請負」とは異なる視点での注意も必要になります。

その点に関する私の考え方は、以前の記事「準委任契約の特性について考える」をご参照願います。

また、その点を踏まえた上で、システム構築の受委託業務における「請負」「準委任」の使い分けについては、
次回の記事「準委任契約の特性について考える(その3)」で私の理解を簡単に整理しておこうと思います。


<関連記事>
準委任契約の特性について考える
準委任契約の特性について考える(その3)
準委任契約の特性について考える(その4)

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