ES-335が欲しくなりギブソンを探したが普通の楽器店にはほとんど見当たらない状況だ。数年前に代理店の山野楽器がギブソンとの契約を終了し、ギブソン自ら日本法人を設立して東京、大阪の一部の大手小売店からしか入手出来なくなった。販売は独占的になりこれにより値崩れは防止され、ハイエンドアイテムの高騰を余儀なくされた。ここに至るまでギブソン社の紆余曲折もあるがハイエンドギター最大のマーケット、日本でのギブソン製品の販売単価を上昇させる巧妙な手段が垣間見られる。
景気低迷からの楽器業界の不振、コストを下げるためのアジアでのOEM製造の品質低下等問題も山積。良質な材で高品質な楽器を職人がコツコツ作るなんていうレベルではこの巨大メーカーギブソンは存続できないのである。低価格帯や中級機種をたくさん売ってナンボだろう。世界のトヨタも大衆車カローラがヒットして今がある。日本だけでヒストリックが100本売れても商売にならないのだ。
そんな中、韓国・中国でのOEMに限界を感じたギブソンはビールでおなじみの中国チンタオ(青島)にギブソンとエピフォンの自社工場を2002年に開設。ギブソンブランドのレギュラーラインから上級機種をUSAナッシュビル、低価格ラインと廉価版エピフォンをチンタオと分けて生産し全てのグレードの品質向上を図り、販売本数をもっとも稼げるラインを強化したのは企業として当たり前の政策である。
ハイエンドのヒストリックやカスタムショップでいいのは当たり前だが、とかくマニアは楽器のアタリ・ハズレを誇張し空想的な差別化を勝手に作り出し自己主張したがる。低価格の楽器の価値は価格ありきであまり話にも出ない。サウンドやギター本来の完成度を見ずに重量や木目だけで善し悪しをきめる日本人的な価値観に対しての対抗策として中がくりぬいてあるチャンバーボディのレスポールまで出てくる始末。くり抜いてあるだけで度々まらず空洞部分に軽いバルサ材を充填しソリッド化するという逆にハイエンド工法のモノまで存在する。それはそれで素晴らしいサウンドなのが恐れ入る。でも楽器は非常に精神的なものでギタリストにとってみるとくり抜きレスポールは許されず次こそはヒストリック!というように一人に何本も買わせるという上手な商売に我々は振り回されるのである。
そんなビンテージ神話、ハイエンド神話にチョッと疲れを感じたらこれ。やっと本題のエピフォンの登場。廉価版といっても作るのに手間や技術が必要なセミアコースティックが何と2万7千円。ハズレでも後悔しない価格だ。このエピフォン・リミテッドエディション・ドットスタジオは通常マッドフィニッシュのセミアコでの最低ランク、ドットスタジオの限定生産モノのシースルーチェリーレッドフィニッシュ。1980年代にギブソンから出たBBキングシグネイチャーの改良版ES-335studio、2003年に出た335のモダンバージョンES-333の流れをくむエピフォン版335sutdioだ。
ネックはヒールとヘッドを接いである1ピースマホガニー。チョッと違うがしっかりディープジョイントにしてある。メイプルのセンターブロックはエンドまでしっかり入っていてケーブルスペースだけ小さくあいているのは59年モデルのスタイル。塗装はもちろんウレタンだが吹きムラもなくきれいな仕上がり。ネックは太くしっかりしていて接いである部分もわかりずらい程。このランクにありがちな指板エッジのフレットの引っかかりも無くマイルドないい仕上がり。アクションを低くすると音の詰まるフレットの箇所が3カ所あったが軽く研磨で問題ない。音は335そのものでギブソンだ。レギュラーラインのES-335をカスタムショップ以上のグレードに限定してそれ以外をエピフォンブランドにしたギブソンの心意気がわかる。廉価版でもちゃんとした335トーン。雰囲気も素材にこだわった工房メーカーよりずっとギブソンの雰囲気があり(ギブソン製だからしかたない)、いいけど何か違う?という感じはない。昔のジャパンビンテージのように見えないところは恥ずかしい作りのようなものはなく、列記としたギブソンメイドの作り。人件費だけでこんなにコストが下げれるのか不思議だ。
驚くはピックアップ。カタログを見るとフロントがオープンタイプのアルニコクラシックというエピフォンオリジナル。リアがアルニコクラシックプラスという出力を若干上げたモデルでバランスは良好でMIXトーンもBBなトラッドギブソンサウンドだ。これなら57クラシックやダンカンにチェンジする必要なし。最低グレードの売価2万7千円でTAX・送料込ということは製造コストはいくらなのか。セミハードケースとストラップ、弦、シールド、ピック、クロスまで付いてだ。このクォリティで国産だと軽く7万オーバー。ギブソンチンタオの底力か。安かろう悪かろうのアジアメイドのイメージに終止符を打つのか。しかし、こんなのが出てきたら中途半端なグレードのジャパンメイドは太刀打ちできない。しっかり高級グレードはギブソンでエピフォンでも十分にクラシックサウンドも味わえる。
フェンダーといいギブソンといいやっぱり歴史とブランド力のある企業は凄いというお話でした。
色もかなり自分好みの335ですね。
楽器屋で見かけたら、是非試奏してみたいと思います。
コメントいつもありがとう。
このモデルは限定生産らしくタマは少ないです。
マッドフィニッシュのチェリーはレギュラーなのでチェックしてみて下さい。
是非、ヒストリックオーナーに比べてもらいたいですね。
久しぶりにお邪魔しましたら、エンペラーに続いて何と今度はエピフォンのセミアコですか! 素晴らしい。
音もしっかり335、という事を考えると、一体どうやってその値段で?と考えてしまいますね。
そういえば、エンペラーには「ジョーパスモデル」というのがありますね。私達の持っているタイプより若干薄めの作りになっていますが、あれは弾かれたことありますか?
ご無沙汰です。エピフォンに拘っているわけでもないんですがね。
エンペラーのジョーパスモデルはちょっと小ぶりでベンソンモデルのような感じです。いいですよ。
しかし、現行の中国エピフォンはグレード上がってますね。下手をすると80年代のギブソンの335よりいいですよ。よく考えるとギブソンの工場ですからね。工場開設から10年近くたってやっといい感じに稼働していると思います。このクォリティなら何十倍もする価格のギブソンブランドはどうなんでしょうね。でもやっぱりギブソン?