ペーター・シュライヤーはわたしの初めてのフィガロ。テオ・アダームとシントウの伯爵夫妻だった(… と記憶している。)子ども心にもしばらくはつい鼻歌を歌ってしまうほど印象深くアリアを聞かせてくれたし、楽しかった。それでフィガロの結婚を好きになった妙な恩義も感じるシュライヤー。
表情もあまり見せず、まあすっかりおじい様になられて…
それが、いったん指揮台に立つと、動きは大仰でないけれども、めりはりの着いた音が出るようにとてもきびきびした力強い勢いのある指揮。指示を出すと同時かマイクロ・セカンド前ぐらいで、よくスンと大きく息を吸っている。なんだかその後すぐまるであの爽やかな声を聴かせてくれそうな息継ぎ。指揮棒に持ち替えて、音楽を奏でるのがバイオリンでも、それはあなたの中にある音楽を歌っているんですね。
ヘンデル: メサイア
指揮 Peter Schreier ペーター・シュライヤー
演奏 ニューヨーク・フィルハーモニック メンバー
ウーテ・ゼルビッヒ Ute Selbig, ソプラノ
ナタリー・シュトゥッツマン Nathalie Stutzmann, コントラルト
スティーヴ・ダヴィスリム Steve Davislim, テノール
ピーター・ローズ Peter Rose, バス
ウェストミンスター交響合唱団
今日は音楽家についてくだくだ思わず、教会でミサ、のつもりで聴こうと思っていたけれど、どうしてもこれは言っておかねば。
ウーテ・ゼルビッヒ、まあ素敵なおば様、なんて思ったのは甘い。瑞々しく澄み切って伸びも抜群、かわいらしさもある素晴らしい歌声。彼女の出番の度につい嬉しくなってしまう。なんて素敵な人。
ウェストミンスター合唱大学の合唱団も今日は背伸びをする必要は一切ない。ありのままの若い初々しい声で、一年にせめて2度はしみじみと思いを深くしたいキリストの生涯を一生懸命歌ってくれた。