枯野

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ニッポン放送の取締役に対する株主代表訴訟

2005-04-01 | 雑文



                ニッポン放送の取締役に対する株主代表訴訟
 
 ニッポン放送は、31日、3人の社外取締役が辞任したと発表したと報ぜられ、辞任理由について、読売新聞は、ライブドアへの対抗策として3人も含めた全取締役で決議した新株予約権の発行が認められなかったことを受けた辞任との見方があるほか、今後の展開次第では株主代表訴訟の対象になる恐れが出ていることが背景にあるとの見方もあると付け加えている。
 たしかに、新株予約権の発行が裁判所によって差し止められてしまったことは、それが特にかなりの確率をもって事前に予想できたはずのものであっただけに、この決議に賛成した全取締役には、なんらかの会社に対する損害賠償の責任が生じていることは、明らかであり、もしその損害を会社に賠償せず、かつ、会社もそれらの取締役に対する損害賠償の訴えを提起しない場合には、商法の規定により、6ヶ月前から引続き株式を持っている株主は、所有株数の如何を問わず、会社のためいわゆる株主代表訴訟を提起することができることになる。
 この株主代表訴訟も、先の新株予約権発行差し止め訴訟と同様、裁判所がその訴えを全面的に肯定し、原告株主の勝訴となる公算は、極めて高いといえよう。この取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役会で新株予約権の発行を決議した際、その決議に賛成したときに即座に発生してしまったものであるから、もちろん31日になって辞任したことによってその責任を免れることはできない。
 ただ、問題なのは、今回のこのような取締役の会社に賠償すべき損害額がいくらであるかという点である。会社の金を横領したような場合は、その横領した金額が当然賠償すべき金額となるわけであるが、今回の場合は、そのように単純には賠償すべき金額をにわかに算定しがたく、この点が歳判においては、中心的な争点となるであろう。できれば、この辞任した社外取締役の中に、幸いかねてから会社法関係に詳しい評判の有能な弁護士が含まれているようなので、その意見をもとに、株主代表訴訟に持ち込まれる前に、妥当な金額を進んで会社に弁償してこの問題を処理することが望ましい。
 なお、新株予約権の発行を取締役会で決議した際、会社法関係に詳しい評判の有能な弁護士の社外取締役が賛成していることから、その法律専門家の態度に信頼して、この決議が法的には問題がないと信じて賛成した他の法律専門家でないすべての取締役には、過失がなかったものとみて責任を免れさせることも考えられないでもない。