ASBJから企業会計基準適用指針公開草案第28号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針(案)」というものが出てまして、2月25日までコメントを募集してました。
連結範囲の取扱いについては、これまで日本公認会計士協会監査委員会報告第60号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」というものがありまして、会計監査を実施するうえで監査人はこれに基づいた判断をしていたわけですが、今回の草案は会計基準の適用指針ということで、連結財務諸表を作成する会社はこの指針に従って会計処理をしてくださいね、ということです。もちろん会計監査人としては、会社がこの適用指針に準拠した処理をしているのかどうかを監査することになります。まだ公開草案の段階ですが。果たしてどんなコメントが寄せられるんでしょうか。
この公開草案では、子会社の範囲の決定の取扱いとして以下のような場合分けで、それぞれ具体的な例示をしています。
・他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有していないが、当該他の会社等の意思決定機関を支配している場合
・他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合
・いわゆる孫会社の場合
また連結の範囲に含めない子会社(支配が一時的、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある)やそもそも子会社に該当しない場合について若干の補足説明のような規定があります。
『週刊 経営財務』No.2857での解説記事をみる限り、この適用指針(案)で最も重点が置かれたのは「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」についての考え方を明確化するという点であると思われます。まさしくVC条項に関係する部分でして、日興の問題を受けた適用指針という側面が少なからずあるのでしょう。
まぁ日興に限らず、ベンチャーキャピタルや不動産投資等を含むいわゆる投資会社について、連結に対する考え方が個社によって様々になってしまっているような状況ですとか、またライブドアや日興の問題を受けて監査人を含め連結の範囲に関する考え方はかなり保守的に傾いてしまいましたから、現状のように保守的に全て連結するような会社の連結財務諸表が果たしてその企業の実態を的確に示しているのか?というような問題意識が、おそらく企業会計基準委員会の方々にはかなりあったのではないかと想像しています。
今回の適用指針(案)で、「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」にあたるものとして以下の4つが挙げられています。
1.売却等により当該他の会社等の議決権の大部分を所有しないこととなる合理的な計画があること
2.当該他の会社等との間で、通常の取引として投融資を行っているもの以外の取引がほとんどないこと
3.当該他の会社等の事業の種類は、自己の事業の種類と明らかに異なるものであること
4.当該他の会社等とのシナジー効果も連携関係もないこと
また、なお書き以降での条件として
5.他の会社等の株式や出資を有している投資企業や金融機関は、実質的な営業活動を行っている会社等であること
6.当該投資企業や金融機関が含まれる企業集団に関する連結財務諸表にあっては、当該企業集団内の他の連結会社(親会社及びその連結子会社)においても上記2から4の事項を満たすこと
という条件も付しています。
日興におけるNPIHの問題について、今度の適用指針(案)から考えると2は微妙ですが(EB債を発行してNPIが引き受けていたことが通常の投融資にあたるかどうか、、)3や4には該当しないでしょう。また5にも該当しないと思われます。よって6から考えてダメということになりそうです。
今回示されたVC条項にかかる1から6の条件は、しごくまっとうなものであるように個人的には感じます。そもそも監査委員会報告第60号におけるVC条項というものは、2から4の条件を暗に想定していたような気がしますが(ベンチャーキャピタルってそういう事業を行う会社ですから)、SPCを被投資会社の側と一体としてみてしまうような会社があったり、それを「基準にそう書いてあるから」と認めてしまう会計監査人がいたりしたわけでして、条件をもう一度整理するという意味で今回の適用指針(案)は監査人側にとっても企業の側にとってもある程度の意義があると思っています。
ただ、もう少し個人的な意見を言えば、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあるため連結の範囲に含めない子会社(及び持分法を適用しない関連会社)として「他の会社等が子会社に該当しても、例えば、当該子会社がある匿名組合事業の営業者となり当該匿名組合の事業を含む子会社の損益のほとんどすべてが匿名組合員に帰属し、当該子会社及びその親会社には形式的にも実質的にも帰属せず、かつ、当該子会社との取引がほとんどない場合が該当するが、一般に、それは限定的であると考えられる。」という記述をもうちょっと具体化して欲しかったなと。
ほとんどすべてが匿名組合員に帰属するであるとか、当該子会社との取引がほとんどない場合であるとか、『ほとんど』という言葉を用いていますが、ほとんどってどの程度なんでしょう、という感じですね。この表現には引き続き惑わされそうです。
連結範囲の取扱いについては、これまで日本公認会計士協会監査委員会報告第60号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」というものがありまして、会計監査を実施するうえで監査人はこれに基づいた判断をしていたわけですが、今回の草案は会計基準の適用指針ということで、連結財務諸表を作成する会社はこの指針に従って会計処理をしてくださいね、ということです。もちろん会計監査人としては、会社がこの適用指針に準拠した処理をしているのかどうかを監査することになります。まだ公開草案の段階ですが。果たしてどんなコメントが寄せられるんでしょうか。
この公開草案では、子会社の範囲の決定の取扱いとして以下のような場合分けで、それぞれ具体的な例示をしています。
・他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有していないが、当該他の会社等の意思決定機関を支配している場合
・他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合
・いわゆる孫会社の場合
また連結の範囲に含めない子会社(支配が一時的、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある)やそもそも子会社に該当しない場合について若干の補足説明のような規定があります。
『週刊 経営財務』No.2857での解説記事をみる限り、この適用指針(案)で最も重点が置かれたのは「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」についての考え方を明確化するという点であると思われます。まさしくVC条項に関係する部分でして、日興の問題を受けた適用指針という側面が少なからずあるのでしょう。
まぁ日興に限らず、ベンチャーキャピタルや不動産投資等を含むいわゆる投資会社について、連結に対する考え方が個社によって様々になってしまっているような状況ですとか、またライブドアや日興の問題を受けて監査人を含め連結の範囲に関する考え方はかなり保守的に傾いてしまいましたから、現状のように保守的に全て連結するような会社の連結財務諸表が果たしてその企業の実態を的確に示しているのか?というような問題意識が、おそらく企業会計基準委員会の方々にはかなりあったのではないかと想像しています。
今回の適用指針(案)で、「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」にあたるものとして以下の4つが挙げられています。
1.売却等により当該他の会社等の議決権の大部分を所有しないこととなる合理的な計画があること
2.当該他の会社等との間で、通常の取引として投融資を行っているもの以外の取引がほとんどないこと
3.当該他の会社等の事業の種類は、自己の事業の種類と明らかに異なるものであること
4.当該他の会社等とのシナジー効果も連携関係もないこと
また、なお書き以降での条件として
5.他の会社等の株式や出資を有している投資企業や金融機関は、実質的な営業活動を行っている会社等であること
6.当該投資企業や金融機関が含まれる企業集団に関する連結財務諸表にあっては、当該企業集団内の他の連結会社(親会社及びその連結子会社)においても上記2から4の事項を満たすこと
という条件も付しています。
日興におけるNPIHの問題について、今度の適用指針(案)から考えると2は微妙ですが(EB債を発行してNPIが引き受けていたことが通常の投融資にあたるかどうか、、)3や4には該当しないでしょう。また5にも該当しないと思われます。よって6から考えてダメということになりそうです。
今回示されたVC条項にかかる1から6の条件は、しごくまっとうなものであるように個人的には感じます。そもそも監査委員会報告第60号におけるVC条項というものは、2から4の条件を暗に想定していたような気がしますが(ベンチャーキャピタルってそういう事業を行う会社ですから)、SPCを被投資会社の側と一体としてみてしまうような会社があったり、それを「基準にそう書いてあるから」と認めてしまう会計監査人がいたりしたわけでして、条件をもう一度整理するという意味で今回の適用指針(案)は監査人側にとっても企業の側にとってもある程度の意義があると思っています。
ただ、もう少し個人的な意見を言えば、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあるため連結の範囲に含めない子会社(及び持分法を適用しない関連会社)として「他の会社等が子会社に該当しても、例えば、当該子会社がある匿名組合事業の営業者となり当該匿名組合の事業を含む子会社の損益のほとんどすべてが匿名組合員に帰属し、当該子会社及びその親会社には形式的にも実質的にも帰属せず、かつ、当該子会社との取引がほとんどない場合が該当するが、一般に、それは限定的であると考えられる。」という記述をもうちょっと具体化して欲しかったなと。
ほとんどすべてが匿名組合員に帰属するであるとか、当該子会社との取引がほとんどない場合であるとか、『ほとんど』という言葉を用いていますが、ほとんどってどの程度なんでしょう、という感じですね。この表現には引き続き惑わされそうです。