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日本郵政をターゲットにした政治パフォーマンスはどこまで続くか

2009年03月05日 | ニュース
かんぽの宿の売却問題で鳩山大臣は先週の国会答弁で「(精査して)出せるものから出す。来週初めには要点を出したい」http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009022401000864.htmlと言ったらしいですが、要点として出てきたのは契約書の要点だけだったhttp://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090303AT3S0301O03032009.htmlようで。

しかも、これも別に法的な見解がどうこうではなく、ただそういう条文があったというだけで、じゃあ実際にオリックス側が日本郵政の承諾なしに一部売却をすることが法的に可能なのかどうかは、鳩山大臣や総務省からは言及が全くないですね。

出来レースだとぶち上げたのですから、日本郵政がオリックスに当初から売却を予定していたという証拠をある程度でも出さなければ中間報告もなにもないという気がしますよ。


で、先のニュースでは『総務相は日本郵政が宿泊保養施設「かんぽの宿」の評価に、収益性を重視する減損処理を適用したことを批判し、元来は加入者福祉施設だったかんぽの宿に減損処理がなじまないとの考えを示した。』とのこと。

なんだそりゃ。

福祉施設だろうがなんだろうが、会計上減損処理の対象となることを免れることはできませんよ。それは民営化した日本郵政が企業会計原則に縛られるということだけではなくて、たとえば公益法人というような事業体であろうと減損会計は適用されるのですから。
もちろん加入者福祉のためということをもって、簡保事業と同一のグルーピングにより収益性を考えるという判断もあり得なくはないですが、保険事業とリゾートホテル事業との間に関連性を見出そうとするのは会計監査の側面としてはナンセンスだと思います。

というわけで、「減損処理がなじまない」という感想を述べるのは勝手ですが、なじまなかろうがなんだろうが会計上は減損処理が必要なわけです。極端な話をすれば、加入者福祉のために新たにかんぽの宿を建てたとしても、その宿が収益を生まない(キャッシュフローが赤字である)ことが予想されるのであれば、建設した途端に減損処理するのが会計なのであり、たかだか一介の総務大臣がその会計理論を否定してみても恥の上塗りにしか聞こえないですね。

で、総務省としては、日本郵政の簿価が固定資産税評価額と大きく乖離しているということを批判し、独自に不動産鑑定士による鑑定を実施するとのことですが、それにより日本郵政の簿価が実態よりも低いと判断されたとしても、今回のディールに与える影響は皆無なのですよ。なぜなら日本郵政の簿価水準は、買い手側の評価になんら影響を及ぼさないからです。二次入札での買い手側はデューデリを行って独自の入札金額を設定するのであり、売り手側の簿価がいくらかだという情報に左右されないのが通常ですから。
従って、総務省が独自に鑑定を行い、その評価が固定資産税評価に近づこうと、二次入札でオリックスとHMIが提示した105億という金額が否定されるものではありません。

結局のところ、日本郵政の簿価が実態より低いと総務省が判断するのであれば、それは郵政民営化にあたってかんぽの宿を含めた土地を時価より低い価額で民営化後の日本郵政に国が払い下げたという事実が残るのみであり、低廉譲渡の責任は総務省及び国が負ってしかるべきでしょう。


まぁかんぽの宿は続報が出るかどうかはしりませんが、とりあえずそろそろ出るんだろうということを期待するとして・・・


鳩山大臣、今度は東京中央郵便局ですか。

どうも、これに関しては世論の反応も芳しくないようで。
私は建築の専門家ではないので分かりませんがね。建築史上それほど価値があるものなら、郵政事業が国営であるときから、重要文化財として指定されていてしかるべきだと思いますがね。
今さらの横槍はほんとに意味不明です。

植草氏の植草一秀の『知られざる真実』のように小泉・竹中憎しで陰謀史観に凝り固まりすぎじゃないかと思えるものもあるわけですが。
日本郵政はかんぽの宿を売却しながら、東京中央郵便局の建て替えで不動産事業に参入しようとしているのは矛盾しているというような主張を社民党の保坂氏もブログの中でしていますが、そもそもオフィス賃貸事業とリゾートホテル事業とを不動産事業として一緒くたにしてしまうのは、これまたナンセンスでしょう。
同じ不動産事業であってもオフィスや住宅の賃貸事業がコアでリゾートホテル事業はノンコアというのは常識的に考えられるじゃないですか。

経済環境の悪化もあって、丸の内のオフィス賃貸事業も曲がり角に差し掛かりつつありそうな感じもしますが、東京中央郵便局と時を同じくして、三菱東京UFJ信託や住友信託のビルを含めた一体の再開発が始動していますし、三菱地所を中心とした純粋な民間企業による丸の内開発はまだまだ完成を見ていないのであって、収益性云々という批判も時期尚早な気がします。

日本郵政は赤字転落も想定される郵便事業会社と郵便局会社の経営を安定化するために保有不動産の有効活用を考えているのであり、黒字化が見込めると経営判断した東京中央郵便局の開発推進と、赤字脱却が難しいと判断したかんぽの宿の売却は、両立したところでなんらおかしいことはないのです。そうやって経営を効率化することによりユニバーサル・サービスを守ろうと努力しつつ、民営企業として利益も上げていこうとしているのであって、それこそ郵政民営化の果実を享受するための土台作りがようやく始まったというところでしょう。


選挙が実施されるまでの政治パフォーマンスに国民のどの程度が付き合っていけるんでしょうかね。
かんぽの宿問題については、今でも鳩山大臣よくやったというブログが優勢のようですけど(私が読んで心動かされるものは皆無ですが)、東京中央郵便局の問題ではどうやら半々くらいになってきたような気もしますがどうでしょう。

かんぽの宿がこれ以上盛り上がりそうにないから、それはそれで曖昧なままでおいといて今度は東京中央郵便局をターゲットにしたんだろう、なんて噂がちらほら聞こえてきてますが、鳩山大臣どうなんですかね。