JA CPA Journal

to the next stage ...

シーズン緒戦で・・・

2008年09月09日 | ニュース
ブレイディ負傷で今季絶望ですか。

http://www.nfljapan.com/headlines/detail/597


昨年のスーパーボウルからなんだか悲劇的な流れですね。

アーバンコーポレーション破綻 その2

2008年08月17日 | 会計監査
アーバンコーポレーションの不適切な開示については、8月16日付日経新聞でも記事になっていました。市場関係者にも波紋を広げているとのこと。

前のエントリーの際には20年3月期の監査報告書にGC注記が付されていないことしか見ていませんでしたが、アーバンの20年3月期の有価証券報告書には後発事象としてCB発行の事実が記載されていますね。
にも関わらず、CB発行決議と同日に取締役会で決議されたBNPパリバとのスワップ契約については触れられていません。

CB発行の適時開示情報にスワップ契約の情報が無かったことについては、日経の記事のように「情報開示に疑問」で済まされるかもしれませんが、20年3月期有価証券報告書で後発事象にCB発行と併せて当スワップ契約を開示しなかったことについては、有価証券報告書の虚偽記載にあたる可能性が高い気がします。

後発事象については日本公認会計士協会から『後発事象に関する監査上の取扱い』(監査・保証実務委員会報告第76号)というのが出てまして(つい最近改正されたばかりなのですが)、ここには開示後発事象の例示が載っています。スワップ契約の締結については、例示されたうちの「重要な契約の締結又は解除」に該当する可能性が高いのではないかと考えられます。もちろん開示後発事象について何を開示すべきかというのは一律に判断できるものではなく、各社の実情によって異なるものです。委員会報告にも開示後発事象の事例について「ここに掲げたものは、必ず開示が必要とされるものではなく、会社の財政状態及び経営成績に及ぼす影響の度合い又は態様に応じて開示が必要かどうかについて判断されなければならない。また、ここに掲げていないものであっても、翌事業年度以降の会社の財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす後発事象については開示が必要である。」と記載されています。

しかしアーバンはCB発行については多額な資金調達として後発事象に開示したわけですし、一方でそのCB発行に絡んだスワップ契約について非開示とすることは、金融商品取引法でいうところの「記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合」に当たるのではないでしょうか。


監査をしている立場からすると、後発事象ほど恐ろしいものはないな、と今回の件で認識を新たにしました。

アーバンの会計監査人であるあずさ監査法人による監査報告書日付が6月26日であり、CB発行及びスワップ契約締結の取締役会決議が同じ6月26日でした。通常、有価証券報告書の監査は6月の上旬から中旬で現場作業が終了し、それからは監査報告書の提出を待つのみとなります。もちろんサイン済みの監査報告書を会社に提出するのは監査報告書に記載された日付であり、引き換えに経営者確認書を受領するわけですが、その日より前に開催された取締役会でどのような決議がなされたのかということについて、監査人は注意深く?見ていると思います。
しかし、監査報告書提出と同日に開催された取締役会の内容をどこまで把握できるのかといえば、これは監査報告書提出の場に居合わせたことのない私のような下の立場では分かりかねるとこですね。

アーバンとあずさ監査法人との間で、このスワップ契約について事前に情報交換が行われていたかどうかは分かりません。両者が良好な関係であれば、こういった契約について会計上問題となるような点はないかどうかについて契約前に両者で検討が行われるかもしれませんが。
ただ、監査人に無断で有価証券報告書に後発事象を書き加えるというのは考えにくいですし、CB発行については監査報告書提出前後のいずれかにおいて後発事象としての開示の是非について両者で検討が行われたはずです。
そこでもしスワップ契約の存在についても会社から話があったのだとしたら・・・。

まぁ適時開示においてスワップ契約の存在を明らかにしなかったアーバンのことですし、監査法人への情報提供もなされていなかったのかもしれません。

アーバンの問題については、今後色々と展開がありそうです。

アーバンコーポレーションがお亡くなりに

2008年08月14日 | 会計監査
新興不動産企業の破綻連鎖が止まりませんね。
建設業界もしんどいことになっているし、監査をする環境も痺れる場面が増えてきそうな予感が。

ロイターの記事を読んだけれど、ひどいもんです。
http://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPnTK017169220080813

非常に重くなっている同社のHPでIRを見てみると、以前に発行した転換社債型新株予約権付転換社債の発行条件について訂正IRが出ています。

こんな発行条件が付されているのを破綻のときまで開示しないような東証1部企業があるとは到底考えられません。誰がどう考えても当初IRでの発行総額300億(費用差引後の手取概算額は299.5億)の調達ができたものと判断してしまうでしょうね。実際はその300億をいったん返すだけでなく、転換後の株券を売却した代金を貰う契約になっていようとは誰が想像できるんでしょう。

引受先のBNPパリバは転換した株式をひたすら売りまくり、さらに株価が下がってスワップ契約の下限株価を割り込んでしまえば入金はストップしてしまう。
CB発行時にこうした条件が適切に開示されていれば、投資家もまともな判断ができたでしょうに。


監査法人の意見不表明方針が民事再生法申請と同時にニュースになるのは、監査制度としてはうまく言っているとはいえないと思っています。
平成20年3月期のアーバン・コーポレーションの有価証券報告書にはゴーイング・コンサーンの注記が付いてるわけでもないし、有報提出の6月末時点では、まだ新興不動産企業の資金繰り懸念が表立ってはいなかったのかもしれないですが。

訃報

2008年06月18日 | ニュース
mixiで知ったのですが、e.s.t.のEsbjorn Svenssonが亡くなったそうですね。

ショックを通り越して言葉になりませんが。
残念です。非常に。




公認会計士がインサイダー

2008年03月04日 | ニュース
日経の1面を飾ってしまいましたね。
見出しを読んだときは度肝を抜かれました。

新日本監査法人がプレスリリースを出してます。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate/press/20080303.html

宝印刷の件はひどい話だと思いましたし、NHKの件はどうしようもない話だと思いましたが。
大手監査法人の公認会計士がインサイダーとは。。
二次試験に合格したてのペーペーなわけでもなく、三次試験にも合格したれっきとした公認会計士がですよ。
借名口座を使っていたという報道ですから、罪の意識はあったでしょうに。産経新聞によると『「意外と平然と調査に応じ、謝罪の言葉も最後に少しあった程度。若者特有の無神経さというか、幼さというか」-。同監査法人は会見で、本人に悪びれる様子はなかったことを明かした。』だとのこと。

大手監査法人は程度の差こそあれ、職員の株式保有についてはかなり神経質になっていると思います。全職員に株式保有を禁じているところもあるでしょう。投信だって、ファンド監査を受嘱している委託会社のものについてはダメということになっているのではないでしょうか。監査法人所属の会計士が資産運用しようとすると、なかなか運用先に困るというのが正直なところです。

しかしいくら法人が規制を強化したところで、借名口座を使った取引まで発見できるわけがなく、あとは各個人のモラルの問題。
証券取引等監視委員会が調査中とのことですが、本人は認めているような報道ですから、今後様々な処分が下されるでしょう。金融庁による行政処分や公認会計士協会による懲戒処分等で、この公認会計士の氏名が公表されるやもしれません。資格剥奪は避けられないでしょうね。

新日本監査法人は、この会計士が元職員だったことに少し安心しているかもしれません。現役の職員だったら目も当てられない・・・。
それでもこのようなモラルの低い人間を雇っていたことの責任は問われるべきです。

公認会計士による監査制度の根幹を揺るがすような事件は、なかなか尽きないものです。。気が滅入りますよ。

連結の範囲

2008年02月26日 | 会計監査
ASBJから企業会計基準適用指針公開草案第28号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針(案)」というものが出てまして、2月25日までコメントを募集してました。

連結範囲の取扱いについては、これまで日本公認会計士協会監査委員会報告第60号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」というものがありまして、会計監査を実施するうえで監査人はこれに基づいた判断をしていたわけですが、今回の草案は会計基準の適用指針ということで、連結財務諸表を作成する会社はこの指針に従って会計処理をしてくださいね、ということです。もちろん会計監査人としては、会社がこの適用指針に準拠した処理をしているのかどうかを監査することになります。まだ公開草案の段階ですが。果たしてどんなコメントが寄せられるんでしょうか。

この公開草案では、子会社の範囲の決定の取扱いとして以下のような場合分けで、それぞれ具体的な例示をしています。
・他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有していないが、当該他の会社等の意思決定機関を支配している場合
・他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合
・いわゆる孫会社の場合

また連結の範囲に含めない子会社(支配が一時的、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある)やそもそも子会社に該当しない場合について若干の補足説明のような規定があります。


『週刊 経営財務』No.2857での解説記事をみる限り、この適用指針(案)で最も重点が置かれたのは「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」についての考え方を明確化するという点であると思われます。まさしくVC条項に関係する部分でして、日興の問題を受けた適用指針という側面が少なからずあるのでしょう。
まぁ日興に限らず、ベンチャーキャピタルや不動産投資等を含むいわゆる投資会社について、連結に対する考え方が個社によって様々になってしまっているような状況ですとか、またライブドアや日興の問題を受けて監査人を含め連結の範囲に関する考え方はかなり保守的に傾いてしまいましたから、現状のように保守的に全て連結するような会社の連結財務諸表が果たしてその企業の実態を的確に示しているのか?というような問題意識が、おそらく企業会計基準委員会の方々にはかなりあったのではないかと想像しています。

今回の適用指針(案)で、「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」にあたるものとして以下の4つが挙げられています。
1.売却等により当該他の会社等の議決権の大部分を所有しないこととなる合理的な計画があること
2.当該他の会社等との間で、通常の取引として投融資を行っているもの以外の取引がほとんどないこと
3.当該他の会社等の事業の種類は、自己の事業の種類と明らかに異なるものであること
4.当該他の会社等とのシナジー効果も連携関係もないこと
また、なお書き以降での条件として
5.他の会社等の株式や出資を有している投資企業や金融機関は、実質的な営業活動を行っている会社等であること
6.当該投資企業や金融機関が含まれる企業集団に関する連結財務諸表にあっては、当該企業集団内の他の連結会社(親会社及びその連結子会社)においても上記2から4の事項を満たすこと
という条件も付しています。

日興におけるNPIHの問題について、今度の適用指針(案)から考えると2は微妙ですが(EB債を発行してNPIが引き受けていたことが通常の投融資にあたるかどうか、、)3や4には該当しないでしょう。また5にも該当しないと思われます。よって6から考えてダメということになりそうです。

今回示されたVC条項にかかる1から6の条件は、しごくまっとうなものであるように個人的には感じます。そもそも監査委員会報告第60号におけるVC条項というものは、2から4の条件を暗に想定していたような気がしますが(ベンチャーキャピタルってそういう事業を行う会社ですから)、SPCを被投資会社の側と一体としてみてしまうような会社があったり、それを「基準にそう書いてあるから」と認めてしまう会計監査人がいたりしたわけでして、条件をもう一度整理するという意味で今回の適用指針(案)は監査人側にとっても企業の側にとってもある程度の意義があると思っています。

ただ、もう少し個人的な意見を言えば、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあるため連結の範囲に含めない子会社(及び持分法を適用しない関連会社)として「他の会社等が子会社に該当しても、例えば、当該子会社がある匿名組合事業の営業者となり当該匿名組合の事業を含む子会社の損益のほとんどすべてが匿名組合員に帰属し、当該子会社及びその親会社には形式的にも実質的にも帰属せず、かつ、当該子会社との取引がほとんどない場合が該当するが、一般に、それは限定的であると考えられる。」という記述をもうちょっと具体化して欲しかったなと。
ほとんどすべてが匿名組合員に帰属するであるとか、当該子会社との取引がほとんどない場合であるとか、『ほとんど』という言葉を用いていますが、ほとんどってどの程度なんでしょう、という感じですね。この表現には引き続き惑わされそうです。

『小説 会計監査』(3-2)

2008年02月18日 | 読書
VC条項というのは、日本公認会計士協会が出している監査委員会報告第60号『連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い』というものの中にある規定です。この中では子会社の範囲は実質的な支配力の基準で決定すべきという原則論に対して『財務諸表提出会社であるベンチャーキャピタルが営業取引としての投資育成目的で他の会社の株式を所有している場合には、支配していることに該当する要件を満たすこともあるが、その場合であっても、当該株式所有そのものが営業の目的を達成するためであり、傘下に入れる目的で行われていないことが明らかにされたときには、子会社に該当しないものとして取り扱うことができる。』と規定していまして、これがこの本にたびたび登場するVC条項というものです。
NPIはベンチャーキャピタルとして投資育成目的で他の会社の株式を所有していたわけですが、その際にはSPCを作り、そのSPCに他の会社の株式を所有させるスキームを用いていたようで、ベルシステム24の株式取得に当たってはNPIHというSPCが作成されたわけです。
VC条項という例外規定が設けられたのは業界の要請があったからだと推測されますが、これを公認会計士協会が認めたのは、投資育成目的で他の会社の株式を所有する場合には、あくまでその会社と一体として事業を行っているのではなく、投資会社と被投資会社は別個の法人として独立的に事業を営むことを前提としており、独立とした法人同士の間に恣意的な会計操作が行われる余地が少ないことをもってこれを認めたのだと考えられます。従って常識的に考えれば、日興にとってNPIとNPIHが実質支配力基準に従い連結子会社となり、ベルシステム24についてはVC条項を用いて連結しないという結論が妥当なものだと思われます。

事実、日興の不適切な会計処理が日経金融新聞で報道されたとき、同業他社の大和證券では日興と同様のスキームを用いて投資を行っている場合、SPCまでを連結対象として、その先の被投資会社のみを非連結としていると紹介されていました。(野村は米国基準のため被投資会社までも連結対象。)

VC条項があるから連結から外せるんだと著者はこの章のあちこちで主張してはいますが、SPCを被投資会社として連結除外するのは、上記規定の設定趣旨を逸脱しているように感じます。「いまの制度会計ルールはとてもきっちりと枠が決められていて、それから逸脱できないようになっていて、会計理論に基づいて考え直すという昔あったようなことが、認められなくなってしまっています。」と主人公は述べていますが、現実の監査はそんなことはありません。もちろんルールとして書いてあることには従わなければなりませんが、そのルールが設定された理論的背景に、実際の会計事象がどの程度あてはまるのかどうかは会計監査人ならば常に考えているのではないでしょうか。
小説の舞台となった監査法人は、三洋減損ルールにしろ日興SPC非連結ルールにしろ、会計基準に関する会社の特異といってもいい主張に対して、会計基準の本質に照らしてどれだけ真剣に検討したんだろう、と考えてしまいます。

それからこの日興の問題に関する著書の記述について、2点ほど強く主張しておきたいことがあります。
1点目は「仮に問題があったとしても、600億円の公表利益が120億円多いだけだ。役員報酬が利益スライドの成功報酬制度になっているので、多くもらったかもしれないが、そんな額などたいしたものではない。」という記述がありますが、言い訳にもほどがあると怒りを覚えます。投資家にとって20%増益の影響は少ないものではありません。また監査においても、利益の20%というのは金額的な重要性は非常に大きいものです。20%が粉飾だとして会社が修正を拒否するのであれば、会計監査人としては不適正意見を表明しなければいけないほど巨額なものです。問題を矮小化したいと考える著者の立場は分かりますが、仮にも会計監査人の立場としてこういう物の言い方は賛成できません。

また2点目は会計処理の継続性の問題についてです。日興の訂正報告書について取引のスキームが変わっていないのに連結の処理を変更することは監査人として継続性違反といわざるをえない、といった記述がありますが、きっとこういう考え方がこの監査法人の根底にあって、不幸な結果になってしまったんだろうなと想像してしまいました。投資会社とSPCとの間に通常でない取引があったということは、これまでの処理を変更する十分な理由になると思われます。百歩譲ってそれまでSPCを被投資会社とする考え方が間違っていなかったとしても、投資会社とSPCとの間に独立した第三者間取引とは言い難い事象(粉飾であると疑われかねない事象)が新たに発生したのであれば、そこで連結の範囲についての考え方を修正することは可能であったはずです。

過去の監査結果を翻すことは監査人にとってなかなか困難なことではありますが、継続性違反をことさらに言い立てて過去の監査結果を正当化するのは、不幸な未来をもたらすだけです。
カネボウの教訓(もっといえば山一證券の飛ばしに関しての過去の監査経験)が最後まで活かされなかったんだなぁ、という読後感でした。

『小説 会計監査』(3-1)

2008年02月14日 | 読書
第4章 月光証券会計不正スキャンダル
この本で書かれている社名を使うと混乱してしまうので、日興コーディアルグループの事件と勝手に仮定して、読み替えて書くことにします。

日興の会計不正についての詳細は省略してしまいますが、著者が書いているように整理すると
① 日興の子会社であるNPIが、その株式の全てを所有し、実質的に支配しているNPIHを連結の範囲に含めなかったこと
② NPIHにEB債(他社株償還特約付社債)を発行させ、NPIに所有させたこと
③ EB債の発行日を遡らせたこと
その結果、平成17年3月期にNPIにEB債の評価益約120億円が発生し、同時にNPIHに同額の評価損が発生した。しかし、NPIHが非連結であるために、NPIの評価益のみが親会社の日興コーディアルグループに連結上で計上されることになった、というものです。

改めて書くと、ほんとに会計に親しんでいる人以外は内容がさっぱり理解できないのではないかと思いますが、そういう人でも安心して証券市場に参加できるように会計専門家である公認会計士がいるわけですから、会計士が適切な判断を下すというのは非常に重要なことだと考えています。

主人公は「会計監査人として見ていないところなのでどうも実際のところがはっきりしない③を除き、会計実務上、それ自体、不当なものとはいえないルールになっているんだよ」と言っています。EB債の発行日改竄は、NPIHの取締役会議事録の改変(というか後付けかな?)というかたちとなっていたわけですが、ペーパーカンパニーであるNPIHの取締役会議事録はなかなか監査でも見る機会がないと思いますし、日興の特別調査委員会による報告書では発行決議が8月4日ではなく実際は9月22日だったという話でその差が1月半しかないのですから、確かにこの点からすると会計監査人が気付く可能性は低いのかもしれません。ただ疑問に思うのは、このEB債の取得をNPIはいつ会計処理したのでしょうか。実際の発行が9月22日だったのであれば会計システムへの入力もこれ以降だったはずです。特別調査委員会の調査でもNPIの8月月次決算にはEB債が計上されていなかったことが指摘されています。さらに実際の発行決議日とされた9月22日の直後の9月27日にはベルシステム24株のTOBが発表されているわけですから、EB債が仕訳計上された直後に、TOB価格によりNPIに評価益が計上されることが確定したわけです。これだけをみて胡散臭さを感じても良かったのではないかと思います。ただ発行日改竄の発見に関してはなかなか難しいというのが本音でしょう。

この本にもありますが、特別調査委員会の報告をみても監査法人がEB債のオプション部分から生ずる評価益にやけにこだわっていたという印象を受けました。引当金をたてるとかなんとか。ただしこれについては金融商品会計基準に従いデリバティブ部分を時価評価し、取得時より時価が高くなっているなら評価益を計上するという方法以外にはないと考えます。これについては議論の余地がないでしょう。これに関し主人公は「残念ながら金融商品会計基準は非常におかしな基準だと思っています。」と言っていますが、含み益経営を否定するのは時代の流れでしょう。時価のある金融商品は時価評価して評価損益を計上する会計理論自体がおかしいとは全く思いません。

それよりもおかしいのは、VC条項の解釈であるのは明らかでしょう。

第42回 スーパーボウル

2008年02月04日 | ニュース
帰宅したらちょうど21時になりそうなところで、NHKのBS1を点けてみたらNYジャイアンツの選手がインタビューを受けていたところでした。
無駄に残業したなと後悔しつつも、NFLのオフィシャルサイトでハイライトを見たわけなんですが、素晴らしい試合だったようです。4Qの2ミニッツに入ってからの攻防をライブで見ることができた人は幸せですね。こうなると中途半端に残業してしまったことよりも、むしろ今日は仕事を休んで朝からテレビを見ているべきだったのではないかという気がしてます。
ハイライトなので第4Qの攻防が特にクローズアップされていましたが、あれだけを見ても今回のスーパーボウルが歴史に残る名勝負の1つと語り継がれるであろうと容易に想像が付きます。シーズン全勝でスーバーボウルまで勝ち上がったペイトリオッツが負けるというのは、なかなか予想ができなかったんですが。

ちょうどニューヨークに出張で行っている知り合いがいるのですが、スーパーボウル制覇の後のニューヨークの街の雰囲気を体験しているというのは物凄く羨ましいです。来年はレギュラーシーズンでいいので、1試合は生で見たいと心の底から思っているところでして、MBA留学でシカゴに行っている友達に泊めてもらって、ベアーズの試合でも見に行きますかね。でも冬のシカゴは寒そうなのがちょっとマイナスですか。
それに来年は四半期決算にJ-SOXと盛りだくさんですから、おそらくそんな暇はどこにもないんでしょう。今期の2倍働く必要があるのは確実みたいですので。上場企業の監査報酬も今期までの2倍近くになるのではないですかね。

『小説 会計監査』(2)

2008年01月31日 | 読書
第2章 ABC銀行消滅
この銀行が消滅するにあたっての経緯については多くの書籍が出ているので、今更この本を読んで感じることは多くはないですが、それでも金融庁検査官の行動が事実なのだとすれば、政治マターとなってしまった企業において会計監査人が果たせる役割は微々たるものなのだと再認識させられるには十分でしょう。
学者出身の大臣の下で行われた当時の金融庁検査が実態を無視するほどに厳格であったというのは、その後の大手銀行が多額の貸倒引当金戻入益を計上した歴史が物語っているわけでして、当時の金融機関関係者にしてみれば、大臣に対する評価が非常に辛いものになるのは当然のことだと思います。

また金融庁は繰延税金資産の評価についての正確な会計的な知識を持ち合わせていたのかどうか、当時から個人的には疑問を持っていました。銀行としては自己資本比率が重要な指標なわけでして、公的資金注入やむなしと判断できるほど自己資本比率を人為的に低下させるには、繰延税金資産を否認することが最も手っ取り早いわけです。しかし貸倒引当金を積み増せば積み増すほど、繰延税金資産もまたそれに比例して積みあがっていくわけで、しかも厳格な金融庁検査が想定したように貸出先の状況が悪く、その後の貸出先の倒産等により銀行の課税所得が減少するのであれば、繰延税金資産の資産性というのはより強固になると考えられます。
すなわち、抜本的な不良債権処理を行うことを意図して検査を厳格にし、貸倒引当金を大幅に積み増すことは、銀行の赤字体質をその時点で打ち止めにするという効果をもつと考えられますが、にも関わらず繰延税金資産の計上を認めないということは、将来的に銀行に収益(正確には所得)が生じないと判断しているということになり、基本的に両者は矛盾しているわけです。
これについても大手銀行が、現在多額の利益が生じているにもかかわらず、ようやく納税を始めた住友信託銀行を除いて、繰越欠損金の繰越控除により法人税を未だに払っていないという歴史が証明しているのではないでしょうか。繰越欠損金も税効果会計の対象となり繰延税金資産の計上根拠となりますから、繰延税金資産を多額に否認させた当時の金融庁は非常にナンセンスだったと思わざるを得ません。

そうは言っても、著者のように当時の金融庁検査を強く否定するものではありません。個人的には、大手銀行を潰すことも辞さないという強い意志を持っていた当時の金融庁の存在が、バブル崩壊後の「失われた10年」を終わらせた重要なファクターであったと思うからです。
金融の存在は経済にとって重要なものであり、金融機関がふらふらすれば実体経済にも影響が出てくるわけです。(もちろん実体経済になんらかの問題があるから金融機関がふらふらしてしまうわけですが。)アメリカのサブプライム・ローンの問題は日本におけるバブル崩壊を思い起こさせますが、ここでのアメリカの対応は90年代初頭の日本より遥かに対応が早かったといえるのではないでしょうか。もちろん現時点でのアメリカの対応が十分であるのかどうかについてはなんとも言えない段階ではありますが、アメリカにおいて今後10年間にわたってリセッションの局面が続くと予想する人は皆無であると思います。
金融機関による早期の損失処理、財務会計審議会によるSIVの連結処理検討とそれを見越した金融機関によるSIVの連結化、監査法人によるサブプライム・ローン関連資産の評価厳格化といったアメリカにおける対応は、会計・監査的には非常に素早い対応であると思っています。
翻ってバブル崩壊後の日本では金融機関による不良債権処理は遅々として進みませんでした。これは表現としては適切でないかもしれません。正確には、処理が常に中途半端で、既存の不良債権を処理する前に新たな不良債権が発生し、いつまで経ってもその処理が終わらなかった、と言えばいいのでしょうか。

これは金融機関の監査をしていた監査法人にも責任の一端があるように思います。護送船団方式の上に安住していたのは、銀行監査を担当する監査法人も同じだったのではないかと想像しています。金融機関の早期是正措置が導入されたのは1998年からでしたが、自己査定の制度が導入される前であっても、金融機関監査において貸出金の評価は重要な論点であったはずです。バブル崩壊後において、監査法人はこの重要な論点について会計・監査的に早期にかつ適切な対応をしたと言えるのでしょうか。

著者は「銀行のように当局検査のある業種には、もう公認会計士監査は要らないといっています。アホ臭くてやっていられません。」と書いていますが、経済において重要な役割を果たしている金融機関に対する外部監査を否定してしまっては、公認会計士が経済において果たすべき役割自体を放棄してしまっているように感じられてなりません。


第3章 大日本郵便公社民営化
この章では、結局著者が何を言いたいのかよくわかりませんでした。民営化に向けて大きな貢献をしたはずの監査法人との契約を、不祥事があったからといって切り捨てた役人の頭は固いと言いたいのかわかりませんが、この時期は大企業ほど他の監査法人への乗り換えに積極的だったわけですから、公社の行動だけが異常だったわけでもありません。


第4章 これはまた次回に