本号で紹介する新規殺虫・殺ダニ剤“モベントフロアブル”はバイエルクロップサイエンス株式会社が開発した環状ケトエノール系の有効成分スピロテトラマトを含有した製品で2013年11月に上市されました。本剤は野菜の吸汁性害虫(アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類およびハダニ類)に対して散布や灌注処理で高い効果を示します。同系統の製品としてはダニエモン、クリアザール・ダニゲッターがありますが、本剤の特長としては他の殺虫剤にはない植物体内を上下方向へ移行し適用害虫への殺虫効果を示します。
モベントフロアブルの特長
○幅広い吸汁性害虫に優れた効果と難防除害虫に安定した効果
アブラムシ類、アザミウマ類およびコナジラミ類に優れた効果を発揮し、ハダニ類およびチャノホコリダニも同様に防除できます。また従来の薬剤に対して感受性の低下したアブラムシ類やタバココナジラミおよびミナミキイロアザミウマに高い効果を示します。
○優れた浸透移行性
処理された有効成分は植物体内に速やかに取り込まれ、導管や篩管を通じて作物の生長点へと運ばれます。生長点付近は多くの吸汁性害虫の寄生場所なので、害虫を効率的に防除できます。
○遅効的ですが長い残効
遅効的な薬剤ですが、残効性に優れ効果が長期間持続します。
○1製剤で2つの処理方法
移植前のポット苗灌注と生育期の茎葉散布が可能です。
○適用内容 散布の場合 (成分:スピロテトラマト22.4% 普通物)
作 物 名 |
適 用 害 虫 名 |
希釈倍率 |
使用時期 |
使用回数 |
きゅうり メロン |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 ハダニ類 |
2000倍 |
収穫前日まで |
3回以内 |
なす ピーマン とうがらし類 |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 チャノホコリダニ ハダニ類 |
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トマト ミニトマト |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 トマトサビダニ |
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すいか |
アザミウマ類 コナジラミ類 ハダニ類 |
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いちご |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 |
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ズッキーニ |
アブラムシ類 コナジラミ類 |
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ばれいしょ |
アブラムシ類 |
4000倍 |
7日 |
○適用内容 灌注の場合 (成分:スピロテトラマト22.4% 普通物)
作 物 名 |
適用害虫名 |
希釈倍率 |
使用時期 |
使用回数 |
※きゅうり メロン すいか |
アザミウマ類 ハダニ類 |
500倍 |
収穫前日まで |
1回 但し、散布を含む総使用回数は3回以内 |
アブラムシ類 コナジラミ類 |
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なす ピーマン とうがらし類 |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 チャノホコリダニ ハダニ類 |
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トマト ミニトマト |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 トマトサビダニ |
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すいか |
アザミウマ類 コナジラミ類 ハダニ類 |
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いちご |
アザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類 ハダニ類 |
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ズッキーニ |
アブラムシ類 コナジラミ類 |
<使用上の注意事項>
○ 本剤を軟弱な苗に灌注又は株元灌注すると薬害を生ずる恐れがあるので、注意して下さい。きゅうりに株元灌注する場合には、薬液が新芽にかかると縮葉等の薬害を生ずる場合があるので、かからないように処理して下さい。
○ 蚕に対して長期間毒性があるので、周辺の桑葉にかからないようにして下さい。
○ 本剤はマルハナバチに影響があるので、本剤を使用する場合には他の方法で受粉作業(人工授粉、植物ホルモンなど)を行って下さい。
○ 本剤の使用に当っては使用量、使用時期、使用方法を誤らないように注意し、特に初めて使用する場合には病害虫防除所等関係機関の指導を受けることが望ましいです。
○ 水稲に本剤がかかると不稔などの薬害を生じる場合があるので、かからないように注意して下さい。