![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/48/766c2c0a3801cf768fd3d26263fdc004.jpg?1650028456)
布施長春(ふせ・ちょうしゅん)『曽我兄弟』
眞子夫人の夫である小室K氏が、ニューヨーク司法試験に又落ちた事が話題になっております。両陛下が久方ぶりに皇居の外へ行幸啓なさったと言うのに、余り話題になりませんでした。インパクトの大きさは相変わらず、眞子夫人方の方なのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/31/cf7cca61060a94aa9576dca5c604fb47.jpg?1654679721)
高畠華宵
しかし悪いというか、印象が良くないものが多い。7月に又試験を受けるそうですが、夫人の気持ちはいかばかりでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/0f/8130956c6513a65ff2166d1366036998.jpg?1650168352)
栗原玉葉 『八百屋お七』
このK氏と一緒になるために、“八百屋お七„以上に炎上させました。全国的にです。その上で夫婦になりニューヨークへ拠点を作ろうとしたというのに、その拠点作りが未だにキチンと出来ていないという、その現実をどう受け止めていらっしゃるのでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/4a/8f69e34d9783581766f8111afad96ead.jpg?1650169389)
あれだけ反対されてもガンとして押し通された、夫人の道ですから、存分に苦労して改めて己を見つめ直して頂きたいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/0c/a77d573a4dbc80c058fd4b414d1ae1bc.jpg?1650169935)
門井掬水 『憂い』
今回ご紹介する、講談社の絵本は、『曽我兄弟』です。現在の大河ドラマで放送している『鎌倉殿と十三人』と同じ、時代で起きた父の敵討ちをした兄弟達の物語です。大河でも取り上げられるかも知れません。
(追記めっちゃ取り上げられました。今は余り知られていない話しですけど、意外な程の反響で、この絵本を紹介して良かったです)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a6/9656c8b3fb7923c5c8aecc917e575df0.jpg?1650166545)
横尾芳月 『曽我兄弟』
有名な話ですので昭和十二年に出版されました。戦後も復刻しました。2000年にも復刻されましたが、どうもオリジナル版の方が、絵の数が多いようです。今回載せましたのは、運良くネットでキレイな状態で購入出来ました、戦前版の方です。
こちらは戦後のゴールド版の講談社絵本『曽我物語』です。時代考証がとても正確です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/ca/b189a41f61ede50bd70538a143de6bac.jpg?1650199150)
米内穂豊(よない・すいほう)画
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/ba/6399cf2e0e17f4f2aabe395c43cda351.jpg?1650197703)
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/f4/0264b385d721b86de0e36b15f2071ce5.jpg?1650199206)
戦前の子供が読む絵本ですが、絵がとても素晴らしくて、金銀泥が使用されていて画家の力の入れようが伺えます。『曽我兄弟』の絵本で、布施長春の描いたこの絵本が、一番素晴らしいというのが、当時からの評価です。それは間違いないとこの絵本をみますと、多くの方もそう思うでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/8d/20873fa7f9083263cb207107de25c515.jpg?1650006278)
『曽我兄弟の、小さい時の名は、兄は一満、弟は箱王と言いました。この日は、お父様の河津三郎佑泰が、山へ、狩りに、出かけるところです。この時、兄は五つ、弟は三つでした。兄弟は、いつもこんなにして、可愛がられていました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/88/2c1e919c1cd3c9d91b80c26594623131.jpg?1650073994)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/fc/2ad3ab83b5357ea8357477e221d69b78.jpg?1650007478)
『狩が済んで、おおせいの人が、山から帰って来るところです。河津三郎は、白い馬に乗って、中でも一番勇ましく見えました。後には、伊東佑親が、続いておりました。佑親は三郎のお父様で、曽我兄弟のお祖父様です。この時、曲者が、山の木の影に隠れていて、三郎を狙って矢を、放ちました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/8b/5269a31687c4ce139b5a8e0c5fb0606e.jpg?1650075123)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/7a/0c1c1dd147f827711d4aa92fe80b9e13.jpg?1650075158)
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『矢は三郎に当たり、体に、深く、つったちました。元気な三郎は、直ぐ、自分の弓矢をつがへ、キッと睨んで、見回しましたが、どんなに強くても、もう、矢に、当たっております。その傷が、大変深いのでたまりません。曲者に、曲者に、狙いを付けることも出来ずに、馬から、落ちてしまいました。』
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『あとから来た伊東佑親が直ぐ、馬から飛び降りて、介抱しましたが、三郎は、傷に弱って目も見えません。
「残念ながら、わたくしは死にます。後に残る、子供のことを、頼みます。わたくしを狙った
曲者は、工藤佑経に頼まれたのです。敵は、佑親です」と言って死にました。』
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『死んだ三郎が、運ばれて家に帰ると、一満も箱王も、びっくりして、とりすがって、泣きました。もう、呼んでも、ご返事は してくださらない。頭を撫でて貰うことも、出来ません。兄弟は、父のいない子となってしまったのです。これほど悲しいことがありましょうか。お母様も、召し使いも、皆、泣き悲しみました。』
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『お母様は、兄弟を、右左に、抱き寄せて、
「良くお聞きなさい。お父様を、討ったのは、工藤佑経です。佑経が、敵ですよ」
と、言い聞かせました。箱王は、まだ小さいから、良く分かりませんが、一満は五つですから
「わたくしが、今に大きくなって、きっと敵を討ちます」
と、答えました。』
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『箱王も、だんだん大きくなると、敵を討ちたいと思うようになりました。敵を討つには、強くならないといけないので、小学校一年生位の、歳になると、兄の一満と一緒に、剣術や、弓矢、馬の稽古を、始めました。早く、強く賢くなって、敵を討ちたいと、思って、兄弟は、一生懸命稽古を励みました。』
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『一満が九つ、箱王が7つの時でした。お庭で、十三夜の月を眺めていると、五つ並んだ雁が、空を飛んでいきました。
「あぁ あの雁の先のはお父様、後のはお母様、中の三つは子供であろう。雁には、雁にはお父様、お母様もある、羨ましいなあ」
と、兄弟は手を取り合って、悲しみました。』
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『ある日、箱王は、お父様を、思い出して縁側で、涙ぐんでおりました。一満は、それを見て
「どんなに思っても、死んだお父様には、会えないから、お母様とお話をしましょう」
と、言って、奥へ、連れていきました。お父様のことを思うと、兄弟は、早く、敵を討ちたくて、たまりません。』
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『工藤佑経は、敵討ちに来られては、困るので、色々と、作り事を、こしらえて
「曽我兄弟を、生かしては、いけません」
と、将軍源頼朝に、進めました。頼朝は、家来の梶原源太に
「兄弟を捕まえ、由比ヶ浜へ連れて行って、首を切ってしまえ」
と、言い付けました。』
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『源太が兄弟を連れに来たので、お母様はびっくりしました。
「可愛い、子供達を殺すなら、わたくしも殺して下さい」
と嘆きました。源太は、気の毒に思ったけれど、将軍の言い付けですから、仕方がありません。兄弟を馬に乗せて、連れて行きました。この時、一満は十一、箱王は九つでした。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/ca/84d7cfa849042a353d26e0608bbf946d.jpg?1650076718)
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『源太は、兄弟を由比ヶ浜へ連れてきて
「何か言い残す事はないか」
と尋ねました。一満は、
「恐れずに首を切られたと、お母様に言って下さい」
と答えました。箱王は悲しそうでしたが、直ぐ元気になって
「わたくしも、立派に、切られたと言って下さい」
とにっこりと、可愛いらしく、笑いました。』
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/5f/9a67e9990ece56a3c44c3d209b722076.jpg?1650021437)
『いよいよ、源太の家来は、刀を振り上げて、兄弟を斬ろうとしました。その時です。馬に乗った侍が、
「待った、待った」
と、駆け付けて
「私はこの兄弟を、助けに来たのです。畠山重忠が、将軍へお願いして、兄弟を、許してもらうことになったのです」
と、話しました。それは重忠の家来、はん澤六郎でした。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/13/b3b2ac720aa8d39cf677f4f529916269.jpg?1650076399)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/5f/67fc656297c6d76f1db45b34f7656fab.jpg?1650006928)
『重忠のおかげで、危ないところを、助かった兄弟が、馬に乗って、家に帰ると、それを見た、召し使いは、馬にとりすがって、わっと泣きました。あんまり、嬉しかったからです。まして角口へ、駆け出して来た、お母様は、どんなに、嬉しかったでしょう。嬉しくて、口も、聞けませんでした。』
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/96/8f6aa836b7c940445646b8ac091f69b0.jpg?1650006959)
『一満は十三になると、十郎佑成と、名を、改めました。これからは十郎です。その時、箱王は、十一になっていましたが、箱根権現の社にいる、行實という人の弟子に、やられることになりました。お母様のお申し付けですから、仕方なく、兄さんに送られて、箱根の山へ登りました。兄さんと別れる時は、どんなに、寂しかったでしょう。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/27/abc392c4316b78322c996a2fe6e33ad6.jpg?1650076458)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/21/b8af59cdcf25cf6648c869b3bfe1d97a.jpg?1650006990)
『箱王が、行實の弟子になった次の年のお正月に、将軍頼朝が、大勢のお供を連れて、箱根の社へ、お参りに来ました。お供のなかに、祐経がいないかと、箱王が、物陰から、そっと覗くと、その中に敵の祐経がいました。仲間の信丁さんが教えてくれたから、分かったのです。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/e6/5f16b41ff8b07654193cceb8deff9922.jpg?1650076482)
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『箱王は、祐経を目の前に、見たので、もう、敵を討ちたくて、たまりません。この時と思った箱は、短刀を握って、祐経の側へ、近寄ろうとしました。けれども、大勢の中ですから、なかなか、隙がありません。佑経も、用心しているので、とびかかる事が、出来ません。そのうちに、佑経は、将軍のお供をして、とうとう帰ってしまいました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/2c/6317c85c849907d867cb2201b6cd912c.jpg?1650076508)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/bf/e0f85192006f0772415e87b1275b1f85.jpg?1650021492)
『箱王は、何時までも箱根にいると、坊さんにされるので、十七になると、箱根から、帰って来ました。そして兄さんと相談して、北条時政に頼んで、五郎時宗という名を、付けてもらいました。兄さんは、その前に、十郎と、改めていましたから、これからの兄弟は、曽我十郎、五郎と呼ばれたのです。』
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『五郎に名を与えてやった時政は、
「一つ、力試してご覧。あそこに、祐経が植えた松が、ある、あれが抜けるか」
と、庭の松の木を指差しました。仇の植えた松と聞いて、五郎は、うんと力を入れて、引き抜きました。時政は、
「強いぞ五郎、それくらいなら、今に、立派な侍に、なるぞ」
と大層誉めました。』
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/6c/28e50f8442396b41902a9e15d6d823ff.jpg?1650021563)
『ある時、十郎が、大磯の宿屋に、立ち寄ると、名高い侍の、和田義盛が、大勢のものと、酒盛りをしていました。その中の一人が、十郎に喧嘩を仕掛けました。その頃、五郎に知らせるものが、あったので、五郎は、早く兄さんを助けようと、裸馬に、飛び乗って飛ぶように、宿屋へ駆け付けました。』
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『五郎が、駆け付けると、朝比奈三郎が
「もう、喧嘩は、済んで、これから、仲直りだから、お入りなさい」
と、鎧の鎖りを掴んで、引っ張りました。五郎は
「嫌だ」
と、踏ん張りました。朝比奈も、強い、五郎も、強い、強い同士が、引っ張り合ったので、丈夫な鎖りも、ぷっつり切れて、朝比奈は、ずでんどんと、転びました。五郎の強いのに、皆、びっくりしました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/29/f86273591a08109f396581e7eb374d79.jpg?1650076591)
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『十郎が二十ニ、五郎が二十になった年、将軍が、富士の裾野で、まき狩りをすることになりました。敵の祐経も、そのお供をすると聞いたので、兄弟はこの時こそと、仇討ちの支度をして、お母様に、お別れをしました。お母様は、兄弟に綺麗な小袖を、一枚づつ下さって、お別れの、酒盛りをしました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/75/9c05473f67f4eaeb57d76d389d7a11fb.jpg?1650021686)
『酒盛の間に、お母様が、
「五郎は、舞が、上手だそうだから、お別れに、見せて下さい」
と言いました。五郎が舞うと、十郎は、それに合わせて、笛を吹きました。舞いも、笛も、本当に、上手でした。こうして兄弟は、お母様を慰めて、その夜は遅くまで、親子睦まじく、過ごしました。』
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/1f/93b1408c6b0d6a7c3d1c828e700baa95.jpg?1650022446)
『次の朝になると、兄弟は、馬に乗って、門を出ました。二人揃って、勇ましい姿です。けれども、これが本当のお別れで、お母様、会えないと思うと、何べんも、振り返りました。お母様も、兄弟の、見えなくなるまで、見送って
(どうぞ、仇が打てますように)
と、心の中で、祈りました。』
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/b6/2c3a7e95b6136f8be4b81e738233079e.jpg?1650021801)
『兄弟は、富士の裾野へ急ぐ途中箱根の権限様へ、お参りをしました。ここは、五郎が、子供時に毎日、祈ったお宮です。今度は、兄弟揃って
「どうぞ、仇が討てますように。私たちは命を捨ててかかります。仇を討ちさえすれば、直ぐ死んでも構いません。どうぞ、討たせて下さいますように」
と、お祈りしました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/9c/14eb13e1044ded802149c89dda89e37f.jpg?1650077195)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/c1/29e1ee5d70b86c2ba952f40b7ba60cef.jpg?1650077216)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/ac/db6071bead0c3bea040155bf5ae21320.jpg?1650022507)
『富士の裾野の巻き狩が、始まりました。ほうぼうの国から集まった、何万の人達が、鹿、猪、狐、狼、いろいろの獣を、狩り立て、おびきだして、討ち取るのです。まるで、戦のようです。兄弟は、その中へ、紛れ込んで、仇を、狙っていました。けれども、大勢の中です。仇の工藤佑経には、なかなか出会いませんでした。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/a8/eba00c6b04cc16c31e3aa31b84b24ba7.jpg?1650022469)
『三日目の夜です。明日は、狩もおしまいになるので、今夜でないと、佑経を討てません。兄弟は大雨の中で、松明を、照らしながら、
「さぁ、いよいよ、命懸けだぞ。お別れに、顔を良く見ておこう」
と、互いの顔を、じっと、見合せてから、佑経の宿を探し始めました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/55/7ffde20f7d47b78c510cad4e7a69803b.jpg?1650074098)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/b0/8e25a23e1c1582e39324825a0f2cadb7.jpg?1654779301)
『宿は、沢山あるのでどれが佑経のか、分かりません。兄弟が困っていると、畠山義忠の家来、本田次郎が、通り掛かりました。夜回りをしていたのです。本田次郎は
(これはきっと、仇を、探しているのだ)
と、思ったのでしょう、こっそり
「佑経の宿はあっちだぞ」
と兄弟に、教えてくれました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/e6/3f31edb1e2a3e9ec9c1a383456390a92.jpg?1654779433)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/34/75cb74e76b694adbe10fa3dc558ab8b6.jpg?1650022489)
『兄弟は、喜び勇んで、教えられたほうへ、急ぎました。すると、向こうに、灯りの洩れた宿がありました。戸の隙から覗くと、そこが佑経の宿屋でした。皆、寝静まっているので
「それ、今のうちだ」
と、兄弟は、戸を外して、中へ入りました。沢山の部屋を通って、奥へ踏み込むと、そこに祐経が、寝ていました。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/a7/8dc66200dc78622ec09dc15537a25b76.jpg?1650025345)
『寝ているものを、討ちとっては、卑怯ですから、十郎は、枕を蹴飛ばして
「佑経起きろ河津三郎が子が、父の仇を討ちに来たぞ」
と、大きな声で名のりました。こうして、佑経が、飛び起きて、刀に手をかけるところを、兄弟が、おどりかかって、切り倒しました。父が殺されてから、十八年目に、めでたく、仇を討ったのです。』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/e4/024b77893257c6b7327173fa9a83aca0.jpg?1650077292)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/24/bade7d6ab16beb1e116045187b446ac4.jpg?1650025328)
『仇を討てば、死ぬ覚悟ですから、兄弟は、逃げようとはしません。あちらこちらの宿屋から、駆け出してくる、強い侍達と、勇ましく、戦いました。兄弟二人で五十何人も、斬った後で、十郎は、親戚の仁田四朗と戦い、四朗に、手柄をさせてやるつもりでとうとう、討ち死にをしました。』
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『五郎は、敵を追いかけて、将軍のお宿に、踏み込みました。これを見た御所五郎丸は、将軍が、危ないと思ったので、女の着物を着て、五郎に近寄り、後ろから、いきなり組着きました。他の侍も、一緒にとびかかりました。五郎は、手当たり次第に、投げ飛ばしているうちに、床板を踏み抜いて、生け捕られました。』
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『将軍頼朝は、五郎を助けてやりたいと、思いました。親孝行で強い侍であるから、家来に、したかったのです。けれども、五郎は、はじめから、兄さんと一緒に、死ぬつもりでしたから、自分だけ、自分だけ、生きているのは、嫌でした。そこで、自分から望んで、笑いながら、討たれました。
兄弟のお母様は、仇討ちの様子を聞いて、
「十郎も、五郎も、日本一の孝行ものです。良く、仇を討ってくれました。亡くなったお父様も、さぞ、お喜びなさいましょう」
と、大層、喜びました。
頼朝からは
「兄弟の仇討ちは、まことに、侍の誉である。褒美をやりたいが、二人とも、死んでもしまったから、母に与えるぞ」
と言って、お母様にご褒美を、下さいました。世間の人々も、曽我兄弟は親孝行で、兄弟仲良く、鬼神のように強くて本当に偉いと、誉めました。(終わり)』