近代建築撮影日記

日本全国の近代建築を
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Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 ASPHERICAL III E-Mount【その1】(アオリ操作をせずにアオリ効果を得る!の巻)

2017-12-04 17:57:56 | カメラ

Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 ASPHERICAL III E-Mountを購入した。
ブランドはドイツの名門フォクトレンダーだが、日本のコシナ製である。





仕様書に表記されているレンズの画角は対角線画角であって左右幅の画角ではない。
実際に写り込む範囲は水平画角(左右の画角)で考えなければ解りにくいのである。
仕様書上、15mmレンズの画角は110°となっているが、
水平画角(左右の画角) 100 °、垂直画角 (天地の画角)77 ° も表記してほしい。

なぜいきなり画角の話かというと、今回、このレンズを買うにあたって画角に関して考えたからである。

かつて『Photoshopによる建築写真の修整』という記事で
アオリ操作やデジタル補正をせずに建築の垂直線をを平行に撮影する方法として、
カメラを縦長に構えて下半分に大きく道路を入れて建築を撮影し、トリミングするというやり方を書いたことがある。
(ノートリミング)

(トリミング後)


フイルム時代のシフトレンズを生かそうとしてフルサイズのデジイチを購入したものの、綺麗な写真が撮れなかったという苦い経験もあり、
今後高額な現行シフトレンズを購入せずに、デジカメでアオリ操作に匹敵する建築写真を撮影する方法として、これを活用しようと考えたのである。

さて、この方法で撮影する場合、想定される画角よりさらに広角なレンズを必要とする。
フイルム時代にPC-NIKKOR 28mm F3.5を愛用していたが、画角が狭いのでZUIKO SHIfT 24mm F3.5を買い足したことを考えると
最低でも24mmレンズの水平画角を確保したい。

24mmレンズの水平画角は74°である。
縦長に撮影して半分トリミングする場合、垂直画角を74°以上確保すればよいことになる。
そのことから、垂直画角が77°の15mmレンズを選ぶに至ったのである。


15mmクラスの中でも Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mmのIII型を選んだ理由は・・・
デジカメ対応の工学設計が施されており、周辺部の色被りや光量低下が少ないからである。
トリミングする場合、実際に切り取る画像は中央部より周辺部に片寄ることが多いので周辺部の描写が悪いレンズは使えない。
そして、コシナのHPで「直線を直線として写し取るレンズとして、デジタル画像処理に依存せず、光学的な性能を徹底的に追及。非球面レンズの採用により、ディストーション(歪曲)を徹底的に排除しています」と謳っていること。建築撮影には最も重要な要素だ。
もう一つ、58mmのフィルターねじが切ってあること。
超広角レンズはフィルターねじが無いことも多く、保護フィルターを付けれるというのは重要な要素になる。
歩きながら首かけで撮影する場合は不用意に触れてしまったり、木の枝か何かに当ったりすることもある。
しかも、58mmという一般的なフィルター径なのが有難い。

私はハクバブランドのWPC WIDE MC レンズガードを付けた。
超広角レンズなので、フィルター枠によるケラレが無いか要確認だ。

なお、フォクトレンダー超広角「ヘリアー三兄弟」は15mmの他に12mm、10mmがライナップされているが、
15mmを選んだのは、他の2本ではパースペクティブ(遠近感)が強調され過ぎて使いにくかろうという理由である。

更に、Eマウント用ならボディ側のレンズ補正設定
「周辺光量補正」「倍率色収差補正」「歪曲収差補正」
を選ぶことが出来る。
私は「周辺光量補正」「倍率色収差補正」の2つをON(オート)に設定した。
センターNDフィルターが欲しいが物が見つからないな、と思っていたがこれで問題が解決した。
ディストーション(歪曲)を徹底的に排除したレンズなので「歪曲収差補正」は不要だろう。
【追記】後日談。若干の歪曲収差があるので、結局「歪曲収差補正」もオートで撮影している。



トリミングによる画質低下については・・・
愛用のα7の画素数は約2400万画素。半分にトリミングするとして1200万画素。

APS-Cサイズでクロップ撮影したような感じになる。
ポスター印刷をするわけではないので、まあ使えるレベルだ。
ブログ用としては完全にオーバー・クォリティである。
本当にポスター撮影が必要なら、新発売のα7R III(約4200万画素)を購入すれば対応できそうだ。

※一般的なポスターサイズであるA1に300dpiのオフセット印刷をするなら
9933×7016(ピクセル)=69689928(画素)単純計算で約6970万画素になる。
ポスターは離れて鑑賞するものなので、実際にはここまでの解像度が必要ではなく、
2000万画素もあれば十分だと思われる。
印刷について詳しいわけではないが、
明らかに低画素の画像をアップコンバートして印刷したと思われるポスターをよく見かける。

さて、いよいよ試写である。
MINOLTAシールでSONYを隠したα7に登場願おう。


超広角レンズなので被写界深度の深さを利用したパンフォーカス撮影で建築を写そうと思う。

指標を頼りにF4.5で1m-∞で合焦するようにピントを調整した。

被写体はおなじみの
旧 網干銀行本店 である。

カメラファインダーの水準器とグリッドを見ながら、水平垂直を出して撮影。
電子ビューファインダーは、水準器・グリッド表示や拡大表示ができるので便利だ。

トリミング前提であるのに加えて、近寄りすぎるとパースペクティブ(遠近感)が強調され過ぎるということもあり、周りは多めにとってある。

四隅にフィルター枠によるケラレは無い。フィルター常用可能だ。
余分な部分をカットする形でトリミング。

しかし、塔屋が右肩上がりになっている。

そこで、ファインダーのグリッドを見ながら塔屋の中心と撮影画面の中心を合わせて撮影。

塔屋の中心は避雷針。必ずしもデザインの中心とは一致しないので注意する。
トリミングすると・・

シノゴで左シフトとライズの複合アオリをしたのと同じく
塔屋の歪みを修正した画像を得ることが出来た。

以下のようなイメージで考えると複合アオリと同じだとお分かりいただけると思う。

赤枠は今回トリミングをした部分。
青枠は撮影したフルサイズ画像の中心部分をトリミングと同じ大きさで切り取ったもの。

アオリ操作なしでアオリ効果を得ることが出来た。
思わく通りである。


さて、次はトリミングした画質について。
α7のフルサイズ最高画質で6000x4000(ピクセル)=24000000(画素)で2400万画素の画像を得ることが出来る。
そこから半分の3000x4000(ピクセル)=1200000(画素)すなわち1200万画素にトリミングした画像の原寸大で解像度を検証してみたいと思う。


検証に使う画像はこちら。
まず、塔屋のデザインが左右対称に見えるように、デザインの中心と塔屋の中心を合わせて撮影した。
もちろん、塔屋の中心と撮影画面の中心も合わせてある。

6000x4000(ピクセル)ノートリミング。

3000x4000(ピクセル)にトリミングして・・

塔屋の装飾デザインが綺麗な左右対称に撮影できた。
これを原寸大でお見せしようと思ったが、大き過ぎてブログ仕様上不可能なので
塔屋上部を撮影原寸に拡大表示。

なんとなく眠たい画像。
絞り開放(F4.5)でパンフォーカス撮影したからかもしれない。


そこで翌日、絞り開放(F4.5)にして建築にピントを合わせたうえでF8まで絞って再撮影。
被写界深度が深くピントの山をとらえにくい為、都度絞りを F4.5に開いてピントを合わせなければならない。
絞りを開いてピントを合わせてから絞って撮影というのは、シノゴ撮影と同じである。

6000x4000(ピクセル)ノートリミング。

3000x4000(ピクセル)にトリミング。

塔屋上部を撮影原寸に拡大表示。

精密にピントを合わせてF8まで絞れば、この通りくっきり スッキリと写る。
被写界深度が深いとはいえ、目測のパンフォーカスではピントが甘くなるのである。
これなら、ポスター大の印刷にも対応できるかもしれないと思った。


次は、建築の側面を見上げて撮影(ノートリミング)

四隅に画像の乱れが見られるものの、建築のラインは左右の端まで真っ直ぐ伸びている。
このような構図の場合、収差の大きいレンズだと左右の端がぐにゃっと中心方向に円弧を描いて曲がってしまう。
コシナHPの通り、極限まで歪曲を取り除いた優秀なレンズである。

次に、周辺部の描写についてだが、
この程度の四隅の乱れは15mmクラスで絞り開放撮影なら仕方ないと思う。
絞れば少しは改善されるだろう。
あるいは、α7Sなどの「高集光プロセス技術」やα7R IIIなどの「裏面照射型」のCMOSセンサーなら改善できるのかもしれない。
こればかりは実写で確認しなければ、分からないが・・・


※参考:OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO SHIfT 24mm F3.5による撮影画像
(使用カメラ:EOS 6D、すべて絞りF8で撮影)

イメージサークルは18mmレンズ相当の画角があり、その範囲内で上下あるいは左右にアオリ操作ができる。
特に優れた点は、アオリ量の合計が10mmの範囲内なら2方向の複合アオリが可能なことである。

1枚目の塔屋が右肩上がりになった画像とほぼ同じ立ち位置から撮影
(ライズアオリ使用)

24mmというとかなりの広角レンズだと思っていたが、ギリギリ収まるという感じだ。

次に、複合アオリで塔屋の歪みを補正してみよう。
塔屋の中心と撮影画面の中心を合わせて撮影
(アオリ操作なし)

赤線は縦横の中央線。アオリ操作をしないと、建築は収まらない。

カメラの位置と向きはそのままで、ライズ(上向き)と左シフトの複合アオリを操作して撮影。
(ライズ・左シフトアオリ使用)

黄線は複合アオリ後の縦横の中央線。
塔屋を中心にカメラを据えて、レンズの中心軸を上・左に移動した。
15mmレンズで塔屋を中心に撮影して、画面の上・左をトリミングしたのと同じことである。
違うのは、トリミングすると画素数が減るということ。

次は、
画質検証に使った、塔屋のデザインが左右対称に見えるようにデザインの中心と塔屋の中心を合わせたうえで、
塔屋の中心と撮影画面の中心も合わせて撮影した画像 とほぼ同じ立ち位置から撮影。
(ライズアオリ使用)

意外に狭い24mmの画角。最大にライズアオリしてもアオリ量が足りない。
EOS 6Dのイメージセンサーはα7とは異なるため単純比較はできないが、
画質を見るため右上部分を撮影原寸に拡大してみる。

ライズアオリ最大なので、右上はイメージサークルの一番外側になる。特に青方向の色収差が酷い。
塔屋上部を撮影原寸に拡大表示してみると、

15mmレンズと比べて、解像度が眠たく色収差もある。
これではブログ用くらいにしか使えない。画素が減っても15mmでトリミングの方が良さそうだ。

最後に、建築側面。
見上げて撮影。
(アオリ操作なし)

歪曲収差が良好に補正されたレンズだと思う。

同じ立ち位置から、最大ライズアオリで撮影。
(ライズアオリ使用)

イメージサークルの外周を使った撮影だが、歪曲収差は感じられない。

少し下がって、垂直線が平行になるようにライズアオリして撮影。
(ライズアオリ使用)

若干の周辺光量落ちがあるものの、良好な描写だと思う。
右上部分を撮影原寸に拡大した。

画面中央部を撮影原寸に拡大した下の画像と比べると、光量落ちがあり色収差も大きいのが分かる。


フイルム時代の古いレンズではあるが、ポスターなどの大判印刷に使わないのなら十分通用する優秀なレンズだと思う。

長くなってきたので一旦筆を置くが、その他被写体の作例やα7ボディのレンズ補正効果などについては、次回
『Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 ASPHERICAL III E-Mount【その2】(まるでシノゴとジナーズームで撮影しているようだ!の巻)』
につづく。


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