またまた幽体離脱してまいりました。
先日映画1000円dayの『風たちぬ』の後、続けてロベール・ブレッソンの『白夜』も観たのを思い出しました。
原作はドストエススキーの短編、19世紀のペテルブルグを舞台にした『白夜』は、こればで、57年にルキノ・ヴィスコンティ―によっても映画化されてるそうです。ブレッソンの方の映画はパリに舞台を移し、セーヌ川とポンヌフを背景にそこですれ違う男女を見つめていく、という仕立てになってあります。
パンフレットには「'70年代の美しいパリの街、今なお新鮮なマルト(女性主人公)のモダンな装い、セーヌの恋人たちをうっとりさせる歌や音楽、漆黒の川面をゆきかう観光船のまばゆいばかりの美しさ・・・・一度見たら忘れられないシーンで胸がいっぱいになる大人の恋の映画」とあります。
まず題名に『白夜』とありますが、原題は「Quatre Nuits d'un Rêveur」とありまして、「夢見る者の四夜」なんですよね~。実際主人公の男女ふたりの物語は4夜で終わりますからね。ドストエフスキーの原題も『白夜』なのかな??
まぁこういう事はよくあることだからいいとして、確かに映像は美しかったです。主人公二人も美しかったですし。とにかく、パリの街を歩く姿をたくさん映しますよね。そして歩く靴の単調音がいつまで続くの?という場面もありました。あれは意図的なのかな?ヒールの音がなかったら退屈で全然観れないですよね。
場面は主人公画家のジャックがポンヌフ(パリにある橋の名前)で自殺しようとしている美しい女性マルタに出会うところから始まります。彼女が自殺しようとした原因は失恋なんですが。その後ジャックが止めたのかどうか覚えてませんが(笑)とりあえず自殺は未遂で、二人は翌日同じ時間、ポンヌフで会うことを約束します。
それからお互いの事を話し合う夜が第1夜~4夜と続くわけです。。
どうなのかな?美しいかったのかな?物語的に?
主人公の男性ジャックは孤独な青年で、理想の女性との出会いを妄想してはそれを詩みたいなのにして、テープレコーダーに吹き込んでいるような男性。→ただの気違いですね。詩を創るのはいいとして、なんでテープレコーダーに録音すんだろう?
そして、道で会った女性にすぐ恋に落ちて、その人の後を惹かれるようについてってしまう。→これはコントですね。そしてそのことを「僕はこういう性分なんだ」的なさも苦悩した顔でいう。
そして傑作なのが最後のシーンで、傷心のマルタは4夜優しいジャックと語り合う中で、「私はあなたの方をこれから愛していくわ」的なことを約束した直後、昔の彼と偶然街で会ったとたん、ジャックの目の前で速攻で何の悪びれもなくそっちに行っちゃうんですね~。
これは面白かったですね。速攻というのは語弊があるかもしれません。詳細には、昔の彼の方に一度走り寄ってキスをし、そのあとジャックの方に戻ってきて濃厚なキスをし、その後また昔の彼の方に普通に何事もなかったかのように走って行って一緒に歩いていくんですね。
ここらへんのシーンをもっと成熟された大人の方が見れば、私の解釈に対して「何をいってるんだ。ここの行き来に彼女の葛藤や躊躇があるんだ」とかおっしゃられるのかも、ですが、私には両者を行き来する振り子運動のようなマルタの足取りの軽快さが実に滑稽に見えました。
悲劇ってちょっと間違うと喜劇ですよね。(加賀谷)
http://www.youtube.com/watch?v=CzqPRrU5MVw →ロベールブレッソンの紹介
http://eiga.com/news/20121024/2/ →白夜