「ずっと行かなければ・・・・」と思っていた『ゴッホ展』。時間ができたので、昨日大学で試験監督をした後行ってまいりました。
ゴッホ展は7月15日までということで、「ヴェネチア展」にしろ「マチュピチュ展」にしろ昨年同様駆け込みで行く癖は相変わらずだと思いながら・・・。平日にも関わらず老若男女でごった返しておりました。
さてさて、会いたかったです。ゴッホさま。盛岡での大学院時代に見たゴッホの映画「炎の人ゴッホ」やアントナン・アルトー著「ヴァン・ゴッホー社会が自殺させし者」を回想しながら、ゴッホの<空白の時代>と言われる2年間の「パリ滞在時代」にスポットライトを充てた作品群を堪能してまいりました。なぜ空白だったかというと、ゴッホ研究は弟テオとの往復書簡が手ががりとなっていたのですが、パリ時代にはテオと同居していたので書簡があまり残されていないという事が理由のようです。
ゴッホといえば、20代イギリスの寄宿学校で無給で働いていた時代に聖職者になりたいと強く思い、ベルギーの炭鉱地帯に赴き下宿をしながら伝道活動を始め、神への情熱が行き過ぎ(笑)たために、伝道委員会に仮免許を打ち切られたり、経済的理由からオランダのエッテンに戻っていた時代、7歳年上の子持ちの未亡人(いとこ)ケイに求婚し、打ちのめされたり(笑)、ハーグでモーヴという従兄弟の画家に油絵と水彩画を習っていた時期に、スケッチのモデルの娼婦「シーン」にテオの送金で経済援助をしたり、南フランスでゴーギャンとの共同生活が才能同士の衝突によえい破たんにっなったりなど・・ととにかくその生き様は物事を相対化し折り合いをつけるという術を知らないかのように、悲しいくらい愚直なまでに熱く、苦しいくらい真剣でまっすぐで、その姿は可愛らしくそして滑稽にさえ思えるのです。事実彼は精神をとても深く病んでいました。娼婦に自分の耳たぶを渡した事件は有名ですし、サン=レミ精神病院での入院生活、度重なる発作、そして最後は一般には(銃創による)自殺と考えられています。
そんなゴッホの精神と身体と魂が遺したタブロー。
一番感動したのは、パリ時代以前はゴッホは印象派の手法が大嫌いで、絵に感情や愛といったものを付け加えるのはありのままの自然を損なうと考えており、暗い色彩ばかりで絵を描いていました。しかしパリに来て、ロートッレクなど様々な才能と触れ合う中で、彼の魂や身体は「もっと色を!!」と要求するようになります。あのゴッホが「花」をたくさん描きつづけた時代があったこと、その時代のゴッホを考えるととても微笑ましいし、「デルフィニウム」(というとても素敵な花があるのですが)を愛でながら色彩を奏でたゴッホを想像できることは救いでした。
色と差異を求めた時代、形式や普遍を求めた時代、、薄塗を求めた時代、技術を求めた時代、さまざまなゴッホの航路を追体験することができました。
ゴッホの絵はやはり点描タッチで描かれたものが、ゴッホのその瞬間の息遣いが保存されている気がして個人的にはとても好きです。点に宿る力といいますか、まとまったイメージで知的に理解される以前のレベルに遡行させるエネルギーがあると思います。現象を理解する通常の情報処理の習慣を攪乱させる、まさに触覚レベルで訴えてくるのです。全身が目や耳になるといった非日常的な感性を拓く力があり、3Dのようなテクノロジーでは代替不可能なものだと私は思いました。それぞれの個でありかつ全体と関係する色たちが音と時間を持ちはじめ、それぞれ他の色たちと律動し始め無限に広がっていくとき、これを「観音楽」とさえいっていいようなそういうリッチな気分にさせる企画展でした。
美術に興味がある皆様、宮城県立美術館のゴッホ展は7月15日までです!この機会をお見逃しなく・・
と、その後前から行きたいと思っていたカフェに「星港夜」行ってまいりました。ゴッホ展など美術館巡りの後立ち寄って、ゴッホ作品の余韻にひたれるような喫茶店です。店内にはクラッシックが流れていて、大きな蓄音機、昔の西洋式の電話、タイプライター、オルガン、スコットランドの燭台、本やレコードなどがあります。「星港夜」と書いて「シンガポールナイト」と読ませる純喫茶です。
マスターが素敵な方(全身黒ずくめの長髪)でオーダーを取るときなんと「立て膝」をつきます!!「ノクターン」「カノン」「運命」「無伴奏」といった名前のコーヒーがあり、純喫茶なのに23時までやっていて年中無休です。仙台にいらしたときはぜひ行かれることをお薦めいたします。
また、7月10日に岩手県(沿岸)出身で盛岡在住のミュージシャン&アーティスト「佐々木龍太」http://boc8.weblogs.jp/ryutablog/という方のライヴ(19:00~)があるようですよ。 (加賀谷昭子)
純喫茶「星港夜」
住所:仙台市青葉区上杉1-12-1
0222222926
http://cafe-sendai.jp/smartphone/singapole.html