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「ロシアに勝つ」とはどう言うことか 【連載】アンディ・チャンのAC通信

2022-04-24 09:47:13 | アンディ・チャンのAC通信
【連載】アンディ・チャンのAC通信

「ロシアに勝つ」とはどう言うことか

No.891 (2022/4/23)
 

 

 アメリカ国内では未だに反ロシア派が根強く戦争の継続を主張している。ロシアはアメリカにこれ以上武器を提供するなと警告したが、バイデンは新たにウクライナに武器を提供すると発表している。
 ゼレンスキーはもっと武器を送れとアメリカやEUに呼びかけた。アメリカの反ロシア派はゼレンスキーと同じようにロシアに勝つことばかり主張している。ロシアに勝つとはどう言うことか。

 ロシアの侵攻が膠着状態になってから世界各国でこの戦争の本質に触れる言論や、和平交渉と休戦を呼びかける声が出てきた。シカゴ大学のジョン・ミアシャイマーやエマヌエル・トッドなどはこの戦争の責任は米国とNATOにあると主張した。最近では英国のジョンソン首相とインドのモディ首相がロシアに即時停戦を呼びかけた。

 すでにウクライナ国民の4割が難民となっている。戦争を続ければウクライナは廃墟になってしまう。それでも勝てば良いのか。ゼレンスキーもバイデンも国民の苦難に関心がない。米国内でも戦争の休戦と和平交渉を呼び掛ける声が高まっている。

 戦争を始めた方が一方的に悪いと言われる。一部の人は「プーチンが悪い、しかし…」と言う人に批判的で、彼らは戦争を始めた側が悪いという。

 先に攻撃した方が悪い、真珠湾攻撃をした日本が悪い、終戦から80年経った今でも日本が悪いと言う。ゼレンスキーも真珠湾攻撃が悪いと言った。殆どの日本人は「しかし…」真珠湾攻撃は「止むに止まれぬ」理由があったと知っている。ルーズベルトが経済封鎖と言う手段で日本に戦争を仕掛けた。アメリカが戦争を仕掛け、日本は戦闘を始めたのだ。戦争に勝ったアメリカは戦争を仕掛け、原爆を落としたにもかかわらず戦争犯罪の裁きを受けていない。

 ロシアがウクライナを攻撃したのは米国がNATO東進を推進したからである。ウクライナがNATOに参加してロシア向けにミサイル基地を設置すればロシアは「背中にナイフを突きつけられた」状態となる。この状態はキューバ危機の時にアメリカとソ連が戦争状態になったのと同じである。

 ロシアの生死にかかわることだからウクライナのNATO加盟は絶対に許すことができないのだ。つまり、「戦闘」を始めたのはプーチンだが、「戦争」を仕掛けたのはNATO東進を強引に進めた米国である。プーチンがウクライナに侵攻したのは悪い、「しかし」ロシアに戦争を仕掛けた米国の方が悪い。

 戦争は先に手出しをした方が悪いとされる。だが米国は戦闘が始まる前から米国は経済封鎖と言う手段で戦争を仕掛けている。これが米国の常套手段、宣戦布告をしない戦争の開始である。NATOとは参加国の共同防衛が目的であるというが、NATOの仮想敵はソ連だった。ソ連が崩壊したあとロシアは敵で無くなった。NATOとは欧州諸国が一致してロシアを敵視する同盟である。

 米国はいつもサンクション(法的制裁)という手段を使って戦争を始め、同盟国の参加を強要する。米国が勝手に制裁(Sanction)と呼ぶ手段である。敵を封じ込めるには同盟国の参加が必要だ。敵とみなした国の経済、生活活動を世界からシャットアウトする。このために同盟国が必要だが国連でサンクションを提議しても賛成しない国がたくさんある。つまりサンクションは道理に適っていないのだ。

 経済制裁は武力を伴わない戦争の手段だが戦争に違いはない。経済制裁には三つの困難がある上に期待するほど効果がない。第一に経済活動を封鎖には効果が不定であること。例えば米国が経済封鎖したイラン、北朝鮮などが困っているように見えない。第二に経済封鎖を行えば米国や諸国も大きな損害を被ることである。第三に経済制裁を解除するための交渉が困難であることだ。

 米国は世界唯一の覇権国だが一極集中だから勝手に制裁を加える法的、道義的根拠はない。これは人類の民主、自由、平等の原理に反く行為、つまり戦争行為である。もちろん米国が相手の金融活動とか、物資の交流をストップするのは自由だが、同盟国にも同じ行為を強要するのはかなり困難である。例えばロシアの石油が必要なドイツにロシアの石油輸入をストップさせるのは無理な要求だ。ドイツはロシアの石油輸入禁止に反対だった、アメリカが経済制裁でロシアに戦争を仕掛けた証拠である。

 誰も疑問を提起していないが、一極独裁の米国がロシアの何を制裁するかの限度に大きな疑問がある。ロシア政府と国民全体の生活に困難をもたらすのが目的としても、ロシアから逃げ出したオリガルヒの財産や経済活動を拘束する権利、道理はどこにあるのか。
 オリガルヒの所有するヨットを拘束するのは戦争と何の関係もない違法行為ではないか。
 ロシアの運動選手が競技に参加するのを拒否する権利はどこにあるのか。
 米国がプーチンの娘の財産を拘束する権利はない。東條英機が戦争犯罪人でも東條夫人の財産を拘束することができないのと同じ道理である。

 ゼレンスキーはアメリカのために戦っている。アメリカのもっと武器を送れと要求し、アメリカの鷹派は盛んにゼレンスキーに勝つまで戦えとけしかけ(嗾け)る。武器は無償で提供したのではないし、戦場はウクライナに限られている。ウクライナは廃墟になる上に武器の借款を返済しなくてはならない。

 ゼレンスキーはウクライナ国民のために戦っているのでなく米国のNATO東進のために戦っているのだ。国が廃墟となり国民の大半が難民となった。ロシアも戦争で大きな損害を受けた。「ロシアに勝った」戦利品はそれだけしかない。ウクライナがNATOに加盟することはないし、EU加盟にも問題がある。

 ロシアも戦争で大きな損害を受けた。多くの武器を失い、経済は疲弊し、弱小国に転落した。しかしアメリカもEU諸国も経済活動に大きな損害を受けた。これが戦争の結果である。アメリカの一極集中、覇権拡張が齎した結果である。

「ロシアに勝つ」とはどう言うことか。オーストリアの司会者(Skynews.com.AU)がアメリカのJack Keane大将(元陸軍総司令。星4つ)との対談でウクライナ戦争の結果で何を得たのかと尋ねたら、Keane大将は以下のように答えた。
「この戦争でロシアは多大の損害を受けた。軍隊の装備の多くを失い、戦力が疲弊し、回復するまでに何年もかかる。お陰でロシアが近隣のNATO諸国に戦争を仕掛けることはほぼ無くなった。これがロシアと戦って勝った戦果である。」

 つまり、ウクライナ戦争とはロシアを衰微させるためにアメリカが仕掛けた戦争である。QED

 

 
 
【アンディ・チャン(Andy Chang、台湾名=張継昭)さんのプロフィール】 1934年生まれ。第2次大戦後に台湾からアメリカに留学し帰化した。現在、カリフォルニア在住。アメリカと台湾の時事ニュース中心に独自の視点で分析してネット配信している。AC通信は週刊のメルマガで、使用言語は日本語だが、本ブログでは日本のメディアでよく使われている用語に統一することにした

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