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続・シングリッシュは素晴らしい 【連載】藤原雄介のちょっと寄り道㊿

2024-04-20 05:31:08 | 【連載】藤原雄介のちょっと寄り道

【連載】藤原雄介のちょっと寄り道㊿

続・シングリッシュは素晴らしい

クアラルンプール(マレーシア)

 

 

 シングリッシュについて書いた前回の記事に思いがけず複数の方々から「面白い!」という反響があった。シンガポールやマレーシアに出張経験のある人たちにとっては、取り立てて珍しい内容でもなかったであろうが、それでも、何となく頭の中に眠っていた記憶や印象が文章化される事によって一気に懐かしさが蘇ってきたというコメントをいただい
た。

 クアラルンプール(KL)事務所にラジブという名のマレー人オフィスボーイがいた。インドには、ティーボーイがいるが、ティーボーイの仕事は正にお茶を淹れるだけ。マレーシアのオフィスボーイは、コピー、お茶くみ、お使いなど事務所のあらゆる雑用をやってくれる存在だ。
 彼は、どの出張者ともごく短時間のウチに自然に打ち解けることができた。明るい性格に加え、その見事なシングリッシュによるコミュニケーション能力の高さによるものだったに違いない。

▲ラジブとふざける筆者

 

 ビジネスにおける英語は、ただ通じれば良いという物ではない。質の高い交渉をするには、自ずと格調高い英語の方が、間違いなく有利だ。であるから、ビジネスマンは真面目に英語と向き合うべきである。
 が、しかし、英語を単に支障なく日常生活をこなしていくための道具だと割り切るなら、シングリッシュは最も早く手に入れることのできる最強の武器だと言って良い。

 ラジブと海外経験のないシングリッシュ初心者の日本人スーパーバイザー(現場監督)のSさんの会話を例にとり、文法無視、時制無視、単複同形、強度の省略を旨とするシングリッシュの会話を再現してみよう。

ラジブ: Next time you come KL, bring me Matcha KitKat, can kah?=Could you bring me some Matcha KitKats when you come to KL next time?(今度クアラルンプールに来るとき抹茶味のキットカットを持ってきてくれますか?)
注:語順は適当。to不定詞、定冠詞、主語はばっさりと省略する。名詞は単数形でOK。例えば、I have two cars. ではなく、I have two car. 
Sさん: Can, can. You want how many?=Of course, I can. How many packs do you want?(いいよ、いくつ欲しいの?) 
注:シングリッシュでは、英語ではwhat, when, where等の 疑問詞は文頭に来るが、シングリッシュでは文の最後にくっつくのが一般的だ。例えば、You go where(tomorrow)? You eat what (yesterday)? のように。日本人にとっては、この方がはるかに言いやすいのでは?

ラジブ: I want three, lah. Pay later.=I want three packs and I'll pay you later.(3つ欲しい、後でお金は払います。)
注:lahで強調。動詞は原型が基本。主語は省略。時制や人称による動詞活用は無視し、文脈で判断する。to不定詞も省略。例えば、
He go office tomorrow.= He will go to the office tomorrow.
She come my house yesterday.= She came to my house yesterday.

Sさん: No need, no need. On me, no problem lah!=No, you don’t need to pay. No problem, it’s on me.(要らない、要らない。問題ない、私のおごり。)
注: 主語も指示代名詞も省略。

ラジブ:Terima kasih. Thank you, thank you.
注: Terima kasih.(マレー語で「ありがとう」。ごく自然に英語の中にちりばめられる)
 
 普段英語を話す機会がない普通の日本人なら、「あなたが今度KLに来るときに、抹茶味のKITKAT(キットカット)を持って来てくれますか?」を英訳するとき、頭の中では、次のような思考プロセスが展開するだろう。

(エーッと、「持って来てくれる」ってどう言うんだろう。「来る」は comeだけど、持って来てくれるは can bringでいいのかな。イヤイヤ、丁寧に言うには、やはり could かな。今度KLに来るだと、when you come to KLで…、「次に」は next timeで、KLの後にくっつければいいのかな? ああ、面倒くさい!) 

 そう悪戦苦闘して、Could you bring me some matcha KitKats when you come to KL next time,という文章にたどり着く。恐らく数秒を要するこのような思考プロセスをたどっていては、反射的に受け答えすることはできないだろう。
 文法、時制、動詞の活用、単数/複数、語順など余計なことを考えず、ただ単に思いつくままに知っている単語を繋げるシングリッシュ方式だと信じられないほどスイスイ会話ができる。
 しかし、あくまでどうしても英語で意思疎通することが必要な場合の緊急避難的な手段と心得るべきだ。地道にまともな英語を学習することをおろそかにしてはいけない。私の友人には、緊急避難先の居心地があまりに良すぎて、抜け出せない輩が沢山いるからである。
 
 シングリッシュは極度に簡略化されてはいるが、幾つか押さえて置くべきポイントがある。まず、単語の語尾の子音は原則発音されない。Shop(ショップではなくショッ)、Cup(カップではなくカッ)、Wake(ウエイクではなくウエイッ)という具合に長音は省略されるのだ。
 また、th の発音は t か d に置き換わる。例えば、think はティンクに、 they はディになる。とは言え、この法則に当てはまらない場合もある。
 ある中国系プロマネ(プロジェクトマネージャー)は、いつも  「I think(私は思う)を 「I sink(私は沈みます)」と言っていた。が、そんな小さなことは気にしないのが、東南アジアビジネスのおおらかなところだ。

 もう少し、シングリッシュでよく使われる単語を紹介しよう。
 You need this meh?=Do you need this? (あなた、これ要りますか?)と語尾に 'meh’ を付けると疑問文になる。'meh’ は中国で疑問文を作る時、語尾に付ける「嗎=マ」が転じたものだ。mehは、kahと同じように使われる。
 マレー人同士の挨拶で朝昼晩の総てに適用できるのが、‘Suda makan ka? '(スダ マカンカ?)だ。スダは「済んだ」、マカンは「食事」。要は「ご飯食べた?」と言う意味である。

 ちょっと脱線するが、「ご飯食べた?」は、現代の台湾語、広東語、タイ語、北京語、韓国語、ベトナム語などでも共通して使われる軽い挨拶の言葉だ。昔、食料が十分でなかった時代に、相手の健康状態を気遣い合っていたことが、この挨拶の由縁だと言われている。

 日本だって、貧しく、人々が食べ物に不自由した時代はあったのだが、「ご飯食べた?」が日常の挨拶として定着することはなかったようだ。いつか、その理由を調べてみよう。

 

▲ペナンの路上市場

▲マレー料理の屋台 好きな料理を指さして大きなステンレスの器に盛ってもらう

▲ペナンのカンポン(田舎)の典型的な家屋

 

 ところで、前回のブログは次のような文章で締めくくった。
「…日本語でも名詞を2つ並べると複数形になるのだが、その適用範囲が昔から分からず、気になって仕方がない。
 例えば、人々とは言うが、猿々、犬々、猫々とは言わない。木々とは言うが、岩々、石々とは言わない。山々とは言うが、川々とは言わないし、池々とも言わない。
 これらの文法的規則性は、知らないが、何となく身に染みこんでいる日本語のリズム感によって重ねて良い名詞とダメな名詞を何となく判別している。
 どなたか、ご存じの方がいらっしゃれば是非ご教示願いたい」
 見識の高さで知られるダーツの会の友人K氏から、「山山」など単語を2つ並べて複数形となすことを「畳語複数形」というのだと教えていただいた。
 そこで「畳語」の定義を調べていくと、なんとも奥深い学術論文ばかりで、たじろいでしまった。検索の果てにたどり着いた最も分かりやすい「畳語」の説明は、「日本大百科全書(ニッポニカ)」によるもの
だった。以下に紹介したい。。
 
日本大百科全書(ニッポニカ) 「畳語」の意味・わかりやすい解説
畳語(じょうご)
同一の形態素を重ねて用いた形式の複合語。「さらさら」のように全体がそうであるものと、「軽軽(かるがる)しい」のように一部が重ねられているもの(重綴(じゅうてつ))とがある。意味は場合によりさまざまであるが、いくつかの類型に分けられる。
(1)複数 人人、木木、山山
(2)反復 重ね重ね、次次、飛び飛び
(3)強調 まるまる、津津浦浦、見る見る
(4)不定 だれだれ、何何
(5)擬音・擬態語 きらきら、しずしず、ごろごろ、やれやれ
 このうち(1)から(4)は、基本的には複数を示すものと解される。(5)は、幼児語にも共通する、一種の強調と考えられるものである。
[近藤泰弘]
『阪倉篤義著『語構成の研究』(1966・角川書店)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

 そもそも、日本語の単語には、複数形がない。数え切れないほどの数詞はあるのに、複数形がないのは奇妙に思える。名詞に数と単位がついているかどうか、文脈から判断するしかないのである。
 一部の名詞には、「たち」や「ら」などの接尾辞を付けて複数とすることがあるが、この手法は、「宝石たち」「雑貨たち」「星たち」「歌たち」など主に女性「たち」に好まれているようだが、私の好みではない。
 畳語についてはよく分かった。しかし、畳語複数形を形成できる名詞とそうでない名詞を判別するための文法的規則性については、依然手がかりを見つけることができない。うーん、これでは、眠れない…。

                  

 

  

【藤原雄介(ふじわら ゆうすけ)さんのプロフィール】
 昭和27(1952)年、大阪生まれ。大阪府立春日丘高校から京都外国語大学外国語学部イスパニア語学科に入学する。大学時代は探検部に所属するが、1年間休学してシベリア鉄道で渡欧。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学で学びながら、休み中にバックパッカーとして欧州各国やモロッコ等をヒッチハイクする。大学卒業後の昭和51(1976)年、石川島播磨重工業株式会社(現IHI)に入社、一貫して海外営業・戦略畑を歩む。入社3年目に日墨政府交換留学制度でメキシコのプエブラ州立大学に1年間留学。その後、オランダ・アムステルダム、台北に駐在し、中国室長、IHI (HK) LTD.社長、海外営業戦略部長などを経て、IHIヨーロッパ(IHI Europe Ltd.) 社長としてロンドンに4年間駐在した。定年退職後、IHI環境エンジニアリング株式会社社長補佐としてバイオリアクターなどの東南アジア事業展開に従事。その後、新潟トランシス株式会社で香港国際空港の無人旅客搬送システム拡張工事のプロジェクトコーディネーターを務め、令和元(2019)年9月に同社を退職した。その間、公私合わせて58カ国を訪問。現在、白井市南山に在住し、環境保全団体グリーンレンジャー会長として活動する傍ら英語翻訳業を営む。


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