Garbanzo blog

政治経済と音楽のブログ。
Garbanzoってのはひよこ豆のことです。

望郷が幻を見せている

2010-07-22 16:25:03 | 音楽

シンガーソングライター(アレンジが出来ない人を僕は作曲家とは呼びたくはないが)の
安藤裕子氏が自身のblog内にある
my bedroom音楽業界の危機を赤裸々に語っているらしい。
一部を抜粋させて頂こう。

--------------------------------------------------------------------------------------------

今世紀の音楽家達はパトロンなんかにゃ雇われてなくて、
レコードやCDというフォーマットの商品を心の通じる相手に売り渡して生きてきたんだ。

この業界に携わる人間も、その音楽という畑を耕し、
出荷、販売を手伝うことを生業に生きてきたんだ。
今は私たちが野菜を販売する店先で、野菜を配ってる奴がいる。

-----中略-----

ただ問題なのは、今、道で配られてる野菜が我々の畑から搾取され、
しかも培養されて増えたものに過ぎないと言うことだ。
大本の音楽が消えれば世界から音楽は消える。

そりゃ音楽だもの、ミュージシャンが消えたって、業界が消えたって、
草木が芽生えるみたいに暮らしの中に再び誕生するだろう。

音楽は人間の生活の営みだ。文化だ。でも今世紀の音楽は瀕死だ。そこにはあるんだよ。
死ぬほど生まれてるんだ。美しいものは沢山あるんだ。

でも金の匂いに、一部の人間が我々の村に押し入って「我々が新しい流通制度をご紹介しましょう。」
なんてうまいこと言って収入の全てを奪っていった。

今変えなきゃいけないのは法整備だろう。CDというフォーマットがユーザーに
必要とされなくなったという事はもはや仕方の無いことだ。

電気メーカーのハード作りの歴史の中で、徐々に音楽制作者への著作権を軽視する動きが
あった事が全ての悪なのかい?いや、もっと根本的な要因が沢山あったかもしれないよ。

ねえ、誰かが村人の仮面を被ってこの世界から搾取を始めたんだ。
もうすぐ私たちの畑は与える水もなくなって死に途絶えるだろう。
------------------------------------------------------------------------------------------

率直に言って何を言っているのか良く解らないし、現状認識に至っては壊滅的だ。
以前
CDなんて買わなくていいという記事でも書いたように
CDの中にあるデータは改変と複製が無制限なデジタルであり、
それはwebのようなP2Pによってネットワークが作られ相互のやりとりが出来るようになると、
データ量は飽和してそこに金銭的価値はほとんどつかなくなる。
経済の理屈で言うなら音楽のような競争的産業に於いて流通という障壁が取り払われると、
主となるコストが人件費のみになってしまうので、0円という限界費用に
どんどん近づくよう圧力がかかり続けるのは重力のように避けがたい「摂理」である。

彼女は音楽の供給を野菜に例えているが、野菜は複製にも配給にも
コストがかかる「実物」であり、データではない。
彼女が大事にしている「今世紀の音楽」は、ビートルズを売り上げで越えるロックは存在せず、
作編曲の技術はパトロンに雇われて音楽を作っていたバッハなどを始めとする
クラシックの足元にも及ばず、またその範疇から出てもいない。
最後の方に出てくる苦し紛れの法改正の必要性は個人的には重要だとは思うが、
それは彼女が妄想している保護的な方向性とは180度違うものだ。
いずれもっともっと世界は解放されるだろう。

彼女の文章はまったく技術や未来に対しての展望が無いものだったので
相当年の行っている人が書いたのかと思いきやwikipediaを見るとまだ33歳だという。
自分とさして違わない年齢だというのは驚いた。

彼女の文章の端々から感じられる被害妄想は、マス・メディアが
CDの売り上げをコントロール可能だった1960~90年代への羨望であり、
かつては売れていた自分の音楽が、世界中の誰もが参加するwebという広大な市場によって
「適正な価値」に貶められた事への強い怨嗟であり、
だから自分を保護してくれない法律と自分の音楽を解さないユーザーには
「牙をむく」のだという。bed roomでつぶやく寝言にしては性質の悪いジョークだ。

33歳の若さでありながら望郷の念が見せている幻にすがりついてる人間には、
多分どんな言葉も届かないだろう。だがもはや時代は変わり、
パラダイムは次のフェーズにシフトしようとしている。
それは避ける事も逃げる事もできない確固たる現実だ。

聞く耳があるなら言っておきたい。
死ぬのはあなたと音楽業界だ。音楽ではない。

繰り返そう。

死んだのはあなたと音楽業界だ。
断じて音楽ではない。



最新の画像もっと見る