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アメリカ人コレクターの偉業が日本で観れる ~神戸市立博物館 ボストン美術館の至宝展

2017年10月31日 | 美術館・展覧会

神戸市立博物館名物、広いホールの記念撮影コーナー

 

 

神戸市立博物館で「ボストン美術館の至宝展 東西の名品、珠玉のコレクション」が始まった。東京都美術館から巡回してきたもので、神戸展終了後は名古屋ボストン美術館に会場を移す。

 

ボストン美術館所蔵品の展覧会は日本でもよく開催されているが、日本美術や印象派などジャンルを限定したものがほとんどだ。しかしこの展覧会は古今東西の幅広いジャンルの作品で構成されていることが大きな特徴で、古代エジプトから村上隆までというものすごいラインナップである。

 

ボストン美術館は、ニューヨークのメトロポリタン美術館と並んで国や自治体の援助を受けず、市民からの幅広い寄付でコレクションを積み重ねてきたことで知られる。1860年代に南北戦争を終えた後の新興国アメリカの経済成長は目覚ましく、アメリカン・ドリームを実現させた実業家たちは古今東西の美術品を買い集めた。そんな実業家たちが購入した美術品の寄贈を続けたことで、ボストン美術館は少しずつ大きくなっていったのである。

 

今回の展覧会はそうしたアメリカのコレクターが果たした役割を伝えることも主眼に置いている。ウェルドは、日本では知られていないがフェノロサとともに日本で収集旅行をしており、ボストン美術館では「フェノロサ=ウェルド・コレクション」と連名で呼んでいる。釈迦の周りで嘆く仙人たちの表情に実にユーモアがある英一蝶の「涅槃図」、喜多川歌麿の艶めかしい肉筆画「三味線を弾く美人図」が見応えがある。

 

英一蝶「涅槃図」、喜多川歌麿「三味線を弾く美人図」

 

 

 

スポルディング兄弟による浮世絵コレクションの質は世界最高峰と言われるが、ボストン美術館への寄贈の際に公開展示禁止を条件にしたため、展覧会では見ることができない。一方兄弟はフランス絵画の収集でも知られる。この展覧会の目玉作品の一つ、黄色と緑の色使いがとてもゴッホらしい秀作「ルーラン夫人」も兄弟の収集作だ。

 

ゴッホ「子守唄、ゆりかごを揺らす オーギュスティーヌ・ルーラン夫人」

 

 

 

他にも逸品は目白押しだ。古代エジプトの「ツタンカーメン王の頭部」は、確かにかの有名な黄金のマスクに似ている。酒井抱一の若い頃の肉筆浮世絵「花魁図」は着物の柄の描写がとても繊細で抱一らしい。展覧会の順路の最後は村上隆の「If the Double Helix Wakes Up…」が締める。ボストン美術館のコレクションが、日本美術や印象派以外にもいかに幅広く素晴らしいかが本当によくわかる。

 

神戸市立博物館は、この展覧会終了後に2年近くのリニューアル工事休館に入る。この館の目玉所蔵品であるザビエル像を中心とする常設展示が全面刷新される計画で、非常に楽しみだ。次の巡回先の名古屋ボストン美術館は、大変残念だが運営資金の目処が立たず来年2018年10月で閉館となる。フィナーレ展覧会第一弾がこの「ボストン美術館の至宝展」で、フィナーレ第二弾・最終の展覧会が、ボストン美術館所蔵作品の中から幸せをテーマに選りすぐった「ハピネス」となる。

 

偶然だろうが、両館の休館/閉館のフィナーレをこの展覧会が担うことになる。フィナーレにふさわしい質の高い作品を、本家ボストンでもまず実現しないだろう展示構成で鑑賞できる素晴らしい展覧会だ。

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 

4年前に一世風靡したボストン美術館の日本美術展の図録、日本にあれば国宝が目白押し。

 

 

神戸市立博物館 ボストン美術館の至宝展

http://boston2017-18.jp/

会期:2017年10月28日(土)~2018年2月4日(日)

原則休館日:月曜

 

 


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