美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

池袋に古代オリエント美術の殿堂 ~展示は素晴らしい

2018年11月28日 | 美術館・展覧会

熊谷守一美術館の帰りに池袋サンシャインシティにある古代オリエント博物館に行ってきました。国内では数少ない古代オリエント美術を専門とする博物館で、エジプトからメソポタミア、ペルシャ、中央アジアと世界と日本の文化の原点となった地域の文化と美術を幅広く体験することができます。

子連れファミリーでも、大人だけでも楽しめます。東洋でも西洋でもない中間地帯の神秘的な美術品の輝きは、まさにエキゾチックという言葉が似合います。



古代オリエント博物館は1978(昭和53)年、サンシャインシティのオープン時に開館しました。オイルショック時の中東油田の買収や電電公社民営化で辣腕を振るい、財界官房長官と呼ばれた今里広記(いまざとひろき)が音頭を取って設立した財団によって、現在も運営されています。

博物館は、サンシャインシティでは池袋駅から最も遠い一番奥の文化会館ビルの7Fにあります。池袋駅からは遠いですが、メトロ有楽町線の東池袋駅からは逆に最も近くなります。

コレクション展に加え、小さい「クロースアップ展示室」を使ってテーマに応じた展示が行われています。夏と秋には特別展が行われており、その際は展示スペース確保のためにコレクション展が行われない場合もあるようです。

私が訪れた時には「開館40周年記念特別展 シルクロード新世紀」が行われていました。特別展のテーマがコレクション展と大きな差異がないこともあり、コレクション展の展示の有無がよくわかりませんでした。コレクション展と特別展は入館料金が異なることもあり、明確な説明をされた方が良いと感じました。

展示品は、国内の古代オリエント美術のもう一つの拠点・岡山市立オリエント美術館を中心に、全国の美術館・博物館から集められており、とても見応えのあるものが揃っていました。日本にこれほどの古代オリエント美術があるとは驚きました、長年にわたっての努力の成果ですが、こうして一堂に集まることで花が開きます。バラバラに本拠地で展示されているだけでは目立ちません。

【平山郁夫シルクロード美術館公式サイトの画像】 菩薩像頭部

展覧会チラシの表紙にも採用されている平山郁夫シルクロード美術館蔵「菩薩像頭部」は、中国の西端にあったオアシス国家・亀茲(きじ)がのこした仏教遺跡・クムトラ千仏洞からの出土品です。赤い唇が怪しいまでの美しさを醸し出しています。西域の民族と明らかにわかる顔立ちは、仏教を西から東へ伝えた伝道師の役割を果たしたことでしょう。ちょうど玄奘がインドへ行った7cの作品と考えられています。

MIHO MUSEUM所蔵の「二頭の馬浮彫」は紀元前4-6世紀、アレクサンダー大王に滅ぼされる以前のアケメネス朝ペルシャでの制作と考えられています。馬の上部が欠けていますが、騎馬や戦車である可能性が高いと思われます。馬の頭部が太く力強く造形されています。中国や日本のように細身ではなく、より西の作品であることが分かります。馬の目の造形も丸くパッチリしていているところが、どこかペルシャ的です。

クロースアップ展示室では、現代の日本の大学を中心とした探検・発掘隊の活動がパネル展示されています。中でもイスラム武装組織タリバンによって2001年に爆破されたアフガニスタンのバーミヤン遺跡の大仏を、バラバラになった石から可能な限り復元しようとする取り組みには心を打たれました。東京芸大によってクローン再生されたバーミヤンの天井壁画の展示もとても美しいものでした。

【古代オリエント博物館公式サイト】 音声ガイドアプリ

展覧会ではもはや常識となっている音声ガイドを、スマホの有料アプリで提供している取り組みが目を引きました。場所を選ばず鑑賞前・中・後、いつでも聞くことができます。

しかしアプリ解説ページには、コレクション展と特別展のどれを対象にしているのか、作品の展示替えにはどう対応するのかといった説明がありません。展覧会場で借りる音声ガイドとは異なり、こうした疑問にはあらかじめ答える必要があるでしょう。

取り組みとしては面白いだけに、スムースな情報提供を期待したいものです。コンテンツが素晴らしいだけに、情報提供のわかりにくさは惜しい限りです。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



西欧文明にオリエントはどのような影響を与えたか?

________________________________

古代オリエント博物館
開館40周年記念特別展
シルクロード新世紀 ―ヒトが動き、モノが動く―
【博物館による展覧会公式サイト】

主催:古代オリエント博物館
会期:   2018年9月29日(土)〜12月2日(日)
原則休館日:会期中は無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※会期中、11月上旬に展示替えがあります。



◆おすすめ交通機関◆

JR・東京メトロ・西武池袋線・東武東上線「池袋」駅下車、東口から徒歩20分
東京メトロ・有楽町線「東池袋」駅下車、7出口から徒歩8分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
東京駅→東京メトロ丸の内線→池袋駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


________________________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« モリとの思い出、熊谷守一美術... | トップ | 絹谷幸二の元気な絵を梅田で... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

美術館・展覧会」カテゴリの最新記事