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春と新元号にふさわしい「花」の展覧会_東京 山種美術館 6/2まで

2019年04月24日 | 美術館・展覧会

山種美術館で、春の訪れを告げるにふさわしい”花”をテーマにした展覧会「花*Flower*華 ―四季を彩る―」が行われています。今年2019年は山種が広尾に移転して10周年、ずらりと続く”気合の入った”展覧会の第二弾です。

  • 花は日本画のモチーフとしてやはり風流と華やかさを感じさせる、展示会場はまさに”満開”
  • ほとんどが山種の所蔵品で構成、山種コレクションの層の厚さはいつ見ても素晴らしい
  • 伊東深水らの人物画にも注目、モデルを彩る花の描写はとても”粋”


2年前の2017年の春にも同じタイトルの展覧会「花*Flower*華 ―琳派から現代へ―」が行われていました。同じ”花”がテーマでも、山種らしい展示構成が今回もお見事です。


都内の桜吹雪

山種美術館は、春の展覧会として「花*Flower*華」をシリーズ化し、春の風物詩として育てていきたいのかもしれません。テーマが実に季節にあっており、山種が持つコレクションとも実に親和性が高いと思えるからです。今後どんな展覧会予定が発表されるか楽しみです。

今年はさらに新元号の効果もあるでしょう。出典が万葉集だったことから、花言葉など日本的な花の楽しみ方に注目が集まっています。この展覧会が企画された頃には想像すらしていなかったでしょうが、とても幸運なタイミングで開催されています。



展示会場では、春から順に四季それぞれの花の絵が展示されていますが、トップバッターからいきなり名品が登場します。

【展覧会公式サイトの画像】 酒井抱一「月梅図」

「月梅図」は酒井抱一らしい”粋”なタッチで、見事に月夜に咲く梅を表現しています。冬の終わりを告げる梅で展覧会を開幕させるのも、”粋”な計らいです。梅の絵は展覧会最後の冬にも展示されていますが、この抱一の梅の絵は格別です。

【展覧会公式サイトの画像】 渡辺省亭「牡丹に蝶図」

渡辺省亭(わたなべせいてい)は花鳥画で名を馳せた明治の画家です。小原古邨(おはらこそん)のように、西洋人にうけやすい明確なタッチと奥行きのある表現が特徴です。「牡丹に蝶図」は牡丹の瑞々しさが伝わってくるようなリアルな表現が目を引きます。白い牡丹の花びらに黒い蝶をとまらせた構図もどこか日本離れしていて魅力的です。

渡辺省亭では「桜に雀」にも注目です。日本人が抱くのとは異なるイメージで桜を描いているように見えます。雀を絵の中心に配した構図のバランスが抜群です。


唯一の撮影OK作品、菱田春草「白牡丹」

今回の展覧会のモチーフでは、牡丹が印象に残りました。菱田春草「白牡丹」は、春草らしい淡いながらも洗練されたタッチが印象的です。安田靫彦「牡丹」は、白い花びらの背後の葉を黒に近い色で描いて花を目立たせています。安田靫彦らしい明るい雰囲気も絶妙に表現されています。

夏の花では、福田平八郎「花菖蒲」が目に留まりました。尾形光琳「燕子花図」のように、花も葉もしっかりと色付けされており、美しさがきちんと主張されています。夏の花はやはり、明るさを強調するためにしっかりとした色付けが合うのだ、と改めて感じた作品です。

秋の花では、一押しは山口蓬春「なでしこ」です。白地に赤の釉薬で派手に描かれた清時代の磁器を思わせる水差しに、なでしこが脇役のごとくに生けられています。なでしこの可憐さを強調しているように感じられます。実に不思議な絵です。

牧進「明り障子」は2004年の作品です。障子を開けて花を見せる構図に、落葉で埋め尽くされたような暗い地面に花と竹を力強く描いています。日本画の優れたコンテンポラリー作品と感じました。

【山種美術館 Google Arts & Cultureの画像】 荒木十畝「四季花鳥」

荒木十畝「四季花鳥」は展覧会チラシ表紙に採用された作品です。今回の出展作の中でも四季の華やかさが最も強調されていると言えるでしょう。琳派のような、しっかりした主張が伝わってくる作品です。いわゆるSNS映えしますが、この作品は撮影NGですのでお間違えなく。

【展覧会公式サイトの画像】 上村松園「桜可里」

ミュージアムショップの奥の小部屋は、展覧会に応じた個性的な作品が展示されています。今回は「人物画における花」にスポットをあてています。

上村松園「桜可里」は、前後に並んで描かれた二人の美人のうち、後方の付き人と思われる少女にだけ花を持たせています。前方の女性は頭巾をかぶって顔を見せないようにしています。お忍びでどこかへ出かけるのでしょう。秘密のデートに足早に向かう女性を、花がさらに妖艶に見せています。

菱田春草「桜下美人図」は、寛永美人を思わせるレトロな描写に、春草の遊び心を感じさせます。伊東深水「吉野太夫」は、花が天下一の名妓のバックダンサーのように見えます。太夫をさらに格調高く見せています。


春は花が青空に映える

山種美術館はどの展覧会を見ても、構成の上手さに感心します。春という明るい季節と令和の新時代の両方を迎えるのにふさわしい展示内容でした。「花*Flower*華」シリーズ、毎年でマンネリ化するとよろしくないので、今までの実績に従ってビエンナーレ(2年に1回)開催を期待したいものです。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



日本画の色はなぜ美しいか、山種が編集に全面協力

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<東京都渋谷区>
山種美術館
広尾開館10周年記念特別展
花・Flower・華 ―四季を彩る―
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:山種美術館、朝日新聞社
会期:2019年4月6日(土)~6月2日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※5/8以降の展示で一部展示場面が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※出展作の中で一点のみ、私的使用に限って、写真撮影とWeb上への公開が可能な作品があります。
 フラッシュ/三脚/自撮り棒/シャッター音と動画撮影は禁止です。

※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。



◆おすすめ交通機関◆

JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン「恵比寿」駅下車、西口から徒歩12分
東京メトロ日比谷線「恵比寿」駅下車、2番出口から徒歩12分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
東京駅→東京メトロ丸の内線→霞ヶ関駅→東京メトロ日比谷線→恵比寿駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。


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