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京都・樂美術館「光悦考」 ~光悦は茶碗にも美意識を凝縮した

2018年09月16日 | 美術館・展覧会

樂(らく)美術館は、千利休好みの焼物を作ることで始まった茶碗師・樂家の代々の作品と茶の湯に関する美術品を所蔵する美術館です。京都の三千家(さんせんけ)の近くにあります。江戸時代初期に樂家と密接な交流があった芸術プロデューサー・本阿弥光悦ゆかりの作品を集めた企画展「光悦考」が始まっています。

光悦は焼物・蒔絵・書跡の三分野で国宝2点・重文18点と庭の名勝1件が文化財指定されているマルチ・スーパースターです。寛永文化が花開いていた京都で、光悦と樂家は前衛的な茶碗の美をともに追及していました。そんな輝かしい時代にぜひ触れてみてください。


樂焼窯元に隣接する樂美術館

樂家は、様々な茶道具を供給して三千家に出入りした千家十職(せんけじっそく)の一つで、茶碗を代々造っていた家元です。樂家による茶碗が樂焼と呼ばれます。ろくろを使わず手ごねで成形するため、形状のゆがみと口や胴(器の淵)の厚さが特徴です。

唐物を中心とし、伝統的な評判に基づく”名物”茶道具を嫌った千利休は、禁欲的で極端に質素な美意識を好みました。その結果生まれたのが樂焼茶碗の風合いです。幾何学的で端正なデザインがよしとされる中国や高麗産の高級焼物とは正反対ですが、樂焼は近世初めの日本で定着するようになります。

長い戦国の世が終わり、より多くの人が茶の湯に目を向けていた時代でした。結果茶碗のニーズは高まり、過去の名物茶碗に代わる新造の名物茶碗としての前衛的なデザインが受容されやすい環境にあったと考えられます。

日本人は幾何学的で整ったデザインはやはり好まない、ということを樂焼は語っています。焼き物や庭園がそうですが、好みに合わせてきわめて繊細で微妙な成型をします。同じものはないということを好みます。ヨーロッパや中国大陸の価値観からすれば摩訶不思議の一言なのです。樂焼はそんな日本的な美意識を象徴する芸術だと思います。



光悦は、初代・長次郎を継ぎ樂家の礎を築いた二代・常慶(じょうけい)に樂焼を教わりました。光悦は常慶の長男の三代・道入(どうにゅう)とも親しかったことから、道入は光悦の美意識も取り入れ、樂家歴代随一の名工と呼ばれています。

【樂美術館 公式サイトの画像】 常慶 黒樂茶碗 黒木

二代・常慶の黒樂茶碗「黒木」は、口のゆがみが特徴的な「織部好み」を反映した作品です。背が低い上に、器下部の腰が狭く、上部の胴が広い二段階のデザインも印象的です。

三代・道入や光悦の作品はデザイン面でさらに洗練されていると感じます。道入の黒樂茶碗「青山」は漆黒の側面の胴の中央に、大胆にハトのようにも見える紋様が白抜きされています。この紋様が実にすわりがよく、落ち着いた印象と前衛的なデザインが両立した素晴らしい茶碗です。

光悦の白樂茶碗「冠雪」は、銘の印象とは逆に胴より下の大半が白く、口の付近だけが赤くなっています。わざと逆の印象を与える銘を付けたのでしょうか。白い胴の肌には細かな気泡が見えやすくなっており、見た目が単調にならないよう茶碗全体の印象を引き締めています。わずかな歪みをもたせた円筒形の茶碗の形状もとても上質です。


本阿弥光悦の屋敷跡の碑

樂美術館から真北へ10分ほど歩くと、本阿弥光悦の屋敷跡があります。付近は武者小路千家もあり、近世の京都で上流階級がこぞって居を構えたエリアでもあります。樂美術館の西には秀吉の聚楽第がありました。

樂家と光悦が活躍していた、まさにその地で開かれている展覧会です。深い味わいを感じることができます。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



樂家当主と各界著名人の対談はとてもエネルギッシュ


樂美術館
開館40周年 秋期特別展「光悦考」
【美術館による展覧会サイト】

会期:2018年9月2日(日)~12月9日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

※この美術館は、常時公開している常設展示はありません。企画展開催時のみ開館しています。

◆マナー教室◆

◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「今出川」駅下車、6番出口から徒歩15分
京都市バス「堀川中立売」もしくは「一条戻橋」バス停下車、徒歩3分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→地下鉄烏丸線→今出川駅

【公式サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄の方が、時間が早くて正確です。
※この施設には駐車場はありません。


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