今年2018年3月のオープン以来、村山コレクションをフルに紹介する5回シリーズの展覧会「珠玉の村山コレクション」が、早いもので最終回を迎えています。最終回のタイトルは「物語とうたにあそぶ」、絵巻・やまと絵や歌仙・かるたの逸品が展覧会のフィナーレを飾ります。
- 関心の低くなりがちな江戸時代の物語絵を丁寧に収集
- 江戸時代にも百人一首や源氏物語の人気はとても高かったことがわかる
- 写生画や風俗画といった周辺作品にも秀作が多い
朝日新聞創業者・村山龍平の蒐集の幅の広さがわかる5回シリーズでした。その最後を優雅なやまと絵でぜひお楽しみください。
展示は第1章「源氏物語」からスタートします。「源氏系図」は複雑で数の多い源氏物語の登場人物を系図形式で解説したガイドブックです。現代の歴史もののドラマや映画でも、人間模様を説明するためによく用いられる手法です。
ただし大きな紙に大きな系図を描いているわけではなく、冊子ですので系図はひたすら左に伸びていきます。現代人にとっては見やすいとは言えませんが、製作された室町時代には画期的だったのでしょう。表紙のやまと絵の描写は、金箔をふんだんに用いておりきらびやかです。かなりの高級品であることがうかがえます。
【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています
第2章は「絵になる物語」で、近世の絵巻や風俗画をまとめています。作者不詳「立美人図」は江戸時代初期によく見られる街中の女性の描写です。岩佐又兵衛の「堀江物語」にも、やまと絵の基本を外してはいませんが、描写には風俗画としてのリアルさが如実に表れています。後の浮世絵の原点と言われた江戸時代初期の風俗画の魅力がよくわかります。
第3章は「うたの景色」で、茶会や歌会で客人に披露するにふさわしい掛軸の名品が揃っています。江戸時代後期の京都画壇のリーダー・原在中の「秋草図」は、青と橙の色使いに京都らしい上品さが見られます。一方、原在中とほぼ同世代の江戸琳派のリーダー・酒井抱一の「十二カ月図景物図短冊」は、余白を活かした描写に江戸らしい洗練さが見られます。両者の対比は実に興味深いものでした。
エピローグは「伊勢物語図色紙」です。伝俵屋宗達の同作品が著名ですが、こちらはより古い室町時代の作品です。彩色がよく残っており、保存状態は良好です。平安・鎌倉期のやまと絵と比べ、描写が緻密になっていることが分かります。フィナーレにふさわしい重厚なやまと絵作品です。
「珠玉の村山コレクション」が終わってどうするのかと思っていましたが、次回は鳥獣戯画全4巻を展示するサプライズ企画を用意していました。2019年3月から始まる「明恵の夢と高山寺」展です。鳥獣戯画だけにとどまらず、高山寺所有の国宝で木に腰掛けた姿がほのぼのしい「明恵上人像」、愛くるしさで著名な重文彫刻「子犬」もやってきます。
鳥獣戯画は2014年秋に京博で公開された際は、2時間待ちの行列が当たり前でした。今回もすさまじい行列が予想されます。中之島香雪美術館は敷地が広くないだけに、入場時間指定チケットなどの混雑回避策を期待したいものです。
【中之島香雪美術館】 今後の開催予定「明恵の夢と高山寺」
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
師弟関係にある巨頭二人は日本美術をどう語るか?
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中之島香雪美術館
開館記念展「珠玉の村山コレクション ~愛し、守り、伝えた~」
V 物語とうたにあそぶ
【美術館による展覧会公式サイト】
主催:香雪美術館、朝日新聞社、朝日放送テレビ
会期:2018年12月15日(土)〜2019年2月11日(月)
原則休館日:月曜日、12/29-1/7
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30
※1/14までの前期展示、1/16以降の後期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。
◆おすすめ交通機関◆
大阪メトロ四つ橋線「肥後橋」駅下車、4番出口から徒歩3分
京阪中之島線「渡辺橋」駅下車、12番出口から徒歩3分
大阪メトロ御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」駅下車、7番出口から徒歩8分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
JR大阪駅(西梅田駅)→メトロ四つ橋線→肥後橋駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設が入居するビルに有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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