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「叫び」とムンク、上野でたっぷり ~東京都美術館 1/20まで

2018年11月05日 | 美術館・展覧会

現在世界で最も有名な絵画の一つであるムンクの「叫び」が、上野の東京都美術館にはるばる来日しています。ムンク作品コレクションでは世界一のオスロ市立ムンク美術館が一肌脱いだ大回顧展で、約100点の作品を通じてムンクの生涯を入念にたどることができます。

「叫び」に代表されるように、内面や感情を鮮やかな色彩で大胆に表現したムンクの作品からは、その当時の彼の境遇や心理がすごい迫力で伝わってきます。写実的に描かれた自画像や肖像画も多く、「叫び」のイメージとは異なるムンクの個性も味わうことができます。

フェルメール、ルーベンスマルセル・デュシャン、2018年秋の上野は大物の展覧会が目白押しです。



エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)は、1863年ノルウェーの医師の家庭に生まれました。幼いころに母と姉を亡くしたことが、恐怖や喪失感が色濃く表れる彼の絵画表現に大きな影響を与えました。

【公式サイトの画像】 1882年「自画像」

最初期の作品「自画像」は精悍な顔立ちに描いていますが、その瞳には内面に抱えた悲しみの感情が小さくないことを感じさせます。ムンクの内面表現の原点となるような傑作です。

1889年から3年間パリに留学し、印象派/ポスト印象派/ナビ派と言った当時最先端のフランス絵画表現を学びます。外面の美しさを追求した印象派とは真逆に「生き生きした人間の感情を描く」ことを志すようになります。「叫び」を含む「生命のフリーズ」と呼ばれる、感情のうねりをキャンバスにぶつけるような一連の作品を描き始めるのです。

【公式サイトの画像】 1894年「絶望」

「絶望」は「叫び」とともに「生命のフリーズ」を象徴する作品です。「叫び」と同じ構図で、オスロ市街から見えるフィヨルドを背景にしていることが目を引きます。「叫び」よりも感情表現は穏やかですが、逆に深い精神性を感じさせます。「叫び」と同じ部屋に展示されています。ぜひ見比べてみてください。

【公式サイトの画像】 1910年「叫び」テンペラ・油彩

今回来日している「叫び」は、世界に5点存在する中で最後に描かれた作品です。テンペラと油彩で描かれ、瞳がないのが特徴です。1893年に油彩で最初に描かれ、最も著名な作品{オスロ国立美術館蔵)と並んで彩色に鮮やかさがあり、暴風のように荒れ狂う感情表現が圧倒的なオーラを放っています。

1910年は彼がアルコール依存症から脱し、ノルウェー国内で名声を高めていたころです。彼がどのような思いで再び「叫び」を再び描いたのか、そんな思いをはせる名作です。



【公式サイトの画像】 1907年「マラーの死」

「マラーの死」はそのタイトル通り、ダヴィドが描いたフランス革命の指導者が暗殺され横たわっている姿のように自身を描いています。しかしダヴィド作品にはない、裸の女性が立ちすくむ姿も描かれています。この女性は交際していたトゥラで、交際トラブルで銃が暴発しムンクが右手を負傷した際のようすを描いたと考えられています。背景やベッドの色から心の中をうごめく複雑な感情が伝わってきます。

【公式サイトの画像】 1908年「ダニエル・ヤコブソン」

絵のモデルはムンクが入院していた精神病院の医師です。彼らしい鮮やかな色彩で表現していますが、とても威厳のある落ち着いた印象を与えます。ムンクが、アルコール依存症を直し自身の精神が落ち着いた後の姿をモデルの医師に例えて描いたのでしょうか。

【公式サイトの画像】 1922年「星月夜」

アルコール依存症から脱し名声の確立したムンクの画風は、激しさが見られなくなります。しかし色彩のマジックはより洗練され、鑑賞者を穏やかな気分にさせるほどです。ムンクの心の変化がここでも画風に現れます。「星月夜」はそんな時代の名作です。

ムンクに風景画のイメージはあまりないですが、展覧会ではたくさんの風景画からムンクの心の変化をうかがうことができます。

ムンクは「叫び」のように、同じ構図で何度も描いています。「浜辺にいる二人の女」など、色使いなどでがらりと印象を変えている作品も多く、ムンクがその時々で一生賢明生きていた姿が伝わってきます。とても興味深い対比になります。



【展覧会の見どころ 公式 YouTube 動画】

この展覧会も様子を紹介するYou Tubeが流されています。最近ではYou Tube は展覧会情報拡散のマスト・アイテムです。

【公式サイト】 DRAW! SCREAM あなたの「叫び」を描こう

「叫び」のポーズを描いた絵をネット上で投降し、東京都美術館での展示や広告に採用する作品を母数するキャンペーンも行われています。会場が盛り上がります。

「叫び」だけじゃない。会場で配布されていた朝日新聞の号外の見出しコピーです。まったくその通りです。むしろ「叫び」以外の作品の方により圧倒されるかもしれません。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



ピカチュウは今や一流の芸人

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東京都美術館
ムンク展 ―共鳴する魂の叫び
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:東京都美術館(東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、テレビ朝日、BS朝日
会場:企画展示室
会期:2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~17:00

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。



◆おすすめ交通機関◆

JR「上野駅」下車、公園口から徒歩7分
東京メトロ・銀座線/日比谷線「上野」駅下車、7番出口から徒歩12分
東京メトロ・千代田線「根津」駅下車、1番出口から徒歩15分
京成電鉄「京成上野」駅下車、正面口から徒歩12分
JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR東京駅→山手・京浜東北線→上野駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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