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京都国立近代美術館「大観展」 ~大観の代表作が見事に集合

2018年06月12日 | 美術館・展覧会

京都国立近代美術館で「大観展」が始まりました。横山大観は明治以降の日本人画家として最もその名を知られる人物でしょう。代表作の超ロング絵巻「生々流転」や、大胆な色使いが魅力的な「群青富士」(後期展示のみ)など、見ごたえのある作品が勢ぞろいします。

大観作品は個人所蔵が多く、生誕150年&没後60年の今回のような大規模回顧展でないと、これだけの作品を揃えるのは至難の業です。明治→大正→昭和と、日本で最も有名な画家の作品のトーンの変化をじっくりと楽しむことができます。


京近美ならではの撮影スポット

横山大観は、享年90歳ととても長寿の画家でした。1868(明治元)年に生まれ、1958(昭和33)年に生涯を終えるまで、明治~大正~昭和と長きにわたって日本画壇の潮流を見続けてきました。

明治の青年期には師の岡倉天心や親友の菱田春草とともに、新たな表現手法である朦朧体(もうろうたい)を確立します。従来の日本画のように線ではなく、色彩の濃淡で面的にモチーフを表現するものです。日本画で空気や光を斬新に表現する手法として考え出されました。

しかし朦朧体に対する世間の評価は芳しくなく、師の天心に従って日本美術院を結成して下野したこともあり、明治末期は不遇の時代となります。活動の場を海外に求め、菱田春草と共にインド、アメリカ、ヨーロッパで展覧会を開き、高い評価を得ます。同時に海外で見た作品からも新たな表現を充分に学んだことでしょう。

帰国後、海外での高評価を受けて日本での評価も見直され始めます。また画風にも変化が現れます。彩色画も水墨画も、伝統的なやまと絵や琳派、水墨画の表現をうまく活かすようになり、観る者にとってわかりやすくなります。また大観の特徴の大胆な構図も完成されていきます。

京都を拠点に活動したほぼ同世代の竹内栖鳳(たけうちせいほう)とともに、東西の両雄として並び称されるようになります。1937(昭和12)年には、第一回文化勲章受章者となり、巨匠としての評価が確立します。

【公式サイトの画像】 東京国立近代美術館「生々流転」

重要文化財の「生々流転」は、期間中に巻替えながら3場面が順に展示されます。それでも全長40mもあるため圧巻です。雲→山→海と循環する水の一生を描いたものです。木々や水の流れの表現はとても繊細です。朦朧体による表現は、雲海を雄大に、森の湿度の高い空間を神秘的に見せています。長谷川等伯の松林図屏風のような幻想的な質感を見事に表現しています。

【公式サイトの画像】 静岡県立美術館「群青富士」

展覧会のチラシにも採用されている「群青富士」は、後期展示の目玉作品となります。雲海から頂上だけを出した富士山が、琳派のような大胆な構図と鮮やかな色使いで表現されています。六曲一双屏風のほとんどが雲海ですが、雲のモフモフ感が上品に表現され、単調さを全く感じさせません。ハレの日に飾る屏風として、まさに一級品です。



知名度が高い画家だけに早くから賑わっています。公式サイトのトップページには曜日別・時間帯別の混雑状況の目安も掲載されています。夕方や週末限定の夜間開館が、混雑が避けられるようです。

4Fのコレクション展もお見逃しなく。京近美が持つ大観はおか日本美術院の画家の作品が秀逸です。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



121点の作品から大観ワールドを堪能


京都国立近代美術館 「生誕150年 横山大観展」
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2018/425.html
http://taikan2018.exhn.jp/
主催:京都国立近代美術館、東京国立近代美術館、日本経済新聞社、毎日新聞社
会期:2018年6月8日(金)~ 7月22日(日)
原則休館日:月曜日
※7/1までの前期展示、7/3以降の後期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品があります。
※この展覧会は、2018年05月まで東京国立近代美術館、から巡回してきたものです。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。

おすすめ交通機関:地下鉄東西線「東山」駅下車、1番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
JR京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→東山駅
公式サイトのアクセス案内
※この施設に駐車場はありません。


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