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嵯峨嵐山文華館で至福の時間を ~時雨殿がリニューアルオープン

2018年11月25日 | 美術館・展覧会

京都・嵐山にあった百人一首のミュージアム時雨殿(しぐれでん)が、1年半のリニューアルを終えました。嵯峨嵐山文華館(さがあらしやまぶんかかん)と館名を改めた上で、2018年11月から再スタートしています。

従来の百人一首に関する展示をパワーアップするとともに、日本画を中心とした企画展を行う展示室を2Fに設けたことが最大のポイントです。2F展示室は圧巻の120畳の大広間で、座りながら展示作品と大堰川の美しい流れの両方を鑑賞できます。和の空間を楽しむことにこだわったミュージアムになっています。

これまでミュージアムの少なかった嵯峨嵐山エリアですが、新たな魅力が加わりました。リニューアルオープン企画展のタイトルは「胸きゅん!嵐山」です。嵐山を描いた”きゅん”とする作品も目白押しです。


建物と入口も和を意識したデザイン

嵯峨嵐山文華館の前身・時雨殿は、小倉百人一首に関するミュージアムとして2006年に任天堂の山内溥氏個人の支援を受けてオープンしました。館の背後にある小倉山で、鎌倉時代初めに藤原定家が小倉百人一首を選んだとされ、ゆかりの地に設けられたことになります。現在の運営は京都商工会議所が設立した財団により行われており、2017年3月から今回のリニューアル工事に着手していました。

ミュージアムは大堰川の北岸の小倉山の麓にあります。館の裏にはこちらも大堰川の眺めが抜群の亀山公園があります。渡月橋から歩く大堰川沿いの道からは、何といっても嵐山の絶景が四季を通じて楽しめます。普通に歩けば5分ほどですが、記念写真を撮らない人はまずいないので、10分以上かけてゆっくり歩くことをおすすめします。

【嵯峨嵐山文華館公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

1F手前は企画展のスペース、奥が小倉百人一首に関する常設展示です。企画展スペースでは展覧会チラシにも採用されている矢野夜潮(やのやちょう)「高雄秋景・嵐山春景図屏風」が鑑賞者をまず出迎えます。

矢野夜潮は江戸時代後期の円山派の画家ですが、確認された作品数が非常に少ないことで知られています。展示作品は2017年に発見され、今回が初公開となります。金箔を雲に見立て、その雲の切れ目から見える高雄と嵐山の美しい風景を描いています。金箔の雲の面積が大きいことから、美しい風景を逆に目立たせています。構図が面白い作品です。

奥の小倉百人一首の常設展示では、壁一杯に並べられた100人のフィギュアが目を引きます。それぞれ和歌の解説が日英2カ国語でなされており、壁に向き合う時間が長くなりそうな一角です。江戸時代の古今和歌集の写本やかるたの展示と共に、競技かるたの解説パネルもあります。アニメ「ちはやふる」ファンの方は特に必見です。


2Fから大堰川がこのように見えます

2Fは大広間の壁三面が展示スペースです。あと一面はガラス張りで大堰川を見渡せます。保津川下りの船が優雅に動いていきます。天井のかぎ型のデザインが斬新なこの大広間では、スペースを活かして競技かるたの試合も行われるようです。大きさの割には、とても落ち着きがある空間です。

嵐山にアトリエを構えた竹内栖鳳(たけうちせいほう)・冨田渓仙(とみたけいせん)の二人の作品が中心です。四条派の二人による繊細な描写は、嵐山をのぞむ空間によく調和しています。そんな中で池田遙邨(いけだようそん)の「嵐山薫風」が目を引きます。青を基調にしながらも嵐山の和のテイストをきちんと感じさせる名品です。東山魁夷を思わせます。



1Fにはカフェ「嵐山OMOKAGEテラス」があります。こちらからも嵐山が見渡せ、ミュージアムに入館しなくても利用できます。フレンチ懐石の「祇園おくむら]がプロデュースした店で、人気が出そうな予感がします。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



百人一首の足跡を京都でたどる

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嵯峨嵐山文華館
リニューアルオープン企画展
いまもむかしも 胸きゅん!嵐山
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:嵯峨嵐山文華館
会期:2018年11月1日(木)~2019年1月27日(日)
原則休館日:火曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※12/10までのI期展示、12/12以降のII期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、常時公開している常設展示があります。



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、南口から徒歩15分
京福電鉄・嵐山本線(嵐電、らんでん)「嵐山」駅下車、徒歩7分
阪急電鉄・嵐山線「嵐山」駅下車、徒歩15分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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