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肉筆浮世絵らしいエッジに迫る_京都文化博物館「美を競う」6/9まで

2019年05月07日 | 美術館・展覧会

京都文化博物館で、光(ひかる)ミュージアムが所蔵する日本有数の肉筆浮世絵コレクションを大々的に公開する展覧会「美を競う」が始まっています。

  • 美人画を中心に110点が展示、江戸時代に求められた風流がモデルの姿から如実に伝わってくる
  • 浮世絵の各時代の絵師の作品が揃い、上方の絵師も含まれる、肉筆浮世絵の潮流を俯瞰できる


版画の錦絵は、大衆受けを重視するため、出版権を持つ版元の意向が強く働いて制作されます。一点物の肉筆浮世絵は、個別の顧客ニーズを絵師がくみ取って制作されるため、よりエッジの効いた当時の風流を感じ取ることができます。一点一点、静かに向き合うといろんなエッジが見えてきます。


輸入車イベントは赤レンガによく合う

光(ひかる)ミュージアムは岐阜県高山市にある美術館で、宗教法人崇教真光(すうきょうまひかり)により1999年に開館しました。マヤ文明の古代神殿をイメージさせる巨大な建物の随所には、現在の日本で最も著名な左官で、高山を拠点に活動する挾土秀平(はさどしゅうへい)による内装が施されています。MOA美術館やMIHO MUSEUMなど、宗教法人系の美術館によく見られるスケールの大きさが訪れる者を驚かせます。

【公式サイト】 光ミュージアム

コレクションは、世界の古代文明/化石と自然史/浮世絵を中心とした美術、の3通りに大別されます。肉筆浮世絵は、かつての那須ロイヤル美術館の閉館後に小針コレクション一括購入したものが中核になっています。



江戸を拠点とした絵師の展示はおおむね、流派単位で時代を追って構成されています。上方や地方の絵師は最後にまとまって展示されています。

【光ミュージアム 公式サイトの画像】 ご紹介した作品の一部が掲載されています

浮世絵師としては初期にあたる18c前半に活躍した宮川長春(みやがわちょうしゅん)は、豊艶な美人画の描写が特徴的です。肉筆画専門の絵師で、富裕な町衆に好まれた品の高い画風で知られています。「立ち美人」は、長春が得意とした、豊満な女性が体をくびらせてポーズをとっているように描いた作品です。モデルの視線の置き方に気位の高さを感じさせます。モデルはおそらく高級な遊女でしょう。

魚にまたがった仙人を遊女に見立てて天に昇るシーンを描いた「見立琴高仙人」も目を引きます。長春ではあまり見かけない構図ですが、気品の高さの表現はさすがです。

藤麿(ふじまる)は、18c末~19c初頭に活躍した浮世絵師で、美人画の巨匠・喜多川歌麿の門人と考えられています。姓が不詳なため名だけで呼ばれています。

「旅の女」は、3人の女性が旅の途中で休んでいる様子を描いています。とても深みのある藍色で染められた女性の小袖の下に、赤い襦袢を”チラ見せ”しています。キセルを手に取り、白足袋をはいて草鞋を身に付けています。庶民の女性が旅に出ることはまだまだ難しかった時代でもあり、富裕な女性の優雅な旅姿を描いていることがわかります。

女性の表情はとても洗練されています。色気や気品よりも清楚さが強調されています。背景の木はモノクロで描き、女性だけをフルカラーで描いてスポットライトを浴びせるような演出も表現しています。富裕な町衆が注文主だったことは間違いないでしょう。

葛飾北斎「日・龍・月」は、北斎の表現の多様性を垣間見ることができる逸品です。縦に細長い3つの画面に、左下の「日」から中央の「龍」が、右上の「月」に向かって昇っていくように描いています。空間の拡がりの描写が見事な作品です。


京都文化博物館 別館 赤レンガ 重要文化財

江戸とは異なり、モデルを美化することなく如実に一瞬の表情を写実的に描いた上方の浮世絵師の作品もとても印象に残ります。月岡雪鼎(つきおかせってい)の「遊女」は、どこか異国情緒が漂っています。非日常の世界に誘惑するような遊女の目線の表現が絶妙です。

祇園井特(ぎおんせいとく)は、18c後半に写実表現が席巻していた京都の浮世絵師です。眉毛を太く描くアクのある表現が特徴的です。「紐を結ぶ女」は、江戸の絵師の作品ではまず見かけない、遊女と思しき女性のプライベートな日常の一瞬を描いています。四条派の作品だと言われれば、気付かないほど、上質さがあふれる作品です。


京都・祇園にて

2F総合展示室では、近代京都で活躍した二人のアーティストを紹介する展示も行われています。ジョルジュ・スーラを思わせる点描画家・太田喜二郎と、大山崎の重文・聴竹居(ちょうちくきょ)の設計者・藤井厚二です。友情を交えた二人の作品からは、共に京都で近代文化を追い求めていた大正から戦前にかけてのモダニズムの香りを感じることができます。

濃厚な肉筆浮世絵の後に鑑賞すると、さわやかなシャワーを浴びたように感じられます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



「肉筆」のリアルな魅力に迫る画集

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<京都市中京区>
京都文化博物館
特別展
美を競う 肉筆浮世絵の世界
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:京都府、京都文化博物館、産経新聞社、関西テレビ放送
会場:4F,3F展示室
会期:2019年4月27日(土)〜6月9日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~17:30(金曜~19:00)

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、2019年9月から静岡県・佐野美術館、2019年11月から福島県・いわき市立美術館に巡回します。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「烏丸御池」駅下車、5番出口から徒歩3分
阪急京都線「烏丸」駅下車、16番出口から徒歩7分
京阪電車「三条」駅下車、6番出口から徒歩15分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15分
京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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