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仏教が伝えた文化のすばらしさがとてもよくわかる ~龍谷ミュージアム

2017年07月08日 | 美術館・展覧会

龍谷ミュージアム 正面のすだれ

 

龍谷ミュージアムは、浄土真宗本願寺派(西本願寺)が江戸時代初期に設立した僧侶の教育機関を源流とする「龍谷大学」が設立した博物館だ。西本願寺と堀川通をはさんで向かい合う建物は、巨大なセラミック製の簾(すだれ)が正面を覆っている。京都の景観にマッチするランドマークとしてミュージアムの存在感を主張するとともに、館にまともにあたる西陽を遮って館内温度の上昇を抑える最新テクノロジーとしても機能しているという。

 

西本願寺は、親鸞聖人以来の浄土真宗の数多くの至宝を受け継いでいるが、展示コンセプトは浄土真宗だけにこだわらず、インド以来の仏教全体の歴史や文化を紹介することを基本としている。館や龍谷大学・西本願寺の所蔵品を展示する常設展と、年数回の特別展・企画展を交互に開催しており、展示品の解説が上手であることもあって、仏教がもたらした文化のすばらしさに興味深く触れ合うことができる。

 

また開館が2011年と新しいこともあり、高い天井や落ち着いて見やすい照明など、鑑賞のしやすさは京都のミュージアムの中でもトップクラスだ。快適な鑑賞の両輪となるハードとソフトが両立している素晴らしいミュージアムである。

 

特別展・企画展は、室町時代から一貫して日本有数の宗教勢力である西本願寺に伝わる国宝など、日本美術の秀作を鑑賞できる機会が少なくないので注目に値する。2016年秋と2017年春には、西本願寺が所蔵する国宝で、浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の肖像画である「鏡御影(かがみのごえい)」と「安城(あんじょうの)御影・副本」がそれぞれ約1週間ずつ公開された。

 

「鏡御影」は親鸞聖人の最も古い肖像画であり、鏡に映したように写実的に描いているとされることからこの名がある。神護寺の伝・源頼朝像に代表される「似絵(にせえ)」が流行した鎌倉初期の作品であり、作者も長年この伝・源頼朝像の作者とされてきた藤原隆信の孫と伝わる。少し吊り上がった眉と引き締まった口元が繊細な線で表現されており、聖人の意志の強さが伝わってくる。

 

西本願寺蔵 国宝・鏡御影

 

 

「安城御影・副本」は聖人83歳の頃の姿の肖像画である「安城御影・正本」を模写したもので正副とも国宝だ。こちらのお顔も眉が吊り上がって口は引き締まっており、鏡御影の頃より齢を重ねていることから、より布教者としての円熟味と尊厳を増した表情をうかがうことができる。鏡御影とともに信仰の対象として強いオーラを感じさせる秀逸の作品だ。

 

親鸞聖人が生きた鎌倉初期は、浄土宗・日蓮宗・禅宗といった新たな仏教宗派が勃興した時代で、武家や庶民に仏教が浸透を始めた時代である。知識人が集まる仏教寺院は引き続き文化の担い手の大きな柱であり、仏教寺院のパトロンが武士に広がったことで、日本文化は新たな時代に入っていくことになる。親鸞聖人は、文化的側面でも新たな時代を切り開いた偉人であることは間違いない。

 

鏡御影/安城御影とも、今後も数年に1回でごく短期間しか公開されないと思われる。しかしこのミュージアムは他にも、西本願寺蔵の国宝で三十六歌仙の和歌集の平安末期の写本「三十六人家集」が公開されることもある。興味深い展覧会開催時期に都合が付けばわざわざ訪れる価値がある。

 

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 

 

 鏡御影や黒書院など、めったに公開されない国宝の画像が完璧!

(別冊宝島)

 

 

龍谷ミュージアム

http://museum.ryukoku.ac.jp/index.php

休館日 月曜日、年間の2割程度の展覧会非実施期間

(例外が発生する可能性もあるので訪問前にご確認ください)

 

 


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