岐阜県のある中学校で、29歳の数学の男性教師が143人の答案を持ち帰り、
不正解の生徒の答案を消しゴムで消して訂正した上で正解としたという
ニュースが先日あった。また、その後この先生は教育委員会から厳重注意
されたと報じられていた。果たしてこれは教育的に考えて善か悪か、
みなさんはいかがお考えですか。
私の個人的経験から、その点について考えてみたい。戦争直後のこと、
復員兵の軍服のまま教壇に立つ名物先生がいた。テスト中は鞭を持って、
バシッバシッと机を叩きながら軍靴で床を踏み鳴らすことで恐れられていた。
みな静まりかえって、必死で試験問題と取り組んだものだった。
しかしどうしても解答できない難問が含まれていて中途半端な答案となる。
翌日、答案用紙が返ってくる。×は一つもなくて△か○となっている。
友達同士で見せ合うが誰にも×がない。△ばかりという生徒もいる。
で、いつしか私たちはこの先生をノーペケ先生と呼ぶようになって、「友情」を
感じるようになった。友情といえば不適切だから敬愛と言い換えよう。
だから、この先生の授業中はみな一生懸命聞くようになった。そして、成績が
めきめき上昇したのだった。
冒頭の岐阜の先生につての記事を読んだ時に私はすぐにあのノーペケ先生の
ことを思い出した。教育は、杓子定規なことを言っていては成り立たない。
今日よりも明日、明日よりも明後日と徐々に向上させる方法がよい。
採点にあたって、温情はあってしかるべきだ。
デジブック 『話しかけに応じる野鳥』