スケッチブック

写真と文章で、日常を記録に残す

逃げ出す

2019-06-05 15:02:39 | Short shorts





作者: Christopher de Vinck
翻訳: polo181


私はついにそれを手に入れたのだった。
子どもたちはうるさくて気難しくて手に焼ける。
私は疲れていたしもううんざりしていた。
妻も疲れていてうんざりしていた。

私はその面倒なことから逃げ出して
一日を自分だけのものにしようと決心したのだった。
私は自身を堕落させても良いと思ったのだった。
私は一日だけやりたい放題のことをしたかったのだ。
楽しいことをしてやりたい放題のことをやってみたかった。
私以外の誰も連れて出る気はしなかった。

50ドルをポケットに入れて自宅から逃げ出したのです。
やったぞ、見ろ!と、
北へ向かってハイウエイを突っ走りながら叫んだ。
さて、それからショッピンモールに横付けして
ウオルト・ホイットマンの詩集を買い集めた。
その後、マクドナルドに立ち寄ってハンバーガーを2つと
Lサイズのポテトにソーダー水を注文した。

誰にも邪魔されることなく、誰にもピクルスをとられることなく、
誰の口や鼻を拭くこともなく、のんびりと食べたのだった。
私は自由の身だった。 

街の外に居たので、映画館に横付けした。
ポップコーンを買うことなく、私の膝に誰も乗って来ることなく、
途中でトイレに連れてゆくこともなく、
のんびりと映画を楽しむことが出来た。

私は自由人だった。私は自在だった。 
ところが実は惨めだったのだ。なぜなのかはわからない。
夜遅くならずに、私は家に帰ったが、みな眠っていた。
私が、静かにベッドに潜り込んだ時に、
妻は「私達はみな寂しかったわ」と囁いた。
「実は私もだよ」と答えたのだった。 

その後、二度と家から逃げ出すようなことはしなかった。


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