sumire日記

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恋は雨上がりのように

2020-05-10 17:23:00 | 日記


かけ声が広がる校庭から離れ、教室でうつ伏せに眠るのはタチバナアキラだった。

クラウチングスタートから勢いよく飛び出し、晴天の坂道を颯爽と駆けた。ただ、おぼつく足がアキラの足を引っ張って坂を転げ落ちてでも、これは夢だった。


「申し訳ございません」と日々頭を下げる店長がいるファミレスで、アキラはアルバイトをしていた。アキラはそんな店長のことが好きだった。だが、多くのシフトを希望するアキラに「何か欲しいものでもあるの?」と聞く店長は、まっすぐ見つめるアキラの気持ちに気がついていなかった。



アキラはとても優秀な陸上の競技者であった。だが、アキレス腱断絶という大きな障壁ができてしまっていた。しばらく走れないとの診断に途方に暮れた帰り道、アキラは引き寄せられるようにふと近くのファミレスに立ち寄った。


するとアキラの前には頼んでもいないコーヒーが置かれ、「あれ?ブラック苦手だった?」と続け様にマジックでクリームを出して見せられた。外は土砂降りの雨だった。だが店長は「きっとすぐやみますよ」とそう一言伝えた。

思い出せば、アキラがそのファミレスでバイトを始めたのもそんな店長に出会ったからだった。その日、アキラは雨を眺めて初めてちゃんと泣くことができた。


そんな出会った頃の土砂降りのような日に、店長はアキラから告白を受ける。だが、まさかこんなバツイチ子持ちの冴えないおじさんにと店長は困惑し返せる言葉がなかった。


「いわば、どうにもならないことをどうにかしようとして、取り留めもない考えを辿りながら、さっきから朱雀大路の降る雨の音を聞くともなく聞いていたのである。」

そんな国語の時間には、アキラは店長との相合傘を教科書に描いた。




バイト先の人に店長のことが好きだとバレてしまい、そこからデートをとりつけられてしまった時には、アキラはお洒落をしていかなかった。

ただ、店長と半ば強引にとりつけたデートには、とびきりのお洒落をしていった。

そして店長はよく通っている図書館に連れていってくれた。


そして、「タチバナさんが今日ここに来たということはどこかにタチバナさんを呼んでいる本があるはずなんだ。それはきっと今のタチバナさんに必要な本なんだよ。」と、そう伝えた店長は、小説家で旧友の新書を、アキラは陸上の本を手に取っていた。


土砂降りの日、店長は純粋でまっすぐなアキラの恋心をかけがえのない感情でありそして感謝していると伝えた。また、今月のシフトも、来月も再来月も入らなくていいよ。と、背中を押す友達のように応えた。


その後、陸上部に復帰したアキラはランニング中に店長と久しぶりに会った。

涙を堪えながら、「友達だったら普通メールとかすると思うんです。私、店長とメールしたいです!」と伝えた。

そして、店長はハハっと笑って応えた。その日はもちろん雨上がりの晴天だった。




大泉洋さんが表情に出せない店長の些細な心の動きを丁寧に演じられていてその気持ちにとても共感が持てました。そして小松菜奈さんの真っ直ぐで純粋なアキラが、ずっと追っていたくなるような気持ちにさせてくれていました。夢を諦めきれない2人が、鏡合わせのようにお互いを見つめ、知る、そんな、とても素敵な映画でした。