1.名 義
古い歌と今の世の歌を集めるの意味。
2.選 者
紀友則(完成を待たず没)・紀貫之・大河内躬恒・壬生忠岑。
3.成 立
醍醐天皇の勅により続万葉集と称す未組織の本ができ、再度の勅に拠り二○巻に編成して改称。仮名序にいう延喜五年(905)四月十八日(真名序には十五日)が奉勅の日か奉覧の日か説が分かれる。日本紀略には十五日に「撰進」したとある。その後も、補足修訂されて延喜一三、四年(912・4)ごろに最終的な完成を見た、と言われる。
4.歌数・歌体
歌数は本により異なる。定家本で1100首。長歌5首、旋頭歌4首、その他はすべて短歌。
5.組 織
二○巻。春(上下)・夏・秋(上下)・冬・賀・離別・羇旅・物名・恋(1~5)・哀傷・雑(上下)・雑体・大歌所御歌に分類する。この部立は後の撰集の範となる。歌の排列には季節の推移や類題を勘案する。巻頭に仮名序(紀貫之)、巻尾に真名序(紀淑望)を付する。
6.時代・歌人
「万葉集にいらぬ古き歌」(序)から当世まで、記名作者127人。
(1)[第一期:読人しらず時代] 中心は平城朝から仁明朝(802~50)。漢詩文全盛の時期で、小野篁・藤原関雄ら少数を除いて作者不明。読人しらず約450首の大部分はこの期のもの。万葉集に接続する古風を伝えるが、用語は新しい。
(2)[第二期:六歌仙時代] 文徳朝から光孝朝(850-87)。摂関政治の初期にあたり、後宮を中心に和歌が復興し、平仮名の発達がこれを助ける。六歌仙のほかに在原行平・藤原敏行らが活躍。優美な素材を技巧的に歌うが、感情の表出はなお率直である。
(3)[第三期:選者時代] 宇多・醍醐朝。唐文化の模倣を脱し、歌合が盛んに催される。選者をはじめ伊勢・素性・藤原興風・坂上是則・清原深養父ら名士が輩出される。生の表現を避け、趣向を凝らし技巧を駆使して優雅艶麗の世界を観念的に創出し、古今風を完成する。
7.史的意義
「古今」と称しながら、和歌を本格的な文芸として完成させた「今」に重点をおき、美の典型を示した集。漢詩文と和歌とが交替したと単純に考えるべきでなく、漢詩全盛を通過し、それを摂取して和歌が完成したのである。勅撰和歌集の第一として尊敬され、長く詠歌の規範であり指標であった。子規以来軽視されがちなのは、上代偏重の国学や外来の写実主義の影響によるものである。 おわり
古い歌と今の世の歌を集めるの意味。
2.選 者
紀友則(完成を待たず没)・紀貫之・大河内躬恒・壬生忠岑。
3.成 立
醍醐天皇の勅により続万葉集と称す未組織の本ができ、再度の勅に拠り二○巻に編成して改称。仮名序にいう延喜五年(905)四月十八日(真名序には十五日)が奉勅の日か奉覧の日か説が分かれる。日本紀略には十五日に「撰進」したとある。その後も、補足修訂されて延喜一三、四年(912・4)ごろに最終的な完成を見た、と言われる。
4.歌数・歌体
歌数は本により異なる。定家本で1100首。長歌5首、旋頭歌4首、その他はすべて短歌。
5.組 織
二○巻。春(上下)・夏・秋(上下)・冬・賀・離別・羇旅・物名・恋(1~5)・哀傷・雑(上下)・雑体・大歌所御歌に分類する。この部立は後の撰集の範となる。歌の排列には季節の推移や類題を勘案する。巻頭に仮名序(紀貫之)、巻尾に真名序(紀淑望)を付する。
6.時代・歌人
「万葉集にいらぬ古き歌」(序)から当世まで、記名作者127人。
(1)[第一期:読人しらず時代] 中心は平城朝から仁明朝(802~50)。漢詩文全盛の時期で、小野篁・藤原関雄ら少数を除いて作者不明。読人しらず約450首の大部分はこの期のもの。万葉集に接続する古風を伝えるが、用語は新しい。
(2)[第二期:六歌仙時代] 文徳朝から光孝朝(850-87)。摂関政治の初期にあたり、後宮を中心に和歌が復興し、平仮名の発達がこれを助ける。六歌仙のほかに在原行平・藤原敏行らが活躍。優美な素材を技巧的に歌うが、感情の表出はなお率直である。
(3)[第三期:選者時代] 宇多・醍醐朝。唐文化の模倣を脱し、歌合が盛んに催される。選者をはじめ伊勢・素性・藤原興風・坂上是則・清原深養父ら名士が輩出される。生の表現を避け、趣向を凝らし技巧を駆使して優雅艶麗の世界を観念的に創出し、古今風を完成する。
7.史的意義
「古今」と称しながら、和歌を本格的な文芸として完成させた「今」に重点をおき、美の典型を示した集。漢詩文と和歌とが交替したと単純に考えるべきでなく、漢詩全盛を通過し、それを摂取して和歌が完成したのである。勅撰和歌集の第一として尊敬され、長く詠歌の規範であり指標であった。子規以来軽視されがちなのは、上代偏重の国学や外来の写実主義の影響によるものである。 おわり