作歌態度と詠風
1.万 葉 集
(1)歌を呪術とする意識が残り、対象にはたらきかける積極的な勢いが、「力強く荘重な調べ」となる。
○千万の軍なりとも言挙せず取りて来ぬべき男とぞ念ふ 高橋虫麻呂
(2)実感を抑えず飾らず大胆「率直に表現」する。簡明にして力強く、賀茂真淵は『ますらをぶり』という。
○吾が背子はものな念ひそ事しあらば火にも水にも吾がなけなくに 安倍女郎
(3)日常生活そのままではないにしても、現実の体験に即して歌うことが多く、「具体的、写実的」で印象鮮明。
○あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳に雲立ち渡る 人麻呂歌集
(4)用語、題材についてすでに雅俗を分かつ意識が生じているが、なお生活に密着したものが比較的に多く、「素朴、清新」の感をもって訴えかける。時に粗野。
○憶良らは今は罷らむ子哭くらむそれその母も吾を持つらむぞ 山上憶良
2.古 今 集
(1)宗教や政治を離れ、歌それ自体が目的となり、「洗練された表現」により美の典型をひたすら追求する。
○桜花さきにけらしな足引の山のかひよりみゆる白雪 紀 貫之
(2)感情を生のままですびて表わすことを避け、「屈折した表現」をとる。その婉曲さが優美繊細の効果を生む。
○五月待つ花 橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする 読人しらず
(3)日常の体験から遊離した花鳥風月や恋・無常など、情趣化された世界を機知に富んだ「趣向や見立て」により表現する。理知がまさり、時に観念の遊戯に陥る。
○ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなえに水くくるとは 在原業平
(4)優雅の基準にかなう題材をみやびやかなことばで詠ずるため、「流麗」であるが、単調に陥る弊がある。
○つれづれのながめにまさる涙河袖のみぬれてあふよしもなし 藤原敏行
3.新 古 今 集
(1)乱世の現実を忌避し、王朝に憧れる浪漫的な気分が支配し、唯美的、芸術至上主義的」な立場に立つ。
○またや見む交野のみ野の桜狩り花の雪散る春のあけぼの 藤原俊成
(2)世俗的な感情を拒否し、『もののあわれ』という伝統的な感覚を「象徴的な手法」により縹渺とただよわせる。幽玄余情の様式を完成するが、時に晦渋に陥る。
○見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ 藤原定家
(3)客観的具象的な世界を浪漫的な心象風景に再構成し、現実を超えた「絵画」あるいは「物語」のごとき世界をつくる。
○かへり来ぬ昔を今とおもひ寝の夢の枕に匂ふたちばな 式子内親王
(4)選び抜かれた素材を言語の論理性を超えた技巧によって表現し、「幽玄妖艶」の美、有心の理念を追求する。
○風かよふ寝覚めの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢 俊成女
おわり
1.万 葉 集
(1)歌を呪術とする意識が残り、対象にはたらきかける積極的な勢いが、「力強く荘重な調べ」となる。
○千万の軍なりとも言挙せず取りて来ぬべき男とぞ念ふ 高橋虫麻呂
(2)実感を抑えず飾らず大胆「率直に表現」する。簡明にして力強く、賀茂真淵は『ますらをぶり』という。
○吾が背子はものな念ひそ事しあらば火にも水にも吾がなけなくに 安倍女郎
(3)日常生活そのままではないにしても、現実の体験に即して歌うことが多く、「具体的、写実的」で印象鮮明。
○あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳に雲立ち渡る 人麻呂歌集
(4)用語、題材についてすでに雅俗を分かつ意識が生じているが、なお生活に密着したものが比較的に多く、「素朴、清新」の感をもって訴えかける。時に粗野。
○憶良らは今は罷らむ子哭くらむそれその母も吾を持つらむぞ 山上憶良
2.古 今 集
(1)宗教や政治を離れ、歌それ自体が目的となり、「洗練された表現」により美の典型をひたすら追求する。
○桜花さきにけらしな足引の山のかひよりみゆる白雪 紀 貫之
(2)感情を生のままですびて表わすことを避け、「屈折した表現」をとる。その婉曲さが優美繊細の効果を生む。
○五月待つ花 橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする 読人しらず
(3)日常の体験から遊離した花鳥風月や恋・無常など、情趣化された世界を機知に富んだ「趣向や見立て」により表現する。理知がまさり、時に観念の遊戯に陥る。
○ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなえに水くくるとは 在原業平
(4)優雅の基準にかなう題材をみやびやかなことばで詠ずるため、「流麗」であるが、単調に陥る弊がある。
○つれづれのながめにまさる涙河袖のみぬれてあふよしもなし 藤原敏行
3.新 古 今 集
(1)乱世の現実を忌避し、王朝に憧れる浪漫的な気分が支配し、唯美的、芸術至上主義的」な立場に立つ。
○またや見む交野のみ野の桜狩り花の雪散る春のあけぼの 藤原俊成
(2)世俗的な感情を拒否し、『もののあわれ』という伝統的な感覚を「象徴的な手法」により縹渺とただよわせる。幽玄余情の様式を完成するが、時に晦渋に陥る。
○見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ 藤原定家
(3)客観的具象的な世界を浪漫的な心象風景に再構成し、現実を超えた「絵画」あるいは「物語」のごとき世界をつくる。
○かへり来ぬ昔を今とおもひ寝の夢の枕に匂ふたちばな 式子内親王
(4)選び抜かれた素材を言語の論理性を超えた技巧によって表現し、「幽玄妖艶」の美、有心の理念を追求する。
○風かよふ寝覚めの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢 俊成女
おわり