goo blog サービス終了のお知らせ 

赤塚不二夫保存会/フジオNo.1

『あの有名キャラクターは、いま!?』

『あの有名キャラクターは、いま!?』
週刊少年サンデー 30周年記念増刊号 1989年4月10日刊

掲載号/タイトル/単行本
週刊少年サンデー30周年記念増刊号(1989年4月10日)/あの有名キャラクターは、いま!?/①②③

・解説
この作品が掲載された「週刊少年サンデー」の30周年を記念を記念した増刊号は、「新進気鋭の漫画家による読み切り」、「ヒットを飛ばした漫画をカムバックさせた読み切り」、「過去にサンデー誌面を盛り上げた漫画家漫画家のイラストorインタビュー」の3つの内容から構成されている。

『あの有名キャラクターは、いま!?』をカテゴライズすると、2番目の「ヒットを飛ばした漫画をカムバックさせた読み切り」に当たる。このカテゴリには、他に成長した猿丸と藤子(A)とのまさかの邂逅を描いた『プロゴルファー猿FOREVER』(藤子不二雄(A))、ダメおやじとオニババが長期に渡るDV→蘊蓄サーガを振り返る『ダメおやじ-望郷編-』(古谷三敏)が掲載されていた。

他の2作品と『あの有名キャラクターは、いま!?』を比較して読むと、大きな違いがあることに気付かされる。それは、藤子(A)、古谷の二者は「猿丸は、ダメおやじは、いまも生きている!」というコンセプトで書いているのだが、赤塚はキャラクターを殺しているということである。この作品を既読である御仁には言うまでもないが、文字通りに。

『おそ松くん』のカムバックとして(おそらく、そう依頼され)位置づけられているのにも関わらず、キャラクターを『あの人は今!?』(日本テレビ系にて1995年放送開始であり、題はこのTV番組をパロったものではない。)のように、“過去の人”として扱っている・・・。勿論、こういった展開は赤塚の作風を鑑みると、『おそ松くん』のパラレルワールドであると理解すべきである。そもそも「週刊少年サンデー」連載初期からキャラクターの設定は連続しておらず、何度も登場することによって確立されていくチビ太やイヤミ達の姿かたちをみても、時代劇篇や海賊篇、戦記篇などのバラエティに富んだ長編をみても、その後の他誌連載版をみても、それぞれを一種のパラレルワールド、スター・システムとみなす事は赤塚漫画を読む上での鉄則だといえる。

「こんなの、作風が徐々に自虐的になっていった赤塚のやることだから」と片付けることもできるだろう。だが、『レッツラゴン』の一編「実力の世界」をセルフパロディしたオチの、この最終コマには思わずココロが一時停止してしまう。

昭和63年1月1日 赤塚不二夫。重症のアル中にかかり、マンガが書けなくなり自殺。

赤塚のアルコール依存症が公表されたのは1986年(「週刊宝石」8月22・29日号『赤塚不二夫氏(漫画家)がアルコール中毒で苦行の日々』、「文藝春秋」1986年12月号『アル中脱出苦闘の記』など)だ。掲載誌が刊行された1989年4月は、肝付兼太がイヤミに声を当てたアニメ第2作が放送中、アニメ化に際して『おそ松くん』が「コミックボンボン」、「テレビマガジン」に連載が続いていた。一方では児童を笑わせ、一方では主要キャラ全員死亡・・・である。

ふと、“赤塚不二夫の最後の弟子”である吉勝太がドキュメンタリー映画『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』にて、この頃に「子供が何を面白がっているのか分からない」と唸っていた様を目撃したというエピソードを披露していたことを思い出した。

重度の赤塚不二夫依存症である自分は、赤塚不二夫はこう考えていたのだと思う。・・・・・・「サンデー」が30周年だからと言って『おそ松くん』を懐かしんでいる場合ではない。六つ子もイヤミも殺して、新しいキャラクターを創造したい。自分の漫画は旧式である。前に進まなければならない。究極のキャラクターとなったバカボンのパパに依存している場合ではない。・・・・・・そんな叫びを込めたようにも感じるし、小手先で埋めたようにも見える4ページだ。何かを考えていたのかもしれないし、何も考えていなかったのかもしれない。

作中、かつての仲間がすべからく死去している、そんな事実を知らされ、ひとりぼっちになったチビ太は呟いてこの漫画は終わる。
みんないいやつだったのに・・・・・・・・・・・・

・単行本
①小学館・オンデマンド版赤塚不二夫全集・『1980年代』・2005年9月30日刊
②竹書房・竹書房文庫・『おそ松くん』第15巻・2005年6月23日刊
③宝島社・このマンガがすごい!comics・『「おそ松くん」とアカツカ怪作劇場』・2016年5月5日刊

コメント一覧

MT
これは竹書房版を読んで初めて知りました。チビ太が「メモリアル病院」に記憶喪失(他の患者や医者まで)で入院後、ようやく記憶を取り戻したら、六つ子らは全部死去したという結末、良くこんな結末を考えました。

掲載当時はアニメ第2作が放送中で、講談社の「ボンボン」や「テレマガ」にも「天才バカボン」(翌年より「平成天才バカボン」)と共に連載中、小学館はもとより講談社までOKが取れたのはスゴいです。

「おそ松」の未来話というと、「おそ松さん」を筆頭に今回の話、そして「30年後」や「40年後」(アニメや「アノニェー」版)と出ました。こうなると残るは、1967年の「小四」に掲載された特集記事「20年後」ですが、いまだに掲載されないんです。同時期の「オバQ」じゃ何度も何度も未来話を取り上げ(でも、いずれもまだ大原家に居候中)、後年の「大全集」でも取り上げました。こうなると曙出版の倒産が惜しまれます。
(現存すれば「おそ松」関連本出したのに)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「1980年代後半作品」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事