赤塚不二夫保存会/フジオNo.1

「さんせいのはんたい」は“反対”なのだ!

6月30日から全5回にわたり、現フジオ・プロ社長・赤塚りえ子の『バカボンのパパよりバカなパパ』がNHKでドラマ化されるという。

まぁ、それはいいとして、以下のサイトにジャンプしてポスターを見て欲しい。何かおかしな点がないだろうか。
→http://www.nhk.or.jp/dodra/bakabon/

そう、吹き出しの中に記された「賛成の反対」という台詞だ。言わずもがな、『天才バカボン』の定番ギャグは「はんたいのさんせい」である。

このギャグは『バカちゃんおんぶ』(竹書房文庫第1巻)で「さんせいのはんたいのさんせい!」として初登場後、『パパはめでたい日本一』(竹書房文庫第1巻)で「はんたいにさんせい!」とブラッシュアップ。その後『ハイハイな俳句で電報うってきた』や『雪やコンコンサトウやコンコンなのだ』(ともに竹書房文庫第2巻)で「はんたいのさんせい」と確立されていった。『うちの殿におヘソをあげて』(竹書房文庫第3巻)の初出時の扉ページでは『天才バカボン』というタイトル字と「フジオ・プロ」というロゴが互い違いに配され、バカボンが「題名のはんたい!」、それに対しパパが「これでいいのだ!」と発するという秀逸なお遊びもあった。

このギャグを分解してみると、賛成の反対(つまり反対語、対義語)は反対でしかない。そこを「はんたいのさんせい」とすることで、「賛成しているんだろうか?それとも反対しているんだろうか?」と読者を惑わせる効果を持つのだが…。

この誤認・誤用は今に始まったものではない。2009年刊の『赤塚不二夫自撰ベスト傑作集 メモリアル 天才バカボン さんせいのはんたいなのだ! 伝説の赤塚ギャグ編』(講談社)の書名や2015年発売のガチャポン『バカ田大学 購買部特製 学生のたしなみグッズなのだ』(タカラトミーアーツ)のスタンプ、それに『天才バカボン』を扱ったパチンコでも……。フジオ・プロには、早急にこの事実に気付いてもらいたいものだ。



それにしても赤塚漫画に関する誤認・デマ・ガセ・風説の類は多い。

『もーれつア太郎』の連載開始(1967年)後に丸善石油のCMフレーズ「Oh!モーレツ」(1969年)がブームになっているし、映画『タリラリラン高校生』(1971年)よりも早く『天才バカボン』で「タリラリラーン」(『タリラリラーンのとうがらしなのだ』(1967年)、竹書房文庫2巻)が使われているが、「丸善石油が元祖」、「『タリラリラン高校生』が元祖」と云われ続けている。この2つは、漫画より格上(と、されている)のメディアで取り上げられており、意外性もある為に、こちらが元祖だと取り違え「実は・・・」と語ってしまうパターンだと言えるだろう。

また、2009年頃に放送されたACジャパンのCM(https://www.youtube.com/watch?v=fGj8m2dJVUc)のように、哲学的な意味付けをする、というパターンもある。「これでいいのだ」に哲学的な意味を見出して感銘を受けるのは個人の勝手だが、『天才バカボン』は哲学漫画ではない。天下一品のギャグ漫画だ。「これでいいのだ」は、パパが無知から生ずる愚かな結果を正当化するが為の言葉であったはずだ。実社会を生きる我々の不遇を慰めるのに使用するのはお門違いだろう。CMの終盤、パパのコスプレをした赤塚のポートレートが差し込まれる展開には赤塚をどうも“巷の偉人”に仕立て上げたと感じてしまう。このCM以降“巷の偉人・赤塚不二夫”という扱いは確かに増えているように感じる。

ほかにも、「“バカボン”はサンスクリット語で世尊を表すバキャボンから来ており、「これでいいのだ」は悟りの境地を表すのだ」、という風説もよく聞く。これはフジテレビで放送されていた人気番組『トリビアの泉』での「お釈迦様は仏教語でバカボン」(https://www.youtube.com/watch?v=MCtpfklllnw)が転じたものではないかと思う。

赤塚はフランス語で放浪者を意味する“バカボンド”を念頭に、バカによる放浪記という案を考えていたが、編集者の数十にも及ぶ設定案の中から「韓国の天才少年キム君」というニュースを下敷きに、天才バカのパパとお人よしのバカボン、天才幼児のハジメ、聡明なママという現在の形、お馴染みのバカボン一家が誕生した。これが真実なのだが…。

仏教と赤塚漫画は、ギャグに哲学的な根拠を示すのに愛称が良いようで、島根県出雲市小境町にある一畑薬師には、注荼半諾迦という像があり、こんな説明書きが添えられている。

注荼半諾迦 ちゅだはんたか Cudapanthaka
周利槃特(しゅりはんどく)尊者のこと。自分の名前を忘れるほど愚かで頭の悪い人だったと伝えられる。お釈迦さまは、一本のホウキを渡し 「塵を払え 垢を除け」と唱えて精舎の掃除を命じた。ひたすら掃除を続け、ついに汚れが落ちにくいのは人の心も同じだと悟ったと伝えられる。赤塚不二夫作-「天才バカボン」の「レレレのおじさんのモデルであるとも伝えられている。


これもガセネタだ。レレレのおじさんは、『天才バカボン』に登場していたモブキャラの要素に『ドロンちび丸』や『猿飛佐助』の漫画家・杉浦茂をオマージュしたデザインを足して誕生している。

先日読んだ『まんがでわかるまんがの歴史 』(まんが/ひらりん、作/大塚英志)でも、「一説によるとイヤミのモデルは村山知義」という新説が紹介されていた。長く赤塚漫画を愛読・研究しているが、そんな説は聞いたことがない。

溜息の出る現状である。現代、ギャグ漫画を読んでギャハハと笑うことは難しいことなのだろうか。どうもドンヨリした空気を生んでしまった。だが、これが赤塚不二夫を取り巻く現状の、真実の姿、その一端である。



最後は赤塚を好意的に、しっかりと評価する人もいるのだということを提示して終わろう。

日本に数人しかいないというスクリプトドクター(『スター・ウォーズ』のレイア役・キャリー・フィッシャーがこの仕事で活躍していたことでも有名ですね。)の三宅隆太による『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』では、アニメ・『おそ松くん』(第1期)の『金庫やぶりはやめた!』前・後編が登場。三宅氏がDVDを見て書き起こしたプロットが、脚本を貫く葛藤の流れ“中心軌道”を学ぶテキストとして使用されています。O・ヘンリーの『よみがえった改心』が下敷きであることにもばっちり触れながら、脚本に注目した読み解きがなされています。

芳埼せいむの漫画『金魚屋古書店』第1巻の第3話では、曙コミックス版『もーれつア太郎』が登場。異なる世代、異なる境遇で読み合う『ア太郎』、そしてギャグ漫画の精神を端的に提示したストーリーに、心が洗われる1作になっていますよ。



最後に…The correspondence to you who gave mail in English is late. I'm really sorry. Please wait a little longer.
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