甘い人間

本★ときどき★パン

あとを継ぐ人 田中兆子

2020-04-20 21:52:21 | NetGalley


理容店/チョーク製造工場/麩菓子製菓会社/老舗旅館/サラリーマン
働く人や経営者たちの姿が湿度少なめにサクサク描かれる。

「若女将になりたい」範之27歳(心は乙女の次期社長)の話が面白かった。
断固として認めようとしない母親と、理解のある父親。
その背景にあるものは・・いい家族 範之は幸せ者だ。

継ぐとあるが、家業という狭い意味ではなく、
親の思いや長く働いている人の身の処し方などを各話の主人公たちが受け取っていく。
サラリーマンの父親と娘がファイターズの応援に行く話がよかった。
聞き上手のお父さんと娘の関係がいい。

チョーク製造販売会社の人たちが、
ブタさんを連れて部屋を出て行く伊藤さんのしんどさを分かって
接している姿がよかった。
マニュアル化なんてできないよね。


内容紹介
高校卒業と同時に親の反対を押し切って相撲部屋に入門し、26歳で膝の怪我が原因で引退、その後は東京で介護福祉士として働いている息子。
「オサダ理容店」を営む哲治は、「力士」も「介護士」もある理由からどうしても好きになれず、久しぶりに息子に再会したときも喧嘩別れをしてしまった。

それは離婚した元妻・真由美の仕事に起因していて―「後継ぎのいない理容店」

神原範之は都会暮らしを捨て、実家の温泉旅館を手伝うことに。
性同一性障害を自認している範之は、女性の格好で仲居の仕事をしているが、母親である女将からの理解がなかなか得られず――「若女将になりたい!」

社員の7割が知的障碍者というチョーク会社に中途入社した居ケ内翼は、同じ課の障碍をもつ伊藤さんとどう接してよいかわからず――「わが社のマニュアル」

物事がハイスピードで変わりゆく世の中で、親から、先輩から、会社から変わらず”受け継ぐ”ものを描いた全6篇の短編集。



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