甘い人間

本★ときどき★パン

第36回太宰治賞受賞作 空芯手帳

2020-07-01 17:38:36 | NetGalley
紙管を扱う会社で働いている柴田(34歳)。
職場(の女性社員)あるあるで、担当する雑用だけが増え続ける中、
「妊娠した(嘘)」と言ってみた。

工場の製管現場:「ここで作られるのは空っぽの芯だ」
妊娠していない自身の中身とを重ね合わせながら考察する場面が最高だ。

嘘も呪文のように唱えて育てていくうちに、
案外、別のどこかに連れ出してくれるかもしれない。
そう思わせてくれるお話です。

妊娠36週目のエコー検査のシーンが面白かった。

内容紹介

紙管製造会社に勤める柴田は、女性だからという理由で雑用をすべて押し付けられ、
上司からはセクハラ紛いの扱いを受ける34歳。

ある日、はずみで「妊娠した」と嘘を吐いたことをきっかけに、
“にせ妊婦”を演じる生活が始まってしまう。

しかしその設定に則った日常は思いがけず快適で、
空虚な日々はにわかに活気づいていった。

やがてマタニティエアロビに精を出し始めた柴田は、
そこで知り合った妊婦仲間との交流を通して“産む性”の抱える孤独を知ることになる。
表面的な制度や配慮だけは整っていく会社、ワンオペ育児や産後うつに苦しむ女性たち……

現実は「産んでも地獄、産まぬも地獄」だった。
柴田は小さな噓を育てることで自分だけの居場所を守ろうとしていた。

そしてついに、ぶじ妊娠40週めをむかえた柴田の「出産」はいかなる未来を切り開くのか――。


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